86話 秘宝の噂
次の日。
何時と同様、ヒョウガが目を覚ますと、隣には全裸のリーフが暖かい毛布に包まって気持ち良さそうに眠っていたから。
「おい、リーフ。朝だぞ!」
「はああぁ~。おはようなのじゃ」
彼が大きく幼女の体を揺すったことで、ゆっくりと目を覚ます。
そして挨拶を済ませ、リーフは浴衣に着替える。
「そう言えば、今日試合だったな?」
「そうなのじゃよ。まあ、余裕なのじゃ」
「どんな相手だ?」
「え~と、チーム<人形繰操>って言う、人形遣いのチームなのじゃ」
それを聞いた途端、昨夕に見た資料のチームだと理解して。
「その相手には気を付けろ」
「え? 何でそこまで気懸そうにしてるのじゃ?」
「人形遣いは有りとあらゆるものを人形に変えれる。それも強さは俺とリーフに匹敵するとか、何とか…。奴等は人間も人形に変えれるんだぞ」
注意を払わすヒョウガに対し、幼女は何故そこまで彼が言うのか理解できない。
思わず、キョトンとしてしまう。
だから彼が、その理由を伝えると。
「ヒョウガ。妾はなんとしても勝ってくるのじゃ。こんなところで負けてたら、ヒョウガや皆に見せる顔がないのじゃ。だから絶対勝ってくるのじゃ」
とリーフは気概を示す。
それを聞いたヒョウガは、不適な笑みを浮かべ。
「その意気込みだぞ! お前なら勝てると信じてるぞ!」
「うん」
幼女へ思いを伝えると、幼女は幼女は無邪気に笑う。
そして朝食の時間となり、部屋に運ばれてきたパンを頬張ると、歯磨きを済ませて、 着替えてからカナミ達の部屋へ向かい。
「あ、ヒョウガ。明後日が本番だし、特訓しよっか」
「ん…。ああ、そうだな」
特訓しようと可否を問うカナミに、全員が賛成したから、早速部屋を出た。
エレベーターが丁度来て、そこから何処かの代表チームが降りてきた。
そのチームと擦れ違い際に、会話の一部始終が聞こえてきてしまい。
「何処にあるんだろうね! この都市の秘宝」
「さあ? 都市中を駆け巡ったら、見付かるかもね」
「秘宝欲しい。今日が試合じゃなければ行けたのに…」
ーーー誰から聞いたのだろう。
秘宝の在処を尋ねてくる少女。
仲間の一人が首を横に振ってそう言う。
目を輝かせていた少女は、不満を漏らす。
ーーーん? 秘宝だと!?
時間にして数十秒ほどの会話にも拘らず、ヒョウガを釘付けにしてしまう。
その女子達が部屋へ戻っていくのを確かめると。
「聞いたか? 今の会話」
「べ、別に聞きたかった訳じゃないわよ! ただ耳が勝手に反応しただけ」
「明後日が試合だから、駄目だよ!」
「だけど、今の話が気になるですの」
「でしたら、どうするか皆で決めましょう」
先に口を開いたヒョウガがそう聞くと、周り#諄__くど__#い言い方でアミリがそう口にする。
見透かしたカナミガが止めに入るも、アーティナまでも興味を持った為、ミューフィが可否を問う。
四対二で秘宝探しをすることに。
「・・・」
その様子を、息を噛み殺してみていた女は、通信機で仲間に連絡を入れ、
「ーーーそう簡単には、秘宝を手に入れはさせない」
そして女の狙いは。
「秘宝を手に入れるのは、こちらだから」
と力強く拳を握りしめてそう言い放つ。
◇ ◇ ◇ ◇◇◇◇◇
先ずヒョウガ達は、都市の入り口から隈無く探すがそう簡単には見付からず。
後からやって来た女も同じように探すが当然の如く見付からず。
次に向かったのは、都市の中央部分。
「こんなところにあるのでしょうか?」
「以外と無さそうなところにあるかもしれないぞ」
「た、確かにそう言うことあるわよね」
と言って探し始めたが、一時間経っても見付からず、その時ーーー
ぐうーーー
と可愛らしいお腹のおとが聞こえてきて。
ーーーあ!
