第9話:ひとしずくの時間
初めて会った日のことを覚えている。
まだ私が小学生のときだった。
夏休みが始まってすぐの日曜日に行った、母方の祖母のお見舞い先の病院。両親が祖母と難しい話をしていて、私は退屈で仕方がなかった。兄は友達とプールに行ったため、一緒に来ていなかったせいで、余計に退屈だった。
だから、祖母の病室から抜け出して、廊下の端にある非常階段の扉を開けた。
8階の階段の踊場だった。私の手の届かない、高い位置に小さな窓があって、そこから眩しい陽の光が差し込んでいた。私がそのまま階段を下りようとしていたら、彼が上の階からこっちに下りてきたんだ。
思えば、私は彼にその瞬間、一目惚れしてしまっていたのかもしれない。
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初めて会った日のことを覚えている。
面倒事を友人に頼んだ日のことだった。
帰りに、非常階段を下りていたら、彼女がいた。8階の階段の踊場。手すりに両手でつかまって、7階に下りようとしていた。上の階から下りてきた僕を、きょとんとした顔で見ていた。
小さな生き物だと思った。だから、突き飛ばした。小さくて弱そうだったから。そういうものを消さなくてはいけない、それが僕の存在意義のひとつで、本能だった。
でも、突き飛ばした次の瞬間に、僕は何故か彼女を助けていた。無意識に領域を広げて、彼女を取り込んで、柔らかな地面に落としていた。よくよく考えれば、小さくて弱い生き物を淘汰するという僕の存在意義と本能は、僕の故郷で必要だったもので、【ここ】にいる間は全く関係のないものだ。
なのに、何故か僕は彼女を消そうとした。そして、助けた。何故だろう。
ただ、驚いて泣き出した彼女が、昔、僕のことを散々に貶しながら消えていった存在と重なった。
だから彼女に泣かれるのが嫌で、彼女の頬を引っ張ってみた。びっくりして泣き止んだ彼女は、黙って僕のことを見つめた。
小さくて、面白いなぁ、と思った。小さいのに、涙が出て、感情がある。死に恐怖し、怯える。
生きていた。彼女は僕と違って、小さいけれど、ちゃんと生きていた。
思えば、僕はその時から、彼女のことが好きだったのかもしれない。
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午後5時14分。
自分で指定した待ち合わせの時間に遅れてしまった理香は、焦りつつ慎也の元へと向かっていた。
慎也は気が長い。理香が遅刻してしまっても全然怒ったり呆れたりしない。現に今回もメールで遅刻の謝罪をして慎也の現在地を確認したところ、「焦らなくてもいいよ」という返事が返ってきた。大幅な遅刻ではないとはいえ、基本的に慎也は時間に対して寛容なのだ。だからこそ時たま、理香を3時間くらい平気で放置することもあるのだが。
理香が告白場所に決めたのは、自分の通う高校の近くにある公園の中の一画だ。この公園は割りと大きな公園で、子どもが遊ぶ区画の他に軽いジョギングコースがあって、全体的には入り組んだつくりになっている。
しかし、平日の夕方には子どもが遊ぶ区画以外の場所は人気がなく、閑散としている。なので、万が一にも告白シーンを他人に見咎められる心配はない、というわけだ。
慎也の待つ場所へと向かいながら、理香は頭の中で家で練った計画を反芻した。
とりあえず、昼に校内清掃が終わってから、きちんとシャワーを浴びて下着から何から全部着替えて、汗の臭いをなくした。服はいつも慎也と2人でいるときのものと変わらないが、自分で一番似合うと思うものを着てきたし、髪には慎也が修学旅行のお土産にくれた綺麗な細工の花の髪飾りをつけている。
とにかく、ちゃんと自分の気持ちを伝えよう。
計画といっても、結局のところ、それだけだ。
ただ、恥ずかしいからと言って話を伸ばして脱線したり、「不思議」が起こって告白どころではなくなるような事態を回避できるように気をつけることが大事なのだ。後者については、理香が気をつけたところでどうにかなる問題ではないが、要は心構えが大事なのだ、と理香は自分に言い聞かせた。
児童用の遊戯区画を抜け、木々や花壇が整備された道を小走りで進む。その奥で、慎也がベンチに座っているのが見えた。
ベンチに座っている慎也は、理香を見て微笑んだ。いつもどおりの、綺麗な笑顔だ。理香はその笑顔に内心どきどきしながら、彼の正面に立った。
「遅れてごめんね、真船君」
「大丈夫、遅れるってほどの時間じゃないよ」
ぽんぽんと自分の右隣のスペースを叩いて「座りなよ」と促す慎也に、いつもより若干ぎこちない笑顔をむけつつ、理香は彼の隣に座った。慎也は静かに微笑んだまま、理香を見ている。
(くぅ……。こ、この笑顔に油断したら駄目だ……!)
