115話 同盟を巡る戦い〈終着〉
現在。
再びトラニアが仕掛けようとしていた。
「行け!」
指示を受けたリヴァイアサンが業火を噴く。
その業火を、ルーミランが真っ二つに切り裂く。
「何だ、今のは!?」
技妙を目の当たりにし、驚くトラニア。
「まだだ。もう一度。灼き尽くせ」
リヴァイアサンが再び業火を噴くも、軽い一振で払われてしまう。
「馬鹿な···まだだ」
認めたくない一身で、リヴァイアサンに何度も業火を噴かせる。しかし全て振り払われてしまい。
「次はこっちから行くナ。
黒豹魔術〈黒炎豹剣〉」
強く握りしめた黒剣へ魔力を流し込む。
同時に虚空から黒炎が出現。
黒く燃え上がる炎が、剣先へ降り注ぐ。
そして飛び上がると、リヴァイアサンを斬り倒す。
「―――!!」
咆哮すら上げられぬまま、リヴァイアサンはその場に倒れ込む。
「まさか、我の奥の手迄殺られるとは···」
とここで、トラニアは戦線離脱してしまう。
「それじゃ、こっちから行くナ」
「ああ、何時でも良いぞ!」
ヒョウガとの一騎討ちとなり、一気に畳み掛ける。
どんどんと距離を詰めていく。
そしてヒョウガへ向け、黒剣を振り下ろす。
「海底王槍術〈大波結界〉」
―――大きな波を起こす。
斬撃と波が衝突し、衝撃波が生じる。
「くっ···」
勢いで飛ばされ掛けるトラニアは、何とか回避した。
押し押されを繰り返すうちに、斬撃が弱まっていく。
「ただ斬っただけでこの威力···凄く強いぞ」
「これでもまだまだなんだナ。本気出してないしナ」
凄まじい威力に圧倒される ヒョウガ。対照的にルーミランは余裕さを咬ます。
「海底王槍術〈海水氷結〉」
槍を掲げると、突如地面が水海へと一変した。
一変したのも束の間、水うん、が凍り付くのだが。
「黒豹魔術〈猛炎豹剣〉」
強く握り締めた黒剣へ、魔力を流し込む。
同時に虚空から猛炎が出現。
激しく燃え上がる炎が、剣全面に降り注ぐ。
すると氷結した水海を灼き払う。
「ん···!? まさかこれも駄目だとはな」
「これが黒豹の力だからナ」
悔しさを滲ませるヒョウガに、豊満な胸を張って言う。
「んじゃあ、これはどうだ。
海底王槍術〈炎海炎柱〉」
槍を掲げると、突如地面が燃え上がる炎海へと一変した。
そしてルーミランへ炎柱が襲うが。
「黒豹魔術〈鬼雨魔法〉」
技を発動。
強く握り締めた黒剣へ魔力を流し込む。
すると魔法でゲリラ豪雨を起こす。
ゲリラ豪雨によって、炎柱は愚か炎海さえも消沈してしまう。
「強いぞ! 何て技だ」
「これが格の違いってやつなんだナ」
格の違いを思い知らされてしまう。
ぐうの音もでないヒョウガは、悔しさで唇を咬む。
ヒョウガへ次の攻撃を仕掛けようとする。
しかしそのタイミングで時間が切れ黒豹は姿を消す。
「あちゃ、制限が来たんだナ」
ルーミランはがくりと肩を竦めた。
「惜しかったんだナ。後少しで勝てたの。
にナ」
目前に勝利が見えての制限に、ルーミランは切歯扼腕しながら跪く。
「こりゃ、アタシの負けナ」
と敗北を認めた。
立ち上がろうとするも、戦いの反動によって足が思うように動かせない。
その事に気付いたヒョウガが駆け寄ると。
「ほら、掴まれ」
そう言って肩を貸し、二人は防御壁を出る。
出ると冷たい地面で少し休む。
「助かったナ。とはいえ、負けたからには同盟は無理なんナ」
「その事なんだが、良かったら俺と組まないか? 正直戦っていて楽しかったぞ。此処までの相手とやったのは久々だ。貴方はどうだ?」
諦めムードのルーミランへ、自分の意思を伝えた。
そしてそう提案をした。
その提案に、暫し考え込んだ。
「同盟を組もうだと!?
確かに楽しかったナ。正直此処までの強敵と戦うのは初めてだナ。メリットは?」
「俺と好きなだけ戦えることと、俺に負けないくらい強い仲間と戦えること。それに面白い。何なら入ってくれたら、#天使__シナモン__#を1日貸すぞ」
途轍もない事を言い出す主に、シナモンは膨れっ面をする。
好条件にルーミランは揺蕩う。
軈て一つの答えを口にした。
「同盟の話、受けさせて貰う」
「良かった。心強い仲間が増えて嬉しいぞ」
難航することなく、あっさりと決まった事もあり満足げなヒョウガ。
「改めて宜しくナ。ヒョウガ」
「ん···!? ああ、よろしくな。ルーミラン」
自然と名前呼びへと変わった二人は、握手を交わす。
「ふぅ、負けた我は去るとするか」
負けたトラニアは、遺跡の出口へと向かおうとしていると。
「貴女は本当にそれで良いんだナ?」
「良いに決まってるだろうが」
「目は正直だナ。同盟が一ヶ所とだけとは決まってない。弱い弱くないはおいといて、先の戦いが楽しかった。それが入る理由でも良いと思うナ」
「ふぅ、今は考えさせてくれ。必ず答えは出す」
ルーミランに思いの丈をぶつけられて、トラニアの考えが少し変わったように見えた。
最後は静かに遺跡の外へと向かう。
「ルーミラン、足はもう平気か?」
「うん、もうなんともないナ。ありがとう」
「んじゃあ、俺たちも出るか」
そう言って、二人も遺跡を出ていく。




