130話 楽しいデートの裏では···
今回で狼の仮面を付けた男との戦いは佳境へ
遊園地の南アリア隅。ゲームプラザ。
射的コーナーの前に二人はいた。
ーーゆっくりと狙いを定めて…
バン、バン。
二回ともハズレてしまう。
リーフが狙っているのは、大きなリボンが頭に付いた黒い栗鼠のぬいぐるみだ。
最上段の中央やや左と狙い難い場所にある。
「難しいのじゃ」
「こうやってやるんだ」
う~んと唸ったリーフに、腕と体を使って教えた。
バンッ、ポトン
「やったー。取れたのじゃ」
何度も狙っていた黒い栗鼠のぬいぐるみが、命中したことによって倒れて下に落ちていく。
「良かったな」
「コツを教えてくれてありがとうなのじゃ」
嬉しそうに大きな縫いぐるみをぎゅっと抱き締めたリーフ。その反応にヒョウガもニッコリと笑う。
「次はあれやるか」
「そうするのじゃ」
ヒョウガが指差したのは、ボールを投げて高得点を競うゲームであった。
「勝負なのじゃ」
「良いぞ」
リーフの挑発をヒョウガは乗るようだ。
手元に来たボールを、離れた的目掛けて投げる。
ど真中は五十、その次は四十。三十、二十ポイントの順だ。
「えいっ」
垂直に飛んだボール。飛んだボールは的の方へと飛んで行くも、最後は中央を少しずれてしまう。
 
リーフの獲得ポイントは四十であった。
「ほいっ」
ボールの軌道がズレてしまい、当たった的の数字は三十だ。
「最初はこんなもんか」
「まだ四回あるから大丈夫なのじゃよ」
気にする素振りを見せないヒョウガへ上から目線に言う。
二セット目。
「俺から行くぞ」
と言うと右手に握っていたボールを投げた。
綺麗な弧を描き、ボールはど真中に命中した。
「上手く行ったな」
嬉しそうだ。
続いてリーフがボールを投げ…
途中でズレてしまい、真中少し上の四十ポイントを獲得する。
「また同じだったのじゃ」
悔しがるリーフ。
三セット目。
「コツが掴めたのじゃ」
そう言って、ボールを両手で掴んで投げた。
力加減も良く、ボールはど真中に当たってーー。
「やったのじゃ」
リーフは凄く嬉しそうだ。
「んじゃあ、俺も投げるか」
ボールを強く握り締めて投げた。
綺麗に弧を描き、ど真中に命中する。
「また一番高い高ポイントをゲットだ」
命中率の上がった二人。
現在のポイントは、ヒョウガが百三十ポイントで、リーフの方は百三十と同点で互角な相手な相手らしい。
四セット目。
「大きな差を付けてやるのじゃ」
と意気込んで投げたボールは大きくズレててしまう。
当たった的は二十ポイントだ。
「失敗したのじゃ」
「今のは勿体無かったぞ」
悔しがるリーフへとそう声掛けをすると。
ボールを真中目掛けて投げた。
命中し五十ポイント獲得する。
ここでリーフが勝つ事は出来なくなってしまう。
万が一次五十ポイント取って、ヒョウガが大きく外しても同点にしかならないから。
最後のセットは予想通りの結果となり、最終獲得ポイント百八〇VS二百三十でヒョウガが勝利した。
「悔しいけど楽しかったのじゃ」
「ああ、俺も楽しかったぞ」
悔しがる素振りを見せるも、楽しさが悔しさを上回ったようだ。ヒョウガも同じようだ。
二人はゲームプラザを出てーー
「お土産見にでも行くか」
「そうするのじゃ」
ヒョウガとリーフはお土産売り場へ向かった。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
狼の面を付けた男と激戦を繰り広げるアミリ達。
あきらの指示を受けた真っ白な妖精は、小さな口を動かしてーー、
「〈エアラ・ノケー・ディブル〉」
呪文を唱えた。
すると真っ白な妖精に変化が起きた。
掌サイズの妖精が次第に大きくなっていく。
ーー二十メートル程迄に巨大化してしまう。
人気の無い広場で、周りは仕切りで覆われている。
その為、巨大化した妖精が外から見られる心配はいらない。
まさか戦闘が行われているなど、誰として知る由もないだろう。
