91話 秘宝争奪戦〈決着〉
ヒョウガ達の戦いは。
「んじゃあ、俺も行くぞ!」
「良いぜい! 楽しませてくれ」
ヒョウガのの言葉を汲んだフェンネルは、「アオーーーン」と遠吠えをしたのも束の間ーーー
鳩族のミカドの元へ、一本の連絡が入る。
その相手はチームメイトから。
『ポッポっポッ。そうかそうか。分かったポン。ふむふむ、分かったポン』
『それで今何処に居るポポ?』
『遺跡だポン。探し物して』
『へーそうなんだ。じゃあね』
プツリッ、と音を立てて通信機を切ってから。
「一戦目が終わったようだポン。それで用事が出来たポッポ」
「それでどうする?」
「秘宝は欲しいさね。けど仕方ない」
聞いた内容を話すミカドへ、女は尋ねてきて。
その様子に、他の仲間も動きが止む。
「運が良かったと思うだポン。今回は諦めるが次は秘宝を頂くポン。力ずくでも」
そう男が宣戦布告すると、仲間と共にこの場から立ち去る。
そして残された彼らの間に、長い黙りの中最初に破ったのは。
「な、何だか分からないんだけど、そんだどうなるわけ?」
過ぎ去った大嵐に対し、アミリはそう聞く。
すると。
「結果はともあれ、俺達のものになるんだよな?」
「━━━ああ、約束は約束だ。確り守ろう」
ーーー決着が着かぬまま戦いにも拘わらず、約束は守るって貰えるらしい。
ーーーそして、
「んじゃあ、ーーー汝、現在この時より、我と永劫の契約を結び、我の片腕となれ」
「良かろう。死迄の長旅を共にしよう。我が主よ」
誓いを交わすヒョウガと槍。
お互いが誓いを述べたところで、槍は武装解除して空いた右手に移動し。
こうして武器を入手。
「それで、リーフちゃん達の試合はどうなったの?」
「一寸待ってですの! アタシの小型映転写器で見てみるですの」
と言うことでヒョウガ達は、映し出された映像を覗き込む。
数分間の間、誰として口を開くものはおらず。
ただ聞こえてくるのは、六人の息遣いのみ。
そこから一分も経たぬ内に、一人が唇を震わせ…
「嘘!?何今の技? これだけで全滅させるなんて…」
「サン・ヴィアンツ。古代ベルソーユ語です。意味は」
「血が貴方を拒むだったよな! 血に拒まれてリーフ達は負けたんだ」
「そ、そうね! あの二人以外は弱いけどね」
「あんな反則級の技を使うなんてズルいよー」
アーティナを除く五人は、画面内で起きている異様に、圧倒されてしまい。
何故アーティナだけ言葉を発さないかと言うと、言葉を失っていたから。
そうーーーそれだけの衝撃を、彼はは与えたのだ。
「そろそろホテルに戻るぞ!」
声を掛けたヒョウガに、それぞれが頷き返すし、一行は遺跡にそとへ。
遺跡を出ると彼らは、来た道を辿ってホテルへと戻っていく。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
話は数分前に遡る。
場所ーーー海底楽園都市内にある、丘の上に佇む小屋。
扉の前には、二体の悪魔が見張りをしていて。
「ほほほ、先日の件は上手くやったのう。それにしてもよく知ってたのう!? この都市にあると言う秘宝のことを」
「当然ですよ。何せ秘かに聞き出していた。まあ、そのお陰で面白いもの迄釣れてしまいましたけど」
真っ白な老夫ーーーリュードが、目の前で紅茶を啜るヒョウガの従兄妹ーーーレクトの功績を称える。
そこで疑問を抱いたリュードへ、レクトはそう答えて。
ーーー上手く仕込めた。計画通りに進みそう。
と彼は内心でそう思う。
「それにしても、あの人も人が悪いよね♪ あんな粗大塵何て消せなんてさ♪」
「儂の可愛い孫同然の子に強請られたら、断りきれないからのう」
老夫の隣に座る孫の一人ーーーネチスィアがゆらゆら左右に揺れ、薄笑いを浮かべ、死んだ男を粗大塵扱い。
「それよりも兄が、あの秘宝を手に入れたようです」
「それは面白そうさね」
「そうだっけな。何時かお手合わせ願いたい」
「無理なことは言わないでね♪ そんなこと出来ないから」
