姉上
庭にわ二話鶏がいる
カーテンの隙間から赤い陽光が差す
「うーん」
伸びをする
ベットから出ると鏡の前で水差しの水を一杯飲むと残りを桶に移して顔を洗い髪を整える
着替えをすませ部屋をでて食事をとるため階段を降りる
「おはようー」
ダイニングに入ると、間ののびた声で叔父の妻であるフリンカさんがメイドと一緒に朝食の準備を進めていた。
この人せっかく貴族に嫁いだのに…
フリンカさんは商家でも貴族でもないのにこのフローレンス家に嫁いだ珍しい女性だ。
叔父のワートさんが一目惚れして結婚した。最近は恋愛結婚自体は珍しくない、しかしながら五大貴族家の次男が正妻に全く貴族社会に関わったことのない田舎の村娘を嫁に迎えることは非常に珍しいことであった。
とはいえ嫁いできたのは10年も前のことだ。もう貴族教育を受け食事の作法や所作もちゃんとしてる。貴族の生活にも順応している。なのにも関わらず朝誰よりも早く起きて、朝食の給仕だけは毎日欠かさずやる。本人言わくどうしてもやりたいそうだ。村娘だった時のくせだろうか。
「おはようございます。フリンカさんお手伝いすることありますか」
手伝う気などさらさらないが日本人だったときの建前で手伝いを申し出る
「大丈夫よ、ユリウス君はホントにいつも早いわね、うちの子はいつもたたき起こさないと起きないわよ
」
当たり前だ普通の6歳は6刻に自分から起きたりはしない自分が特殊なのだ
「どうしても起きてしまうんですよ」
「どうやったらそうなるのかしら教えてほしいわ」
簡単だ書斎に忍びこむ癖をつければいいと心の中で答える
別邸に住んでいた時から屋敷からの徘徊していた僕は本当に奇異な目でみられていた。
だからしかたないから誰にも知られず出歩く屋敷内は移動することにした。
まあ普通の人は夜出歩けばと思うかもしれない残念ながらやめた方がいい。起きていると知られたらとんでもなく怒られるし、何度も続けば監視がつく
じゃあ屋敷を誰も知られず動き回る一番いいときはいつなのかそれは朝なのだ。
朝は使用人にとって最も忙しく見回りなどない皆やることが多くてんてこ舞いだだから、そして足音も使用人の足音で掻き消える
家族は寝ているかあさの身支度をしているしかもなぜかダイニングと書斎はいつも離れたところに配置されている。
だからこそ朝は誰にも悟られることなく書斎から本を持ち出すことができた。だがこの家に来てその障害となったのが平民出のフリンカさんである朝の準備をするためメイドたちと同じ時間に起き部屋からでてくる。
そのとき見られてしまいなんで起きているか問われたときにてんぱって”どうしてもいつも早く起きてしまう”という謎の言い訳をして以来アリバイを作るための本を拝借する日以外も早く起きる羽目になった。
7刻半になると続々と家族があつまってくる
大抵順番はフリンカ→自分→兄上→叔父→姉→従姉妹たち→継母
「それでは食べ始めましょうか」
今この家の家主である叔父が号令をかけ
豊穣の神に祈ると朝食が開始された
**************
食事をとり終わると一人ひとり席を立ち午前の予定をこなしに向かう
姉、従姉妹、俺は勉強 叔父は領主の館に行き仕事、兄は剣術の練習、女たちは何をしているのかよく知らないおそらくお茶やフローレンス家につかえる貴族の女性と趣味を楽しんでいるのだろう
勉強をしに家庭教師の部屋へ向かう。
勉強が終わると午後はもうやることがない
今日はどうしようかなーと自室で考えていると自室のドアをドンドンとたたかれる
「来たな」
「ユリウス!!」
お転婆娘のアメリアだ
「行くわよ」
どうやらアメリアと町に繰り出すことになりそうだ。
**************
「ユリウスなんでこんな汚い服を着るの?」
今二人の服装いつも来ている清潔なシャツやドレスと違い
袖は擦り切れてシミがところどころついている。
「姉さん仕方ないよ、これを着ないとあまりにもいい服で金持ちの子だってばれて物取りや誘拐に狙われちゃう」
まあでも今日回るのはにぎわっている第一区画の大通りだけだ。
大きな街や都市は大体区画ごとに分かれているまずはじめに貴族や有力商人の家や別邸ある高貴居住区画そしてそこに隣接する第一区画は商業区画で経済活動がもっとも盛んな場所、大通りの両側に店が並んでおり門に向かって売り物の価格も質も悪くなっていく。
まあだからと言って無条件でそうだとはいえないのだが…
そして第二区画はまあ平均的な収入の平民の居住区画と工業区画を兼ねている工房や工場があり石造りの家はほとんどないのでかじがおきると第二区画は甚大な被害を受ける。最後に貧民街いわゆるスラムに近く治安も一番悪い。
「ねえユリウス見て馬車よ!」
アメリアははじめて見るものばかりのような目で目を輝かせている。
一緒にしゃべりながら歩いているとなんとも食欲のそそるにおいが立ち込めている
食べ物屋が立ち並ぶエリアまで歩いてきたようだ
「あーいい匂いお腹すいてきちゃったわね」
確かに
「そうですね、ちょうどいいやちょっとおやつにしましょうか」
そういうとパン屋の前で立ち止まる。このベーカリー小麦はいま第一区画で最も話題のパン屋さんだ