綺麗な笑顔だが、何を考えているのかはわからない。慎也の笑顔は、いつも理香に内心で何を考えているのかをわからせない。そのくせ、いきなり突拍子もないことを言ったりする。慎也のペースに流されたら、理香の負けだ。
(いや、でも、いきなり告白するのって変かな……。雰囲気?とか?やっぱいる?でも、相手は真船君だし……)
理香がうんうんと内心で悩んでいると、ふいに慎也が理香の頭を優しく撫でた。
どきりとして理香が慎也を見ると、慎也は目を細めて彼女を見つめた。
「髪留め」
「へ?」
「してくれてるんだね。僕があげたやつ。よく似合ってるよ」
「あ、ああ。うん…」
褒められて、理香は照れた。慎也は優しい手つきで理香の頭を撫でている。
「さっきまで、古い友人に会っていたんだ」
唐突な慎也の言葉に、理香はきょとんとした。彼が自分の同級生のことを話すことはあったが、慎也が理香の前で「友人」の話をしたことは、これまで一度もなかった。
「真船君の友達?古いって……どのくらい?」
理香の知らない幼馴染か何かだろうか、と思って聞くと、慎也は笑って首を傾げた。
「うーん。もう、かれこれ70年近いかな」
「はぁ?」
「色々と面倒ごとを引き受けてくれる、いい人なんだよ。でも、今回はちょっと悪いことをしたかな」
理香の困惑をよそに、慎也は珍しく、困ったように笑う。なんの話?と目で訴えたら、慎也は肩をすくめて言った。
「家族もどきをね。少しの間、彼に作ってあげてもいいかな、と思ったんだ。家族じゃなくても、ペットみたいなものをね」
「彼って……その、真船君のお友達に?」
「うん。でも、彼にとっては6年が長い時間だったことを、僕はすっかり忘れていた。そうだよねぇ、僕も理香ちゃんとそれぐらいの間、ずっといたんだから。6年で、アレは彼にとって、ずいぶん大切な存在になってしまっていたみたいで。だから、無理矢理お別れがきちゃったから、僕と別れた後で、きっと家に帰って1人で泣くのだろうな、と思うと、彼には悪いことをしたかなぁ、と」
「………よくわからないけど。真船君がお友達にあげたペットか何かが、寿命か事故か病気で死んじゃって、それを真船君は後悔してるってこと?お友達を……結果的に、悲しませることになったから」
必死に頭の中で慎也の言葉を整理して、理香なりにまとめてみた。慎也が、後悔するとは。理香を何食わぬ顔で何時間も放置したり、わざと命の危険にさらしたり、からかったりしまくっているくせに、そんな感情を見せるとは。理香は驚くと同時に、見知らぬ慎也の友人に嫉妬した。羨ましい。
「………後悔?」
理香の言葉を、慎也は驚いたように繰り返した。「後悔、後悔ねぇ…。これが後悔か…。なるほどね」などとブツブツ言っている慎也は、ふと理香の頭を撫でるのをやめた。離れていった優しい手の感触に、理香は残念そうな顔をする。
「……理香ちゃんは」
「はい?」
慎也は真剣な顔を理香に向けた。迷うように数秒視線を彷徨わせた後、理香ときちんと視線を合わせる。
「理香ちゃんは、僕と会ったこと、後悔していない?」
「……………はあ?」
言われたことが理解できず、理香は慎也を見つめる。慎也は訝しげに眉を寄せて、首を傾げて言った。
「だってね。今気がついたんだけど、僕と理香ちゃんの出会いって、ちょっとおかしかったよね?普通、初対面の女の子を階段から突き落としたりはしないよね」
気がついたの、今かよ。遅い。遅すぎるよ、真船君。
「というか、その後、怪我はなかったけどびっくりして泣き出した女の子のほっぺたをふにふにひっぱって遊んで、無理矢理名前と連絡先聞き出して、翌日から遊びに誘うのって、ちょっと非常識だよね?」
ちょっとどころじゃなく、超非常識だよ。そして驚きすぎて親にも言えなかったんだよ、当時の私。
「で、ずるずるその関係を続けて……。ちょっと変だよね?」
いえ、とっても変だと思います。というか、私、よく考えたら鬼畜少年に恋してるの…?え、私って、実はマゾヒスト……?