レクトの報告を聞き、リュードの孫の双子が、顔を見合わせて歓喜する。
「こっからもっと面白くなるのう」
「それは嘸かし面白いんだろうね♪」
「この紅茶の様に甘くて、香り豊かな結果になると良いね」
姉がクッキーを摘まみ、口に運ぶ。
その隣に座る弟ーーーマルが、カップを揺らして香りを楽しむ。
そして彼は独特な言い回しでをすると。
「今は彼らに平和な時間を過ごさせよう。今だは。近々決行するその時迄」
ーーー近々決行するその時迄が近付きつつあることを、ヒョウガ達は知るよしもない。
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ヒョウガ達が選手ホテルへ着くと、時刻は午後四時を回っていた。
部屋の扉を開けたヒョウガは、部屋の隅で縮こまるリーフに気付くと。
そっと幼女に近付く。
「試合映像みたぞ! 何て言うか…最後のあれはセコいな!」
「・・・・」
そして優しい声音で話し始め…
「リーフは凄く頑張ったぞ! うん、頑張った。残り二人に迄減らせたんだから、それだけで凄いと思うぞ! 俺は」
「・・・」
「成長したな、前よりは泣かなくなったし! 偉いぞ!」
「・・・」
二度の慰めの声をかけるも、一向に返事が返ってこない。
気付くと二人の距離はほぼ無い。
──そう、目と鼻先が触れ合う程に。
「一回戦で負けちゃった、から。こんな弱い妾なんてヒョウガやアミリ達に嫌われるのじゃ。本当は皆のことも大好きなのじゃ。だから顔向け出来ない」
「なんだ、そう言うことだったのか。別にそんなんで嫌いになんてならないぞ! 俺もカナミ達もな」
「それに本気で顔向け出来ないなら、俺の部屋には来ないと思うぞ! 何故来たか? どうせ慰めて貰いたかったんだろ」
泣きべそを掻くリーフへ、正鵠を射る。
ーーーそして幼女は。
「それはホントなのじゃ? 確かに···そうなのじゃ?」
「ああ、本当だ」
行動の矛盾に気付き、自分の本意に気付く。
ーーーそれから俺はリーフの頭を撫で始め。
優しい手付きで撫でている内に、気持ちよさそうに目を細めてからか。
先迄の落ち込んだ表情が霽れ、今では満面の笑顔を浮かべていた。
「ほら、リーフには笑顔が一番似合う! 凄く可愛いぞ!」
「エヘヘ。そう言われると照れるのじゃ」
「そうだよな(笑) それにしても、明後日の試合楽しみだぞ!」
「何か秘策があるのじゃか?」
ストレートなヒョウガの誉め言葉に、頬を赤らめて照れてしまう。
そして話題を変え、明後日の試合の話に。
食い付いてきたリーフへ不適な笑みを浮かべ、
「事前情報にはない、取って置きがあるんだぞ!」
「何時のまにてに入れたのじゃ、詳しく知りたい」
「んや、当日のお楽しみだ! 今日手に入れた。それ以上は言わない」
隠し玉があると言うヒョウガに、詳しく聞こうとしたリーフへ言うつもりはないらしい。
それから食事の時間になり、カナミ達と共に祝宴場へ向かい。
そこで食事を済ませ…
部屋に戻ると少ししてからお風呂へ向かう。
二、三十分程して部屋へ戻ってくるとすぐに、歯磨きを済ます。
それからカナミ達の部屋へ挨拶に向かい。
コンコンと、ドアをノックしてから、ドアノブに手を掛けてドアを開く。
「んじゃあ、俺は寝るわ!」
「うん、それじゃあお休み! 今日は疲れたし、ゆっくり休んでね」
「お、お休みなさい!」
「お休まないですの!」
「お休みなさい」
「お休みだよー」
彼がお休みの挨拶をすると、彼女達がお休みを返す。
そして彼は寝る準備をして、横になり、間も無くして眠りに就く。
カナミ達も歩き回って、戦って疲れたこともあり直ぐに寝る準備をして眠りに就く。
こうして一日は終わりを向かえた。
ーーー本日の他の試合結果は、前半のAブロックはチーム〈氷炎の虎〉VSチーム〈明石〉は、氷炎の虎が二ー零で破り勝利。
午後の試合は、Aブロックがチーム〈葬能者〉VSチーム〈錬金〉は、葬能者が一ー零で勝利。Bブロックはチーム〈睡眠亭〉VSチーム〈煌星〉は、睡眠亭が四―零で勝利した。