店内に入るとお昼すぎということでもうほとんどパンは売り切れてしまっていた
「すみませーん」
中から手の太い大男が出てくる。
「わるいねーもう今日はほとんど売れちまって商品はないよ」
男がけだるそうに言ってくる
まあ一仕事した後だから仕方ない
「いやドーナツの売れ行きどうかなって」
そういうと男の瞳孔が開く
「ユリ坊じゃあねえか!お前の考えたドーナツ最高だよ目玉商品さ開店から1時間以内に売り切れちまうんだが来客数も増えて一緒にほかのパンも売れてくからいやー景気がいいよ!!ユリ坊様様だな」
男はガッハハと笑うとアメリアに気づき「今日は彼女連れか」といじり始める、むかつく
前は全く人気のなかったくせに
まあそれもそうだ、わざわざ食堂と食堂の間にパン屋出すもんだからパン特有のいい匂いがかき消されてるし昼時は客がとられちゃう
「そうなんですか残念ドーナツ食べたかったのに」
しょんぼりしてみせると
「いいよこの店の救世主だしないまからドーナツあげてやるよ」
「ほんとですか?ありがとうございます」
そういうとおとこはまた奥へはいってった
「ユリウスあの人と知り合いなの?」
アメリアが食べたくなるようなきょとん顔で訪ねてくる
「そうだよ、僕が考えたドーナツっていうパン教えてあげたんだ」
小鼻をふくらまして自信満々に答える
「ドーナツって?」
「小麦粉と砂糖と卵を入れて発酵させたものをリング状にしてあげたお菓子なんだ、おいしいと思うよ」
「へー」
アメリアがホントにおいしいの?という目で見てくる
もともとこの世界に揚げパンの文化はあったしかしながら揚げパンは一度焼いた後揚げるので効率が悪いし人気もそこまでなかった。多分普通に焼く前にそのままあげることに挑戦したものもいるだろう。しかしなかまで火が通らず真ん中は生だったり、火が通るまで揚げると揚げすぎで油でべちゃべちゃでおいしくないという難点があった。
そこでドーナツの真ん中に穴をあけたのだ穴をあけるとなんと半分の時間で揚げられおいしいドーナツが出来上がる。これはすごい発見だったのだ。まあ僕の場合前世知識なだけなのだが、まあこの画期的なアイデアは前世の地球でもたたえられていてアメリカのどっかに像まで建てられてる。
アメリアにこの発明によりこのつぶれかけの店を再建した話を自慢げに語り聞かせていると
「出来上がったぞー」
大男が二つのドーナツを紙に包んでもってきた
「はいどうぞ、お嬢ちゃんも」
渡されるとアメリアは奇怪な形状を不思議そうなめでみていた
俺がパクパクと食べ始めると
それをマネするようにはむっとかぶりついた
すると今度はアメリアの瞳孔が開く
「おいしいいいいいいい!」
たいそう感激した様子でドーナツをパクパクと平らげる
「おいしかった!こんなおいしいものを考えるなんてユリウスやっぱりすごい!」
と目を輝かせて言ってくる
僕はその純粋無垢の賞賛に照れくさくなりうつむく
親父がよかったじゃねえかといったあと照れていることをいじってくる。やっぱりむかつく
**************
パン屋を出ると屋敷に戻るため来た道を戻る
そろそろ戻らないと抜け出してきたことがばれてしまう。心配させるのはまずい
もうちょっと見たいとぐずるアメリアをなだめ屋敷に向かうため貴族区画に入ると
「まて!!」
後ろを振り向くと見回り担当のきしだった
まずいことになったぞ
「お前たち何してる」
来ている服が平民なのをわすれていた。
そりゃこの格好で貴族区画に入るのはおかしいし浮浪児がモノをねだりにきたか空き巣に来たかのニ択だよねと反省する
考えてると騎士が今度は語気を強くして
「何してる!」といってちかづいてきたので
びっくりしたアメリアが半べそで
「家に帰るだけだもん」と言う
「お前たちの家が貴族様の居住区にあるわけないだろ!」
騎士がちかづいてくる
まずい、
今にもアメリアは泣き出しそうだし捕まるわけにもいかない、家に帰って確実に怒られる。
まあ帰れないよりはいいが…仕方ない
「姉さん、僕が合図したら走るよ」
「えっ」
懐から魔法陣の書かれた植物紙を取り出すそして魔力を流し下に落とすと
ボフっと音上げ砂煙が勢いよく立ち込める
「行くよ!!」
アメリアの手を強引に引っ張り砂煙にかくれて路地をまがった
「まて!」と騎士が叫びながら路地を通り過ぎてった
**************
なんやかんやあり裏庭につくと僕もアメリアも疲れ切ってしまっていた
「ユリウスあの時魔術をつかったの?」
アメリアが訪ねてきた
「そうだよでも本当に成功するかわからなかったけど……」
「やっぱりユリウスすごいや、私まだ魔力を感じられるようになったばかりよ」
アメリアがシュンとしてしまう。でもそんなことより
「たまたまだって、姉さん僕が魔術を使ったこと誰にも言わないでほしいんだ」
黙っててほしい
「わかってるわよ、それに町に行くのもお忍び誰にも言えないじゃない」
そりゃそうか
「姉さん当分お忍びで町はなしだね」
「そうだね私疲れちゃった」
そういうと二人とも植木の下に隠してあった元の着物にきがえると窓から家にもどっていった
次は魔術回です