理香は少しだけ気が遠くなりかけた。理香が無自覚マゾなら慎也は無自覚サドだ。相性が最悪なのか最高なのか、よく分からない組み合わせ。
混乱する理香に気づかないまま、慎也は更に理香を驚かせる発言を続けた。
「でも、僕もね。今日あった友人に、昔よりずいぶん人間らしくなったって言われて、じゃあ、大丈夫かな、と思って」
何が?何が大丈夫なの?
「僕はこれからも理香ちゃんと一緒にいたいし、できれば理香ちゃんに僕の子どもを産んでほしいから」
「…………………は?」
理香は硬直した。これからも一緒にいたい、という慎也の言葉に真っ赤になって、続いたその次の言葉を理解するのに、5秒ほどかかった。
なんか今、彼は理香に自分の子どもを産んでほしいとか、ぶっ飛んだことを言わなかったか。
「……駄目?」
しゅん、と悲しそうな目で見つめられて、理香は慌てて首を横に振る。別に、駄目ではない。駄目ではないが。
「……えっと。真船君、つかぬことをお聞きしますが。あの、その、あれだ。…………真船君は、その……私とですね、結婚、したい、と、思っている、ということ、ですかー……?」
言っていて恥ずかしくなって、段々と声が小さくなった。聞き間違いだったらどうしよう。
理香の質問に、慎也はきょとんとした顔をしたあと、一拍置いて満面の笑みをみせた。
「結婚。そうだね、結婚したいな。他人同士が家族になるには、結婚するのが一番だよね。じゃあ、理香ちゃん、僕と結婚してくれる?」
「え、え…。………えええ?!」
思わず、理香は真っ赤になって大声をあげた。何故に、いきなりプロポーズ。
「ちょ、ちょっと……。ちょっと、落ち着いて、真船君…」
「いや、理香ちゃんこそ落ち着いて。大丈夫?……僕と結婚するのは、嫌?」
あわあわとうろたえる理香の頭をぽんぽんと撫でつつ、慎也は悲しそうな顔をした。理香は慌てて首を横に振って、「嫌じゃない、嫌じゃないけど!」と叫ぶ。
嫌ではないが、物事には順序とか、情緒とかいうものがある。
「じゃあ、結婚してくれる?」
「え、う、あ……。い、今すぐは無理だよ?!」
「うん、それは僕もわかってるよ。さすがに成人までは待つから」
苦笑する慎也に、だからそういうことじゃなくて、と思う。理香が言いたいのは、そういうことではない。
「ま、真船君は、その……。私のことが、好き、なんですか……?」
どもりつつ、慎也から思いっきり視線を外して理香は問うた。心臓はかつてないほどばくばくしているし、顔は真っ赤だ。理香はこのまま、下手したら心臓発作を起こして死ねる、と思った。
「うん?そりゃ、好きだよ。僕がこんなに長く一緒にいる人間は理香ちゃんが初めてだし、『人間らしく』なったのは理香ちゃんとずっと一緒にいたいからだし」
「へ……」
「僕は理香ちゃんのことが、【世界】で1番、大好きだよ」
慎也の真摯さと、確かな愛情の宿る言葉に、理香は彼へと視線を戻した。慎也は、いつも通り静かに微笑んでいる。そして、その瞳には、信じられないほどの熱があった。理香にとって、決して不愉快ではないが、むず痒いような、気恥ずかしいような、それでも嬉しい、彼の熱さ。
「理香ちゃんは、どうなのかな」
彼の静かな問いかけに、理香は僅かに体を震わせた。
慎也とは、小学生の時に出会った。初対面のときから、彼に散々振り回され、驚かされてきた。怖い思いもたくさんしたし、泣いたり、慎也をどつきまわしたことも、何回もある。
