皐月 2
「おいてめぇらっ!!何やってんだボケカスっっ!!!!!!!」
教室中どころか、学校中に響き渡るような大音声。
一気に私を囲んでいた男子たちがそちらを見やる。
「ちぇっ、凪咲がきたぜ」「いくぞ、おい」
学生鞄を肩に引っ掛けて仁王立ちする女生徒。その横をすごすごと通り過ぎていく皆。
時折、周りの生徒を睨めつけながらこちらへ歩いてきた彼女は、私の手を引っ張り上げた。
「ほい。片付け完了!立ちな。ほら、」
よいしょ、とかおじさんみたいな声をかけながら私を立たす。
「凪咲……。登校早々ごめん……」
「ぜんっぜん気にしてないから!それより、もっと楓佳は言いたいこと言った方がいい!!絶対っ!楓佳がこんな目にあってるの……俺、嫌だから」
さっきまでの笑顔から一転、真剣な表情で私を見つめる。彼女が、凪咲が、本気で私を心配してくれているということが、ひしひしと伝わった。
それだけに、とても申し訳ない気持ちが勝つ。私がもっと強ければ……。
「ありがとう、凪咲。でも、私にかかわると碌なことないよ?」
「はぁ~っ!そーゆーことなんて俺は気にしないの!!俺たち、親友だし!!!」
何かあったら俺に言えよーそいつら全員ぶっ飛ばすからっ!!といって、凪咲は自席に戻っていった。




