#6 初陣
フロントロビーから移動してバトルドームに幾つかある試合を行うバトルターミナルエリアに来たヤマト達。 日曜の昼下がりともあってか見物客の数は凄まじく、やはり多くの人々が大陸杯の予選が始まったことを気にかけているようだ。 合法的にデュエルバトルが出来るバトルドーム内には普段の生活では見かけない多種多様のガゾル達が闊歩していてそれを見るだけでも飽きない。
バトルターミナルエリアに設置されているバトルスペース内では1組のランナーとガゾルがちょうどデュエルバトルを行っており、試合状況を映りだす大型ディスプレイに多くの人々が釘付けになっている。
自動販売機のジュースをせがむユウとそれに便乗するケンとニャゴにややイラつくも、あとあと今日のことをほじくり返されるのも面倒なのでここはジュースで手を打っておこう。 弟妹とパートナーがディスプレイに興味津々のさなか無料のウォーターサーバーの紙コップで一息つくヤマト。
???:ねぇ、キミ? さっきマッチングマシンで相手を探していなかった? もしよければ僕とデュエルバトルしない?
ヤマトに声を掛けてきたのは色黒で自分よりも少しぐらい年齢が上な感じがする青年であった。
ガレット:はじめまして、僕の名前はガレット。 ランクはDクラスなんだけどまだまだ初心者でね、なかなか相手にされないんだ。
背格好はきっちりして初心者のようなたどたどしさはないが、丁寧な言葉遣いのガレットに悪い印象はない。
ヤマト:ぁあ、まぁ、マッチングはしてみたんですけどもともと勝負は気乗りしてなくてですね。 兄弟に無理矢理引きつられて来たので失礼ですがお断りします。
ガレットには悪いがこちらとしても戦う意思はない。 そそくさとその場を離れようとすると・・・
ユウ:全然いいですよ!! むしろこっちこそよろしくお願いします!!
落胆するヤマトを軽蔑するような視線で見つめる少女が。
ユウ:ほっんとムカツク!! せっかく来たのになんもしないで帰るわけ!?
実際、ガレットと対峙するのは俺なんだが傍若無人な妹の態度は誰に似たのだろうか。
ケン:え!? でも、ヤマ兄ぃはGクラスだけどガレットさんはDクラスなのに大丈夫なの?
ナイスフォローだ、ケン!! 実力差のある相手と戦って何が面白いのやら。 ヤマトはすかさず思った。
ガレット:あぁ、それは大丈夫ですよ。 Cクラスまではランク差があっても試合は行えるルールなんです。 それにランクが上の相手と戦ったとしても下のランクの方のガゾルの方が強いっていう場合もよくありますしね。 さらに言えば、私はほとんど初心者みたいなもんですから状況は五分五分って言っても過言ではありませんよ。
ガレットのパートナーのガゾルがわからない以上、彼の言葉の信憑性は薄い。 熟思してもなおここは引き受けないほうがいいのではと思うが
ニャゴ:まぁ俺はどんなヤツが来たとしてもそう簡単には負けねぇけどな。
ユウ:なら決まりじゃん。 ってことで諦めてよねお兄ちゃん。
ケン:やったー!! ガレットさん、よろしくお願いします。
断りを入れる前に数の暴力で押し切られてしまった。 これ以上反論するのも後々面倒くさい状況になりそうだし、ニャゴとの約束で危なくなったら棄権するというのもあるのでしぶしぶ従うヤマト。
ガレットはこちらで手配をするのでと時間を指定し、その時間にこちらでまた会おうと人ごみに消えていった。
ヤマトは去り際に口元が緩んだガレットに不安を浮かぶ。