94話 試合開始
試合当日の午前。ヒョウガたちは、三十分ほど前にコロシアムへと着いた。
コロシアムの足場は、石畳で出来ていて…
控え室で待っていた彼らは、最終調整を整えると。
「んじゃあ、まあ、勝ちに行きますか!」
「そ、そうね! 気楽で良いわね」
「雲泥の差を見せ付けてやるですの」
三人の意気込みに、他のメンバーもヤル気満々の様子で。
その直後ーーー試合の時間になった為、コロシアム内へと入っていく。
中心に行ったところで向かい合い。
「宜しく頼む」
「ああ、宜しくな」
相手のリーダーであるーーージェームズが、手を差し出すと、それを握って握手を交わす。他のメンバーも交わすと。
ーーー両チームが動き出す。
先ず動いたのは、秘策を持つヒョウガ。
彼の後をサラとアミリが配置されている。
「んじゃあ、行くぞ!
神力ーーー風神 」
風神が現れるや否や、身体の中へと入っていく。
「風神覇奥義〈烈風舞踏〉…」
「その攻撃は見知ってるーあ。
聖銃術〈聖壁の盾〉」
非常に強い風が、彼の周りを、覆い尽くす。
ーーーその直後。
聖銃師の一人ーーーディスカルが、聖銃を静かに構え、引き金を引く。
放たれた弾は、聖なる壁となり、攻撃を防ぐ。
「大したこと無いーあ」
「それはどうかな?」
素っ気ない対応されるも、彼はそうは思わない。
アーティナの戦いの方は。
カナミが意識を集中させてる間に、二人が仕掛けた。
「行くですの!
武装魔術〈究極の光魔一剣・零〉」
相手チームの一角。
白銀少女ーーーアラネーヌの至近距離に移動すると、技を発動。
燐光する光が、突如照らしつけられた。
ーーーその光には、彼女の全てが込められている。
その燐光を発する光を、光魔剣に降り注ぐ。
渾身の一撃を、少女へ叩き込む。
ーーーが、しかし、
「聖銃術〈結界〉」
寸前で弾き飛ばされた。
その起因となったのは、アラネーヌが聖銃で結界を作り出したから。
「中々やるですの!」
「そんなことはい」
と愛想のない少女。
次に仕掛けたのは相手チームだ。
「アラネーヌの言う通り。まだまだこれからだから」
と、少女ーーーババリナが口にすると。
「驚かせてやろう。
聖銃術〈聖光の百万放〉…ッ」
ーーー聖光の百万放とは文字通り、聖なる光の弾が百万峰放たれる技だ。
咄嗟に防ごうとしたアーティナと、回避を試みたミューフィを容赦なく撃ち抜く。
ヒョウガ達の戦いは。
「い、行くわよ!
武装魔銃術〈水神の弾〉」
準備を整えたアミリは、銃口を黒一色に統一された男に向け、引き金を引く。
ーーーバンバン。
放たれた水神の弾は、一ミリたりともズレることなく、その男へと飛んでいく。
「能力〈写し鏡〉」
迫りつつある弾を、写し鏡の如く反射させ、発動者へと帰っていく。
「ぐぁぁぁ……痛い、痛い。あ、甘く見ていたわね。やるわ」
「スパスィーバ。けど、もう少し楽しませて欲しい」
ーーー自分の攻撃を食らい、吹き飛ぶ。
見下ろす少女がそう発すると。
「次は此方から行かせて貰う。
聖銃術〈聖炎の弾雨〉」
「妖精、何とかしてー」
「はい、マスター。分かりました。
〈ヴィルール·アーラ·カラレート〉」
ーーー宣言通り、攻撃を仕掛ける。
銃口を空に向け、引き金を引く。
すると上空に、聖なる炎が放たれた。
放たれた弾が上空で数多の弾へ変化し、雨のごとく降り注ぐ。
妖精にサラは指示を出す。
妖精が呪文を唱えると、彼女の周りを結界が張り巡らされていく。
当然ながら降った弾はーーー結界によって弾き飛んだ。
カナミの方は。
撃ち抜かれた二人は、血を吐き出し、身体からも血がどんどん抜け落ちていく。
「武装想像〈生命の湖〉」
ーーー生命の光で覆われた湖。
それを作り出した彼女のお陰で、血がどんどん身体の中へ戻っていく。
あっという間に傷口は塞がる。
「ありがとうですの! カナミ」
「助かりました。ありがとうございます」
「どう致しまして」
そう言葉を交わすと。
「それじゃあ、行くね!
武装想像〈月光の女神〉」
目の前に月の光を浴びた女神が出現。
ーーーその女神は、手に持つ弓で青年を射抜く。
「ぐあ"あ"……流石だ……」
攻撃を食らい、流血して致命傷を負うのだった。
 




