02.出会い
マリンは森の入口らしき場所に着いた。
まだ昼間なのに森の入口から先は暗く普通の人なら怯える所だがマリンはニヤリと瞬きもしないで見つめていた。
「お嬢ちゃん迷子かー?」
後ろから声をかけられた。
マリンはハッと振り返り顔を濁した。
そこには身体が大きく筋肉質でヒゲモジャの男が立っていた。右手には斧を持っている。
「お嬢ちゃん、親はどこだ?」
「親…いない」
「やっぱり迷子か」
「違う…親は知らない」
「あぁ孤児院から来たのか」
「うん」
「とりあえず小屋に入れ」
男は右手の斧で小屋を指した。森の入口の脇に小屋があったのだ。マリンは小屋なんかより早く先に進みたい気持ちでいっぱいだったけど、斧を持った男が怖いから一先ず言うことを聞く事にした。
「中にどうぞ、おや、お前はペットか?」
男はマリンの足もとを見て少し微笑んだ。
マリンは自分の足もとを見て思わず後ずさりした。白く毛の長い猫が「みゅうー」と鳴いて目が合ったのだ。
「え、またか…わたし猫に好かれる」
どうらや孤児院にいた時からマリンは野良の猫に好かれていてよく庭に出る度に猫が集まってきてたようだ。しかしマリンは気にしていなかったし興味がなかった。
「まあ好かれてるならしょうがないな」
「うん。」
「ミルクをやるから飲んだら孤児院に送るよ!その猫も一緒に連れてくか?」
男にはマリンがまだ孤児院にいる幼い少女にしか見えなかったからきちんと送ろうと決めたのである。
「わたし孤児院は卒業したの…森に入るから送らなくていいです」
マリンは無表情で答えた。足もとでは猫がマリンにお腹を見せて転がっていた。
「ガハハハハ、お嬢ちゃん森に入るってたまげたなー、森に入るという事は君は魔法使いなのかな?」
「わたしは…妖精の森に」
「あーはいはい、それは本とかの影響かなー、この森はね妖精の森ではなく魔法の森なんだよ」
「え!でも本には妖精の森って」
「本の中だけだお嬢ちゃん」
マリンは手足が震えだした。妖精の森に入り妖精に会うのを目標にこのつまらない人生を、くだらない時間を生きてきたのに。きっと世話人のズーカは妖精の森がないと知っていただろう。彼女への怒りが込み上げた瞬間、白く毛の長い猫がマリンの手を舐めるがマリンがまったく相手にすることなく小屋を出ていった。
「お嬢ちゃん、気を悪くさせてすまんが現実なんだよ。孤児院に戻れないなら街へ行き仕事と宿を探しなさい」
男は申し訳なさそうな顔でマリンを見送った。
マリンはとりあえず街へ行った。
男の言葉だけでは納得がいなかいからだろうか図書館を探した。外れに小さな図書館をみつけ森の本を手にし窓辺の椅子に座った。そして椅子の正面にある小さなテーブルにあの白く毛の長い猫がぴょんと飛び乗ったのだ。
「あ、猫…ここに来たらダメなのに」
マリンは小さい声で猫を睨んだ。
「まりん、もりにはいりたいの?」
マリンは猫が喋ってるように見えた。
「もりにいっしょにいく?」
やはり猫が喋っている。白く毛の長い猫がマリンに小さな声で話しかけてきたのだ。
「え!?うそ!?喋ってる!!」
さすがに感情があまりないマリンでも驚きの顔と声を出したのであった。