03.マリンとミュー
「おどろかないで、まりん、きみをさがしてたんだよ」
白く毛の長い猫がマリンの膝に飛び移り綺麗なブルーの瞳を潤しながら必死に話しかけている。
「わ、わかった…とりあえず何で喋るの?何でわたしを知っていて探していたの?」
マリンは白く毛の長い猫を膝から椅子に移動させて自分は床に立膝になり同じ目線になるようにしたのだ。
「ぼくのなまえ、みゅーだよ。まりんのことはねこのかいぎでしったの。ねこはみんなまりんがすきー!だからいっしょにもりにいく」
白く毛の長い猫はミューという名前らしい。そして猫の会議がありマリンの噂話をされていたなんて…マリンは目を丸くしてミューの話にを聞いた。
「ねこはもりで ふぇありー となかよしだったから ふぇありーのまほうでしゃべる」
マリンの目は更に大きく開き笑顔になる。
「やっぱり!妖精の森はあるのね!!」
「うぅーまりんこえおおきい」
「あ、ごめん」
「うぅー、ふぇありーはまほうのもりのなかにいるけどわるいまほうつかいのせいでいなくなったの。みゅーはふぇありーをさがしたい」
「なるほど!そういう事ならマリンは全力でミューのお手伝いしたい!!むしろマリンからお願いしたい!!」
「んにゃ!」
ミューは長い毛の中からピンクのリングを出しマリンに差し出した。
「みゅーとなかまのしるし」
マリンは右手の小指にリングをはめて笑顔でミューを抱っこしお腹に顔を埋めた。
「にゃー!」
「さっそく森に行こうかミュー!あ、でも森の入口の小屋にはおじさんが…」
「うぅー、みゅーにまかせてよ」
ミューは何か作戦でもあるのだろうか?マリンは内心おじさんに見つからなければ大丈夫だと思ったけどミューに任せようと思ったのだ。マリンは人生ではじめて妖精以外の生き物に興味を持った。それはミューといれば妖精に会えるという下心なのか、ほんとに仲間だと受け入れたのかはマリンもよくわからない。
「ミュー今日は遅いから宿に泊まろうか、早起きして森に入ろうよ」
「みゅー!」
マリンは宿を探した。街でいちばん安い宿だ。看板がチカチカして電気が切れそうなボロ宿をみつけた。孤児院を出る時にズーカは80LENをマリンに持たせてくれたので3日程はボロ宿に泊まりミューと飲み食いできるはずだ。
マリンはボロ宿のドアを開け中に恐る恐る入り受付と思われるカウンターの前に行き、サビだらけのベルを鳴らした。
ーチーンー
カウンターの奥からはボロ宿に似つかわしくない綺麗な女の人が出てきた。髪は明るい茶色で長く、肌は透き通った白さで赤いワンピースを着ていた。
「あら、小さなお客さん?いや迷子かしらねぇー?」
「名前はマリン、さっき孤児院を卒業しました。今日だけ泊めてください」
マリンは無表情で淡白に話した。綺麗な女の人は「ウフッ」っと笑い鍵を後ろの壁から外しマリンに渡した。
「1人1泊5LENよ、本当はそちらのフェアちゃんの分もかかるんだけど、孤児院の卒業祝いでサービスするわ」
「フェアちゃん?」
マリンは首を傾げた。
ミューが慌ててマリンの服をくわえてひっぱり部屋に連れて行かれた。
「あーミューだめだよー破れるー」
綺麗な女の人は「ふーん、なるほどねぇ」っと呟きながらカウンターの後ろに下がっていった。
部屋は1階の真ん中の部屋だった。
「もう!いきなり服をひっぱらないでよミュー!」
「ごめんねまりん、ねむかったからはやくへやにいきたかったの」
「そっか、じゃあお風呂入ってベッドにはいろうか」
「まりん、おなかすかない?」
「すいてないよ、ミューは?」
「すいてない」
きっとお互いに所持金を気にしてなのか2人はせかせかとお風呂に向かった。ボロ宿のお風呂は共同だったが、2人が入る時間は誰もいなかった。
「ミューは綺麗な毛だね」
お風呂のお湯をかけてあげながらマリンが呟いた。
「まりんもきれいだね、おめめもめずらしい」
マリンは金髪のセミロングで目はグリーンに見えたりグレーに見えるのだ。
「あーあんまり見た目気にしたことないなあ」
「えーかわいいのにぃー」
2人が泡まみれで話していると誰かが洗い場に入ってきた。
「あら、小さなお客さんとフ…猫ちゃん」
ボロ宿の受付の綺麗な女の人だった。
またミューの事をフェアちゃん?と言いそうになり口を窄めていた。
「わたくしはこの宿で働いてるローズですの。ご一緒してよろしいかしら?」
改めて綺麗な女の人は自己紹介をした。
「あ、はい…どうぞ」
マリンはミューが喋っていたのがバレていないかハラハラするのであった。
「小さなお客さんはマリンちゃんだったわね、さっき廊下で誰かと喋ってるように聞こえたのだけど」
マリンは顔面が青白くなりミューに目をやった。ミューはローズをじっと見つめている。そしてミューは口を開いた。
「ろーず、ばれちゃったねでもまりんとはさっきあったばかりだ」
ローズはニッコリ微笑んだ。
やはり綺麗な女の人の笑顔が眩しい。
「んふふ、わたくしは何もしないし話さないわ。安心しなさい。ただしこの宿には私達以外もいるのだからもう少し気を張っていなさいよ」
ローズはわざわざ忠告でもしてきたかのように一瞬でこの場を去って行った。
何もしない っというワードが気になりつつ
明日は朝早いのでローズに続いて風呂場を出るのであった。