風船ちゃん現る!
「今日は話があるの」
ドクロが町の公園にれなとれみ、ラオンを呼ぶ。
「今日は知り合いの『風船ちゃん』が来るわ。彼女はとても軽いからすぐに風で飛ばされちゃうの。彼女がこの町にいる間、よく見といてあげて」
聞いた事のない名前に首を傾げる一同。とにかく、ここに凄く体の軽い者が来る事は分かったが…。
そう思っていると強い風が吹いた。ドクロは空を見上げ、何かを見た。
一同も空を見上げると何かが落ちてきた。それはピンクの少女だった。
着ているワンピース、ポニーテール、瞳…全てがツヤのあるピンク。少女は立ち上がり、お辞儀をする。
「風船ちゃんです。今日は皆に会いたくてやって来たよ!」
れなたちも思わず焦り、深々とお辞儀する。ドクロは風船ちゃんの手をとった。
「久しぶりだね。皆、風船ちゃんがいればしばらく平和だから休んでて良いよ」
れなたちは目を輝かせる。この風船ちゃんに平和を守れる力があるのかと興味を抱いていた。
聞いた後に早速散るれなたち。
れなは丁度今日ゲームを買う予定だった。ウキウキしながら歩道を歩く。
そして問題なくゲーム屋で新作ゲームを買った後、研究所に帰ろうと早足で進む。
その時、何かが横を通りすぎ、れなの髪の毛を揺らした。何者かと見てみると灰色の衣装の球体型の泥棒…泥棒マルマンが走っていた。
背中の風呂敷を見て泥棒だと一目で泥棒だと判断したれなは後を追おうとしたがそこでさっき紹介された風船ちゃんが泥棒の前に飛び出した。風船ちゃんは泥棒の体を掴むと何かを言った。
「…うおおーーーん!!!」
泥棒は突然叫んだ後、警察署へ突っ込んでいった。どうやら何かを吹き込まれたようだ。
それを見たれなは確かに任せられると大きく頷く。
家に帰って早速ゲームしようと帰ろうとする途中、ある策が浮かんだ。
「…そうだ!風船ちゃんならあの悪党を…」
空を飛び、闇の世界へ向かうれな。
闇姫の城につき、いつも通り窓を突き破って侵入する。闇姫の部屋はいつになく赤黒い不気味な壁がきれいに磨かれていた。
闇姫は黒いテーブルで一人ボードゲームをしていた。
「…れな、何のようだ」
「へっへー闇姫!うちに美味しいドーナツがあるんだけど来るー?」
「なにっ、ドーナツだと!?」
闇姫は立ち上がり、れなに歩み寄る。ドーナツ好きな闇姫の数少ない弱点だ。
「うん。世界一美味しいドーナツがあるの。欲しかったらついてこい!」
闇姫は空を飛ぶため、灰色の翼を背中から放つ。興味津々だ。
闇姫を引き寄せ、闇の世界を抜け出す。
あっという間にテクニカルシティに戻り、灰色の建物や無数の木々を見下ろしながら風船ちゃんを探す。後ろからは闇姫も羽ばたきながら追ってくる。
目を凝らして見ると、ドクロと仲良く歩く風船ちゃんを発見し、急いで降り立つ。
突然闇姫を連れてきたれなに動揺するドクロ。
「ちょ、今仲良くガールズトークしてんのに何て害悪を連れてくんのよ!」
ドクロの発言に舌打ちする闇姫。何も知らない風船ちゃんにれなが頼む。
「風船ちゃん、こいつは悪いやつなんだ。さっき泥棒にやった技でこいつを改心させてよ」
「…え?でも、あの技は相手がどんな悪いやつか見極めないと使えないの」
あーそうか、と頭をかき、闇姫の方を見るれな。闇姫は暇潰しにその辺の家のゴミ箱を蹴り倒していた。風船ちゃんはそれを見て喜ぶ。
「あんな感じの悪党だね。任せて!」
走り出そうとする風船ちゃんの手をとり、引き戻すれな。闇姫はもっとヤバいやつだという事を伝えなくてはならない。れなは闇姫に耳打ちする。
「…ねえ闇姫、ドーナツが欲しいなら何か悪い事してよ」
逆に気味悪がり、闇姫は全くのらない。風船ちゃんの力なら闇姫を改心させられると思ったのだ。
しばらく同じ下りが続き、ついにれなは諦める。
「…分かったよ。風船ちゃんの力ならあんたを改心させられると思ったんだけど。ドーナツも本当はないの」
その言葉に闇姫は反応した。
「…何だとー!!??」
闇姫から赤いオーラが放たれ、禍々しい力が町を襲う。町中の人達がその場に倒れ、建物にヒビが入る。
「許さん!暗黒拳!!」
闇姫の拳が黒く光り、れなの腹を殴り付ける。れなは吹き飛び、ビル五つを貫通し、地面に叩き落とされた。
闇姫の怒りはそれでおさまったのか、羽を広げて再び去っていった。
恐ろしさに怯える風船ちゃんとドン引きするドクロ。時間がたつとれなが飛んで戻ってきた。「闇姫…は?こっちからも殴りた…」
途中で風船ちゃんが突然走り寄り、れなの耳に何か吹き込んできた。甘い香りがしたかと思うと、れなは心が清らかになるのを感じた。
これが風船ちゃんの能力だ。
「…何だか心が癒された気がする」
得意気な笑顔を見せる風船ちゃん。思った以上の効果にドクロも驚いてる。
「…私も悪かった。反省する。それにしてもこんな効果があるなんて…」
れなは風船ちゃんの目を見る。
「…この効果、他の人で試したい!闇姫呼んでくる!!」
全く懲りてなかった。
ドクロはあきれるのだった…。