18話 いざ別荘へ
――そして当日。
朝八時三十分頃。
ヒョウガの家の前で皆が集まってると、そこへ一台の大きな魔法車が停まり―――。
後部座席のドアが開く。
「さあ、皆乗ってですの!」
「あ・・・ああ、じゃあ乗るぞ」
「他の子達も乗っちゃって、そんな緊張しなくていいからさ」
アーティナの父は、乗るのを躊躇ためらう子達の背中を押す。
何とか皆が乗った所で―――アーティナの父が運転する魔法車が出発した。
この世界では魔法車が一般的なのだ。
魔法車とは魔力を注ぎ込むことで走らせることの出来る四つのタイヤの付いた乗り物のことだ。
―――魔法車での会話―――
「どれ位掛かるんですか。別荘まで?」
「大体後、一時間から一時間半で着くですの」
ーーー今車内には俺、アミリ、カナミ、俺の正面に、アーティナ、アキラ、ミューフィが座っている。運転席は、アーティナのお父さん、助手席にはアーティナのお母さんの計八人が乗っている。
と彼は、が心の中で人数を数えて。
「皆、水着持って来たですの?」
「え? 海の方なん?? てっきり登山かなと思ったんですけど」
「どんな所にある別荘だと思ったんですの? アタシの所の別荘は、海の直ぐ傍ですの!」
「俺はそうだろうと思ってましたよ」
ヒョウガ以外、皆が登山だと思ってあ様だ。
「でも大丈夫よアタシの仕事そういうのしてるから。だから、アタシが作った水着が沢山あるから」
「でも、サイズが……」
「大丈夫ですの。お母さんは、フリーサイズの水着を作ってるですもの」
娘と友達の会話を聞いてたアーティナの母が、振り返って会話にしれっと入り込む。
実はアーティナの母は、ランジェリーデザイナーで―――更に水着のデザイナーもしているのだ。
「それならお言葉に甘えて」
「わ、私も着ます」
「有難うございます」
「有難う!」
「どう致しまして。着て貰えないと水着が可哀想だから嬉しい」
四人共着ることが決まり、アーティナの母はとても嬉しそうだ。
「遊び道具は向こうにあるから大丈夫ですの」
「それなら安心です」
「そ、そうね!」
―――こ、これなら心配なく遊べるわね。泳げないのが発覚ない。
と、アミリが心の中で安心していた。
「皆、勿論宿題を持って来たですの?」
「ウチには聞かないで下さい……」
「俺は持ってきました」
「も、勿論持って来てま・・・・・・!?」
―――あ、あれ、入れたわよね、確か。あっ! あの時机の上に置きっぱなしだったわ。
と、アミリは原因を究明して。
アキラとアミリ以外、全員持って来ていて。
「ま、まあ宿題なら何とかなるわよ!」
「そうですのよ。別荘に着いたら、執事さん達やお手伝いさん達が歓迎してくれるんですの」
「凄い!」
アーティナの言葉を聞いて、つい、カナミが口から一言零してしまう。
その後も、他愛無たわいない話をしていると、漸く目的地に辿り着く。
「想像以上に大きい!」
魔法車から降りたヒョウガが、そう呟く。
「そうだろう。妻が海の近くが良いって言っててさ! さあ、もう直ぐだからね」
「お・・・おう!」
アーティナの父を先頭として、皆がドアの近くまで行くと、五人の執事が立って居て。
「皆様、お待ちして居りました。では、お客様のお荷物をお持ちしますのでどうぞお入りください」
「あ? はい!」
五人の執事の一人―――恐らく五、六十歳位の縁眼鏡をして白髪だらけの執事が歓迎の言葉を言うと。
他の五人も歓迎の言葉を言って、ヒョウガ達の荷物をそれぞれ分けて受け取ると、白髪だらけの執事が先導してくれて。
「アーティナお嬢様、それと、ルームメイトでお友達の方々ようこそお越しになってくれました。私はここでお手伝いをしてるルエルと申します。こちらは、私の仲間です。分らないことが有りましたら何時でもお答えしますよ。では、カレロさん、他の執事さんも皆様のお部屋の案内して下さいね」
「ええ、そうさせて頂きます。ルエルさん。お客様のお部屋はこちらです」
中に入ると―――ルエルと名乗るオレンジ色の髪に、紫色の目を持つ、恐らく三十過ぎの女性や、同じくエプロンを着たお手伝いさんが歓迎し。
疑問に答えてくれるらしく。
白髪だらけの執事、カレロに付いていった先は、
「アリマ様ですかな?」
「そうですけど?どうかしましたか?」
「アーティナお嬢様がよく、お話ししてくれるからですな。話を戻して、ヒョウガ様のお部屋はこちらです」
―――何とも一人で過ごすには広すぎるほどの大きさで。
「お荷物です。中に入れて措きますよ」
「あ‥…ありがとうございます」
と言ってヒョウガは、部屋に入って荷物の整理をし始めて…
「次は、カナミ様とアミリ様はこちらになります」
案内されて部屋に入ると、海の景色が見える所で、アミリと、カナミは口から一言零す。
「き、綺麗ね」
「本当だ!! 良い景気」
二人とも気に入った様子だ。
「最後は、ミューフィ様とアキラ様のお部屋はこちらになります」
―――部屋は、アミリ達の部屋より少し歩いた所にあり。
「あそこ登って見たいよー。獣居るかな?」
「駄目ですよ。危ないですから」
あそことアキラが指さしたのは、窓から見えた登山の出来る深山で。
「ラックちゃんもサラちゃんもこっち追いで、他の子達も待ってるよ」
深山の方を見ていた、ミューフィとアキラにアーティナの母が呼び掛けられて、四人は衣類試着室へ向かった。




