104話 パティスリー
昼食を終え、午後の試合を見にヒョウガ達は、コロシアムへと向かう。
一番前の席が偶々空いていた為、そこへ座る。
間もなくして、午後の試合が開始された。
チーム〈喫茶 虎居雷門〉VSチーム〈ルロア〉の試合だ。
「宜しくお願いします」
「此方こそ宜しく」
と挨拶して始まったのだが。
「え?」
と、拍子抜けしたような声が漏れるのも当然だろう。
開始して僅か五分足らずにして、もう残り二人だけなのだから。
ーーー残りの二人もまた、目にも止まらぬ速さて仕留めていく。
「な、何て強さなのよ! あの娘達」
「ん…!? ああ、確かに強いな。全然目に止まらなかったぞ
」
「あそこ迄強かったんだね」
「鳥肌立つ試合立ったですの」
「確かに凄かったです」
「戦うメイド格好良かったよー」
あまりの衝撃に我に返るのを忘れていたヒョウガ達。
呼吸することさえ忘れていて、慌てて肺に酸素を送る。
「ありがとうございます」
「その笑顔と戦いのギャップが凄い。完敗だ」
喫茶 虎居雷門のリーダーーーーゼレリアが笑顔で喋るのを見て、相手チームのリーダーの男が苦笑いした。
男がゼレリアへ右手を差し出すと、ゼレリアはその手を握り握手を交わす。
それに合わせて他のメンバー達も、相手と握手を交わす。
こうして午後のAブロックの試合は終わりを向かえた。
続いてBブロックの試合がモニターに映し出された。
Bブロックの試合は、チーム〈パティスリー〉VSチーム〈植物使い〉だ。
「では、これよりチーム〈パティスリー〉VSチーム〈植物使い〉の試合を始めます」
海底王の従者の女性が、開始の合図を出す。
「美味しく···あ、違います。間違えです。宜しくです」
「へ? ええ、此方こそ宜しく」
パティスリーのリーダーの少女ーーーマカロンが奇妙な言い間違いをしてしまう。
それに一瞬戸惑った植物使いのリーダーの少女が遅れて挨拶をする。
そして彼女が右手を差し出すと、マカロンもその手を握り握手を交わす。
それに合わせて他のメンバーも相手と握手を交わす。
そして作戦通りに動く。
「仕掛けてくるのを待つです。来ないなら此方から食べさせに行きます」
『はい、タルトも大人しく待ちます』
『では、ロワも守りを固めよ』
『攻めるとき迄食べるのはお預けか』
『まあまあ、下拵えは大事じゃん。楽しく待とうよ』
『さて、準備準備』
自然なストレートヘアのショコラブラウンカラーの少女ーーーマカロンが指示を出す。
ーーーそして相手の攻撃を待つ。
暫くして、二人の男が攻めてきた。
「植物術〈人食い植物〉」
片方の男が、地面から人食い植物を生やす。
生えた人食い植物は、銀髪のミディアムヘアの少女ーーータルトを襲う。
がしかし、少女へ襲いかかる寸前で赤茶色の少女ーーーロワが技を発動。
「〈ショコラエタン〉」
襲いかかる植物の足元に、突如チョコレートで作られた池が出現。
ーーーショコラエタンは、そのまま植物を呑み込んでいく。
もう一人の男も仕掛けた。
「植物術〈薔薇吹雪〉」
刺々しく、そして凄まじい破壊力を持つ薔薇を、リボンで髪を纏め上げた少女ーーーフランへ吹かす。
ーーーそれを。
「〈ジェラート〉」
その薔薇吹雪を、突如にして刹那に出現した巨大なジェラートで、全てを打ちのめす。
「何なんだ···この強さは…」
「たかがスイーツに」
そう二人が喚くのも無理はない。
理論上不可能なことなのだから。
「〈ジェラートスノー〉」
その巨体なジェラートが、雪の如く降り注ぐ。
カチンコチンに凍っていることもあり、食らえば多少はダメージを食らう。
降り注がれた二人は。
「ぐぁッ……冷たい冷たい」
「ぐぁぁぁ……冷たい冷たい」
身体が凍てつき始めて…
タルトが次に仕掛けた。
「タルトも行きます
〈ホットクレープ〉」
熱々のホットケーキを二人の男へ落とす。
「ごあっ……熱い熱い。何て熱さだ…」
「あがっ……熱い熱い。一旦退くか」
熱さに身体を蝕まれてる二人は、退くことに。
次はパティスリーから攻めに行く。
前衛を行く口から涎を垂らす、空腹な少女ーーーシャルロットと、黄金色の髪を持つ少女ーーーフィナが仕掛ける。
「それじゃあ、遠慮無く食おう。
〈ルーロガトー〉」
「〈ショコラエタン〉」
涎を垂らすシャルロットが、植物使いの少女二人を囲繞する。
同じく発動した技は、ロールケーキを擦り付け、二人の足元へ。
チョコレートは二人を呑み込んで行く。
彼女達は倒されたわけではないから。
「この抜け出せないチョコレートの中で大人しくしててね」
「さて、次いこう」
「次はどれにしよう」
去り際に振り返ったフィナが、呑み込まれていく二人へそう囁くと。
どんどん前へと進み始めた。
そう、どんどんと。
「来たし、皆構えて」
リーダーの指示に従い、盾役の二人の男が仕掛けた。
「植物術〈爆破植物〉」
「植物術〈毒噴射〉」
目付きの悪い方の男は、攻めてきた彼女達の足元に植物を生やす。
その植物には、軽く爆破させる威力を持つ。
同じく発動した高身長の男が、爆破した地面へ植物を生やす。
その植物から猛毒を放つ。
ーーーこれだけしたんだ。全滅とは行かずとも多少はダメージ受けているだろ
そう高身長の男が思った刹那的一瞬ーーー
男の右足が深々と切断された。
「ん…なっ……ぐぉっ……痛い痛い痛い」
ーーー何故こうなったのか理解できない。
その答えは次の瞬間に訪れる。
岩場に似つかわしくない、チョコレートの池が背後に出現し…
そこから表れたのは言わずともわかる。先程爆ぜたはずのパティスリーの面々。
ーーーそう、先の男の足を切ったのも彼女だ。
そして仕掛けてきた。
「〈フルーツタルト〉」
「〈アップルゼリー〉」
虚空から幾多ものフルーツが出現。
そして二人の男へ、生地を文字通りに流し込む。
その生地はどんどんと固まっていき、身動きを取れにくくし。
相手が攻撃出来ないくらいに。
そして、幾多ものフルーツが凶器となって落下していく。
突如上空に巨大な林檎のゼリーが出現。
見構えてる目付きの悪い方の男の頭上へ、凄まじい勢いで降下していく。
ーーー落下の勢いで、足場の小石や砂利が勢い良く飛び散った。
今だ右足に負傷した男へ、フルーツを食らい倒れ込む。
ーーーそこへ。
「〈ショコラフラッペ〉」
両腕をチョコレートに変えたタルトが、強烈な殴りを繰り出す。
「植物術〈植物の祝福〉」
ギリギリのところで駆けつけた少女が技を発動。
チョコレートの殴りを植物の癒しだ抑えようとするが。
抵抗空しく、少女の方が食らってしまう羽目に。
ーーー殴られた少女は。
「うぅっ……」
呻き声を上げ、その場に倒れ込んだ。




