111話 同盟を巡る戦い〈開戦〉
静り返った遺跡の中では、少女二人の声が響き渡っていた。
少しのし沈黙を開け、茶髪の少年───ヒョウガが口を開くと。
「その気持ちは嬉しいんだけど、どちらのチームにも行くつもりはないぞ」
「何!? どうしてなんなんだナ?」
「何故我の誘いを断る?」
拒否された二人は、理解が出来てない様子。
「今の仲間で勝ち上がりたいし、離れたくないからだ」
「そうなんだナ。けど諦めたりしないからナ」
「強いチームではあるが、我たちとして、何時躓顚するか分からない。だからその前に力を貸して欲しい」
二人の意思は頑なで、一歩も引こうとしない。
「それに貴方の天使とても可愛いのナ。是非触れ···仲良くなりたいんだナ」
うっかりと本性を表す。
「アリマ·ヒョウガ。貴様が竜召喚に加われば無敵だ。更に優勝に近付ける。悪い話では無いのでは無いか?」
拒否されたにも拘わらず、無駄な抵抗を見せる。
「そう言われてもな···」
困り顔のヒョウガへ。
「──そうか。よく分かった。力尽くで手にする迄だ」
「アタシが先に目を付けたんだから、邪魔は許さないんだナ」
「だから···人の話をちゃんと聞けって···」
言い合いを始める二人に、ヒョウガは止めに入るも聞く耳を傾けない。
「済まんな。吾の主の見苦しい姿を見せてしまって。とても大変だ」
「己の主も大変で困る。其方の方と変わらない」
「貴方達は大変だね。シナモンの所はそんなこと無いもんね」
三人の会話を他所に、天使達が愚痴を溢す。
ただ一体──シナモンだけは無いとは言うが。
「時々忘れられて放置されるだけだもん」
ヒョウガへ向け、強い視線を送る。
その視線に気づいたヒョウガは、ゴメンとジェスチャーで伝えた。
言い合いが今だに続き、一向に終わりか見えない。
痺れを切らした少年は。
「別にどっちよチームにも入るつもりはない。どうしてもって言うなら、俺に勝ってから言え」
挑発とも取れる発言に対し、二人の少女はお互いにかおを見合わせると。
「ふっ、良かろう。それで気が変わるならお安いご用だ」
「アタシもそれで良いんだナ」
ヒョウガの誘いに乗っかった。
こうして、古代遺跡を舞台にした天使使い同士の戦いが始まろうかとしていた。
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丘の上に佇む小屋の中。
傷口が完全な迄に塞がった茶髪の少年──レクト。
「目覚めたようじゃのう」
ベッドで目覚めたレクトへ、声を掛けてきた老夫──リュード。
「さ、これからのことを話そう♪ 早く早く」
そう急かすのは、ベッド脇からピョコンと飛び出てきた少女──ネスィチアだ。
「姉さんの言う通り、そうしよう」
「そうさね」
お茶を沸かし、此方へとやってきた双子の少年──マルとオム。
全員が揃うと、席に着く。
──席順は、小屋の入り口から見て右。奥からオム、リュード、ネスィチア。反対側にマルとレクト。
席に着くや否や、熱々のお茶を少し冷ます。
そして少しずつ口に運んで飲んで行く。
「頼まれた件は済ませてからの方が良いのう。それが済んでから、HG作戦とTM作戦に入ろうかのう」
「HG作戦は任せてね♪」
「お祖父ちゃんに良いところ見せないと」
「成功させる」
今後の動きを話すリュードへ、孫達は意気込む。
そんな孫達へ、「一つだけ」と何やら伝えたいことがあるらしく。一旦区切ると。
「どうしても避けたいことがあるのう。二人の天使使いとは組んではほしくないのう。邪魔をしてくるからのう」
「確かに邪魔されるのは嫌だね♪」
着実にフラグを立てていった。
 