と、お腹の鳴ったアーティナが、あッとなってしまい。
「お腹空いたですの」
「んじゃあ、ここら辺でお昼ご飯にするぞ!」
「ウチは揚げ蛸が食べたいよー」
「アタシは鉄板焼が食べたいですの」
「それじゃあ、二手に分かれよっか」
ヒョウガがそう提案すると、サラとアーティナが同時に食べたいものを言う。
別々のお店のため、カナミがそう提案により、二手に分かれることに。
揚げ蛸は、ヒョウガ、アミリ、サラ。鉄板焼はカナミ、アーティナ、ミューフィだ。
そしてお店に向かう。
後を尾けて来た女も、同じく探し回るが見付からない。
「何処にあるって言うんかいね? それよりもお腹空いたから、ご飯にする」
『分かったポッポッポッ。では、ピレーダのお店で待ってるポッポッポッ』
通信機で連絡を取り合い、落ち合うらしい。
ーーーピレーダとは、パン生地の上に、野菜やチキン、フルーツ、魚、茸等を乗せ、チーズを添えて焼き上げた料理。
揚げ蛸のお店に向かったヒョウガ達は。
揚げ蛸屋の前で、何にしようかと迷っていた。
「よし、決まったよー」
「わ、私も決まったわよ」
「俺もだ」
全員の注文が決まり、
「おじさん、この味噌揚げ蛸一つと」
「この焦がしバター揚げ蛸一つ」
「チ、チーズ揚げ蛸一つ」
「あいよ。3つで千三百二十七ね」
そうおじさんが言うと、三人が財布からお金を取り出す。
払い終わると、少しの時間へ経て、それぞれの揚げ蛸が出来上がり、近くのテーブル付きの椅子に座る。
「ふうふう。ん~ん。濃い味噌が青海苔と蛸がマッチしていて美味いぞ!」
「ふうふう、ん~ん。と、とろーりと蕩けたチーズが口の中に広がっていって凄く美味しいわよ」
「ふうふう、ん~ん。バターの甘さが蛸とマッチしていて美味しいよー」
三人はそれぞれ味の感想を述べると。
ーーーん? 隣から視線が
横目でチラリと見てみると、アミリがヒョウガの揚げ蛸を見ていた。
「ん…? 一ついるか? その代わり俺も貰うぞ!」
「べ、別に見てないわよ! けど、くれるなら貰ってあげるわよ!」
「それじゃあ、ウチも貰うよー。その代わりこれ揚げる~」
と言うことで三人はシェアし合う。
パクッ、
「ん~ん。確かにチーズ揚げ蛸も美味いな! こっちは… ん~ん。焦がしバターの方も美味いな 」
パクッ、
「ん~ん。み、味噌と蛸の相性が凄く良くてそれに味が諄くなくて良いわね!」
パクッ、
「ん~ん。本当だー。これなら飽きないよー」
シェアした揚げ蛸を食べ比べ、残りを食べ始めて。
あっという間にからになり、食べ終わる。
そして容器を近くのゴミ箱へ捨てた。
それと同時刻、カナミたちの方は。
鉄板焼のお店は思いの外混んでおり、並ぶこと何十分。
漸く入ることが出来ーーー。
案内された奥の向かい合いの席に座り、待っ間に決めてあったお好み焼きを三人分頼む。
ーーーこのお店は、店員が目の前に置かれた鉄板に材料を乗せて焼くスタイルだ。
そして焼き上がってきたから。
「どうぞ!」
と言ってから、店員は別の席へ向かう。
「それじゃあ、食べようか」
「戴くですの」
「戴きます」
挨拶をし、三人はお皿に移されたお好み焼きを食べ始めて。
「ふうふう」
パクッ、
「ん~ん。ホクホクしていて、美味しいですの!」
「ふうふう」
パクッ、
「ん~ん。確かにホクホクで、焼き具合も完璧でももんじゃもソースたっぷりかかってて美味しいし」
「ふうふう」
パクッ、
「んーん。凄くホクホクです。美味しいでさ。凄く ボリュームもあって良いです」
三人は思い思いな感想を述べると。
どんどん食べていくあっという間に間食する。そして水で口直しをし、紙ナフキンで口を拭いてレジに向かう。
カナミとミューフィの分も、何も言わぬアーティナが二人分も払う。
レジを済ませて店を出てから。
「ありがとね! 私も分まで払ってくれて」
「アーティナ先輩、本当にありがとうございます。これを返さないと」
「気にしなくて良いですの! ミューフィ、お礼入らないですの」
少女へと二人がお礼を口にするも、手を左右に振って気にしてないと言う素振りを見せた。
そしてヒョウガたちを探しにいく。
 




