30話 夏祭り
夏祭り当日。
十六時四十分。先ず最初にやって来たのは、アアミリとアーティナ。
「き、来たわよ。まだ私とアーティナさんだけね」
「そうみたいですの」
ヒョウガの家の、周りを見渡したアミリが二人だけであると断言した。
二人は、昨日選んだ浴衣を着ていて、靴は、下駄をはいている。
十時四十七分。カナミがやって来た。カナミも浴衣を着ていた。靴は、白色いサンダルだ。
カナミが着て来たのは、全身に咲き乱れる椿が鮮やかな印象の浴衣。
「大分待たせしちゃったね。まだ二人だけなんだね。急いで来なくてもよかった」
「わ、私とアーティナさんは、七分前には来ていたわよ」
「あまり変わらない気がするですの」
カナミが急いだと、タオルで汗を拭いたうえで言うと、アミリが七分前には来ていたと言う。
アーティナは、あまり変わらないと言う。
十六時五十四分。ミューフィとアキラが急いでやって来た。
ミューフィは、紫とピンクの紫陽花がデザインされた白い浴衣だ。靴は、黒い下駄を履いている。
アキラは、ブルーの鹿の子朝顔の浴衣だ。靴は、白色の下駄。
「遅れてしまいました。済みません、浴衣の着付けに手間取ってしまいました」
「ウチは、お母さんに着付けしてもらったから遅れたー」
「そうだったんだね」
「だから遅れたんですのね」
ミューフィとアキラは、遅れた理由を言った。まだ十七時ではないのにそう言うので、恐らくもっと早く来るつもりだったんだろう。
気にすること無かった三人であったが納得する。
十六時五十六分。ガチャッ、玄関のドアが開いた。そしてヒョウガが出て来た。
ヒョウガは、マルチボーダー七分袖Tシャツ(ブラック)に、ジーパンである。靴は、普通の白いサンダルだ。
「んじゃあ、皆揃ってるな。行くぞ!」
「ねえねえ、ヒョウガ。アミリちゃんが浴衣の感想が欲しいだって。言ってあげてね」
「そ、其れ言わないでよ。もう。で、どうなのよ」
「ん……!? そうだな。牡丹色の金魚柄か。凄く似合ってるぞ!」
「ホ、本当に言ってくれてるわけ!? べ、別に嬉しくないわよ。でも、ありがとう」
早速、行こうと言うしてる所を呼び止めたカナミが、アミリが浴衣の感想を伝えてと言う。
アミリは、顔を少し赤らめて内緒の約束だと言い、だがしかしヒョウガに聞いてみる。
ヒョウガは、浴衣の中が見える位、ジッと見つけて感じた事を口に出す。
アミリの方は、そんなに見詰られて恥ずかしく。
返事を聞いて嬉しそうにしていて、隠し切れない笑顔で偶にいうセリフを言う。
そして、隣町の夏祭りに向かって行く。
辺りはまだ夕日が沈んでいない。
歩くこと三十分一寸で、目的地に到着。
ごちゃごちゃ。ざわざわ。
「人が多いぞ! 皆迷子には気をつけるんだ……て既にいない」
ヒョウガが、こうして注意を促す間にも人混みに埋もれる始末。
仕方ないからヒョウガが見つけに行くと、直ぐに全員が見つかった。
「次からは手を繫いでおけば大丈夫だね」
「そ、そうね。少し恥ずかしい気もするけど」
「んじゃあ、まず何処から行くんだ?」
ヒョウガに助けられた、カナミ達が次からは気を付けるために、手を使って繋ぐ仕草をして伝えた。
ヒョウガが、皆に向かって言った。するとーーー
「ウチは焼きそばが食べたーい」
「わ、私は唐揚げが食べたいわよ」
「んじゃあ、二手に分かれるぞ! カナミは焼きそばの方を任せるぞ! 唐揚げの方は俺が行くぞ! 待ち合わせ場所は、あの丘で良いな」
――俺が指した丘を皆が見て、あそこなら花火が綺麗に見えると思ったんだぞ!
と、ヒョウガは心の中で思っていた。