それでも、理香は慎也と離れようとは思わなかった。慎也と一緒にいると巻き込まれる、「不思議」に、理香は何度か、慎也は本当は人間ではないのかもしれない、なんてことを思った。その度に、そんなことはないだろう、とすぐに否定しつつ。
たとえどんなに人間離れしていようとも、真船慎也は真船慎也だ。浅宮理香がいつの間にか好きになった、綺麗で、マイペースで、不思議で、優しい少年。
理香は慎也自身を怖いと思ったことはない。これからもきっと、理香は慎也自身のことを怖がらないし、嫌いにもなれない。理香は慎也が何者であれ、好きなのだ。慎也が欲しい。誰にも、この特別な存在を、渡したくない。
「私も、真船君が、世界で1番、大好き。真船君が、欲しい。私のものにしたい」
理香の言葉に、慎也は一瞬、虚をつかれたように大きく目を見開いて、驚愕の表情を見せた。彼のこんなに驚いた顔を見るのは初めてで、思わず理香まで驚いてしまった。
慎也は数秒の沈黙の後、黙って理香を抱き寄せた。体温の低い慎也の体は、真っ赤になっていた理香には心地よかった。少しかがみこんだ慎也の肩口に顔を埋める理香の背にまわされた、彼の腕の力は決して強いものではなかった。理香も、慎也の背に自分の両腕をそっとまわした。こうして2人で抱きしめあうのは、理香にとっても慎也にとっても、初めてのことだった。
「……理香ちゃん」
静かな声で、慎也は理香の名前を呼んだ。彼の吐息がくすぐったくて、理香は小さく身をよじりながら、「何?」と聞いた。
「僕は理香ちゃんが大事だから、理香ちゃんを【僕のもの】にはしないよ。だから、僕の全部を君にあげる。真船慎也の全てを君にあげる。……だから、ちゃんと僕を、理香ちゃんのものにしてね。君が死ぬまで、僕は君だけのものだから」
理香には、慎也の言っていることの意味が、特に「大事だから自分のものにはしない」という言葉の意味が、理解できなかった。しかし、慎也が今、泣きそうなくらい喜んでいることと、「僕は君だけのもの」という言葉が、彼の真実の誓いであることだけは、きちんと理解した。
だから、理香は慎也を抱きしめる腕に力をこめて、「うん」と答えた。
理香の耳元で慎也が小さく笑う気配がして、理香は気がついたら泣いていた。
慎也と想いが通じ合って嬉しいからなのか、なんなのか。自分でもよく分からないまま、理香は慎也の肩に額を押し付けた。泣いたら眼鏡が汚れるな、とちらっと思ったが、気にしなかった。
(ああ、もしかしたら)
慎也の冷たい体温を感じながら、理香はふと思った。
(真船君は、ずっと寂しかったのかもしれない)
彼はいつも、広い屋敷に1人きりだった。住み込みの手伝いがいるとはいえ、それも慎也とは他人だ。慎也はあまり他人に関心がなさそうに見えるが、それは単に、人との付き合い方が分からないだけなのかもしれない。
理香は慎也のことを、未だに完全には理解していない。彼が本当は何者なのか、彼と一緒にいるときに起こる「不思議」は一体、なんなのか。そういうことの真実を、理香は何も知らない。
しかし、別に慎也のことを完全に理解できなくてもいい、と理香は思う。慎也が理香のものであるのなら、何も問題はない。理香は慎也のことが大好きで、慎也も理香のことが大好きなのだから。彼の全てを知らなくても、その想いを知っているだけで、理香には十分だった。
(私は、真船君を、一生大事にする)
理香はそう決意した。理香が生きている限り、絶対に慎也に寂しい思いはさせない。たとえどんなに怖いことが起きても、理香は慎也の手を振り払うようなことは、決してしない。