巨大な妖精の腕が、レクトを容赦なく叩き潰す。
レクトはサーベルを構えると。
「剣技〈妖精絶剣〉」
サーベルが突如妖精の輝きを発し始めた。
何故、妖精使いですら無い彼が使えるのかと言うと、単純な話だ。コピーしただけから。
借り物の力故に、上手く使いこなせているようです、こなせていない。
妖精の輝きを発するサーベルは、妖精を絶命させられるとされている。
妖精の輝きを発するサーベルの斬撃で、巨大な妖精の腕を切り落とした。
腕を失った妖精はみるみるうちに小さくなって行く。
追い討ちを掛けるかのように、もう片方の腕と心臓を切り裂いた。
斬られた箇所から次第に粒子となっていき、残りの部分も粒子となって消えてしまう。
「妖精が消えちゃったよー」
「これで終わらせられ···」
最後まで言い終わる前に、レクトに異変が起こった。
突如として激しい痛みに全身を襲われてしまう。
痛みに耐え切れず地面に伏せぎ込んだ。
出血や吐血等はしていない。
「···まさ、か···これは···」
ーー妖精の仕業か…
言葉にするよりも先に限界を迎えーー
「何が何だか分かんないけど、勝ったよー」
「やったわね」
「強い相手でしたが何とか勝てました」
勝ち誇った様子で三人は喜んでいた。
すると。
「こんな所で何してるんです?」
 
アキラ達の背後から聞き覚えのある声がしてきた。
この場所に似つかわしくないメイド服の少女が、いつの間にかここに来ていた。
気配すら感じ取れていない。
「た、確かメイドのチームのエーゼルさんでしたね」
「何時からいたのでしょうか?」
「それが、実はウチらそいつに襲われてたんだよー」
メイドの少女、ロコの事を思い出したアミリ。
行き着いた疑問を、ミューフィが口にすると。
「そうだったかです」
アキラの説明にうんうんと頷くと、狼の面を着付けた男に近付く。
途端に着ていたメイド服が、黒装束へ変化した。
「確りするです」
死に掛けるレクトに触れ…
「〈呪妖解除〉」
呪文を唱えた。
刹那。妖精に掛けられた死の呪いが解けていく。
「君は? 」
「あの人から聞いてないなら良いです」
「まあ細かいことは詮索しないでおくさ」
気にならないと言えば嘘になるが、自分の敵では無いようだ。
ーーい、今あの人って言ったわよね。もしかしてきた元武装守護学園長のセロラン・リュードと繋がってると言うこと!?
アミリは目の前にいる小さな黑装束の少女、ロコを敵と見なす。
「苦戦してるようだから、これを使うです」
そう言って、禍々しさを抑えきれない指輪を渡す。
「これは何だ」
「あの人が言うには、勝利に繋がるアイテムだそうです」
「そうか。では遠慮なく使わせてもらうさ」
ロコの持つ指輪に、躊躇いもなく右手薬指を通した。
填めた途端、レクトの腕が硬い鱗で覆われ始める
硬い鱗の侵食は続き、次に胴体、左腕、終いには頭をも硬い鱗で覆われてしまう。
「ぐわあ~~~」
呻き声を上げた直後。背中から四本の腕が生えてきた。
「ここまでして名乗るのを忘れてたぞです。私はアテナ。呼び名だけでも覚えておいてください。でもまぁ」
アテナと名乗ったロコ。
何かを言い掛けて止めると。
「私は用が済んだから帰るです」
「ま、待ちなさい」
帰ろうとするロコの足を、アミリは止めさせーー。
「覚えてもらったのは良いですが、残念ながら私がここに来た事や話の内容ごと全て記憶を消すです。そして作り替えた記憶を植え付けます」
「何を言ってるのか分かんないよー」
アキラがポカンとするも、次の瞬間全て理解させられてしまう。
「〈記憶操作〉」
『ここに来たのはボスであるセロラン・リュード。指輪を渡したのも。会話をしたのも、元北武装守護学園の学園長だある、セロラン・リュード。あの人の部分や私の正体は全部忘れる』
術をこの場にいる全員に掛け、ロコはこの場を去った。
次回異形な姿となった脅威との決着が着きます
果たして勝てるのか
 