(だから、大丈夫)
慎也は、あまり激しい感情を見せない。激怒しない。大笑いもしない。理香の前で、これまで彼が涙を見せたことは、一度もない。今も、理香は泣いているが、慎也は涙を流していなかった。
彼の肩口に顔を埋めている理香には、彼の表情は見えない。しかし、理香には慎也が今、理香と同じように泣いていることがわかった。涙はなくとも、慎也もまた、泣いているのだ。
(大丈夫だよ。真船君。あなたが泣けなくても、怒れなくても。真船君が人間じゃなくても、あなたは一生、私のもの)
2人は日が暮れるまで、そうして互いの存在を確かめ合った。
暑い夏の日の夕方。ありふれた、平和な時間が流れる日。
この日、この時間は、2人が生涯忘れることのない、大切な思い出となった。
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それは、長い人生の中では、ほんの一瞬にすぎない時間だった。
2人が初めて会ったとき。2人が初めて一緒にでかけたとき。
理香が初めて「不思議」に遭遇して泣いた日。
慎也が初めて理香に殴られた日。
そんな、2人の人生の中で積み重なっていった、2人で過ごした時間。
世界中で毎日起きる事件の中には入らない、2人の些細な「日常」と「非日常」。
無限の時間の流れの中に小さく零れ落ちていったひとしずくの時間が、2人にとってはかけがえのない、大切なものとなった。
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身長が小さくて童顔なのがコンプレックスな浅宮理香には現在、恋人がいる。綺麗な顔をした、頭が良くて家が金持ちでマイペースな性格の、真船慎也という恋人が。
彼といると、理香は時々「不思議」なことに巻き込まれる。
しかし、理香はそれを怖がりはするものの、慎也と共にいる。慣れはしないが、諦めはついた。
慎也は小さい頃から掴みどころのない性格だが、その要領のよさで、今ではすっかり理香の両親にも気に入られている。理香はこの間、彼が両親と一緒に理香と自分との結婚式と新婚旅行の計画をかなり真剣に練っている現場を目撃して、思わず脱力してその場に崩れ落ちた。2人はまだ高校生だ。気が早いにもほどがある。いつもは妹をからかうばかりの兄は、その時ばかりは無言で妹の頭を撫でて慰めてくれた。
なんだかすっかり慎也のペースに乗せられている気がしないでもないが、理香は笑って諦める…否、許すことにした。理香も慎也と早く結婚したい、とは思っているのだ。
慎也は理香と恋人になって、より「人間らしく」なった。
彼は理香といると、よく笑う。以前よりずっと、幸せそうに、優しく笑う。
その笑顔がたまらなく好きで、理香は慎也が笑うたび、彼を一生大事にしよう、と決意する。
そうして、2人は一緒に積み重ねていくのだ。
2人の、ほんの小さな、そして幸せなひとしずくの時間を、いくつも、いくつも。
2人に別れが訪れる、その瞬間まで。
拙い話を最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
一応、この2人の話はこれで終わりです。
真船君について不完全な部分は、別の作品の中で明らかに…なるかもしれない…です。
完全に相手のことを理解できなくても、一緒にいたい、という女の子と、相手のことをなるべく理解したい、と(おかしな方向に)努力する男の子の話でした。