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ワンダーワールド   作者: はくりゅー
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百円玉大騒動 ヒャクエンタマ

年は明け、れなたちも忙しい正月に入る。


最初に向かったのは初詣。神様に今年の願いを願いに行くのだ。


神社に行くと予想以上の混み合い。人間やマルマン族、更にモンスターまでもが行列に並んでいた。れなとれみは黄色い着物を暑苦しく思い、早く進まないかと落ち着かない様子。


緑の着物の葵は周囲の屋台を見て暇を潰している。進む速度は一歩、また一歩ととにかく地道だ。








「ねえ葵、あと何百時間待てば良いの?」


「せっかちは損よ!!」


それから神社の前についたのは30分ほど後である。葵は二人に指摘した。


「二拝二拍手一拝を忘れずにね」


「分かってるよ。二回拝んで二回拍手してまた一回拝むんでしょ?」


ため息をつく葵。


一応その後の参拝は上手くできた。




「れな、今年は何をお祈りしたの?」


「私は皆の健康をお祈りしたよん。れみは?」


れみはえっ、と二人を見上げる。


「どうしよう…私、心で『神様』を連呼してただけで何も祈ってない…」


れなと葵は笑いあう。今日のれみはどこかおかしかった。それも帰ってからのおせちを心から楽しみにしてたからだ。


しかしれながれみの心を更に高ぶらせる事になる発言をする。


「…れみ、お年玉」


それに反応し、目を輝かせるれみ。お年玉は全国が楽しむイベントだ。


早速物凄い速さで家に帰っていく二人。




あっという間に研究所につく。まだ昼間の明るい空が広がっていた。


れなたちは研究所の博士…いわゆる父親にお年玉を要求する。博士が出したのは千円札だったがれなたちはたったこんだけかと不満を吐く。


「ごめんな。今年はそんなに多額に出せないんだ」


ならば他の人に要求しようと研究所のドアを突き破り、飛び出す。






「明けましておめでとうございます!お年玉!!」


親戚の人々の家を回り、ひたすらお年玉を貰う。千円、一万…とどんどん揃っていき、いつの間にか大量のお札が手元にあった。


仲間に自慢しようと、まずはラオンの所へ向かう。




ラオンの家は葵と同じようなログハウスだ。


木のドアを開き、匂いに包まれながら中に入り、もらったお金をラオンに見せつける。


だがラオンは特に反応なし。


「…つまらんな。私たちは金持ちだぞ?」


「知るかボケ」


ナイフを拭くラオンを見届け、外に出る。注目されるためにはもっと金をもらわなくてはならない。


「…あ」


れなが何かを見つける。百円玉だった。


それも大量の物が一ヶ所に集まっている。ラッキーと小銭を拾うれなにれみが何故か関西弁で怒る。


「ちょい、交番に届けんとあかんやろ」


「わ、分かってるよ。いちいちうるさいなれみは」


慌てて百円玉を拾い上げ、届けようとしたその時だ。れなの手にある百円玉がピクリと動く。


驚いて手を離すと百円玉が一斉に動きだし、跳ねながらどこかへ去っていく。








お化けのような百円玉たちに二人はしばらくどういう反応をすれば良いのか分からなかった。




それからしばらくして、百円玉たちを追いかけていくと町に侵入していた。町の人を見るなり体当たりをかまし、大暴れしている。


「止めなきゃ!」


百円玉のような生き物を手で叩き落とし、気絶させていく。


だがその辺の人たちは危険な百円玉を次々に拾い上げる。お年玉が少なかった人達なのだ。


とにかくこの危険な百円玉を止めなくては町が危険だ。


よく見ると葵が遠くで百円玉を蹴散らしている。


れなたちはすぐさま合流した。


「あっ、れなとれみ!手伝ってくれるのね!こいつらは百円に擬態するモンスター、ヒャクエンタマよ!」


ヒャクエンタマを殴りつつ語る葵。


「こんな狂暴なモンスターじゃないんだけど、どうして暴れだしたのかしら」


「…もしかして、皆が小銭を大事に扱わないと思ってるから!?」


その瞬間、ヒャクエンタマたちが一斉にこちらを向く。


「…まさか図星?」


そこで疑問を出したのは葵。


「でも小銭を大事に扱わないって…どういう事?」


れなは遠くの神社を指差した。神社の賽銭箱の事のようだ。


「皆お金を投げ飛ばして箱に入れるでしょ?あれじゃない!?」


ヒャクエンタマたちは一斉に頷いた。どうやら本当にそれが気に入らないらしい。


だがこれはきちんとした文化。葵は一同の中心にたって説明した。


「あれはきちんとした文化なのよ。貴方たちがどう言おうが昔から大切に守られてきたルールよ。あれは守るべきものなの」


ヒャクエンタマたちはじっと動かず、話を聞いていたがどうも理解できないらしい。


賽銭箱にはお金を投げ入れなくてはならない…。このルールを上手く知ってもらうためには…。


「…そうだわ!」






ヒャクエンタマたちは集められ、神社に集合。


れなと葵、れみが彼らを一枚ずつ持ち上げ、賽銭箱目掛けて投げていた。


ヒャクエンタマたちの暴走の原因だった事をしているのだが、ヒャクエンタマたちはどういう訳か嫌がっていない。


むしろ楽しんでいるようだ。


次々に賽銭箱に投げ入れられては出ていき、投げ入れられては出ていく。この一連の流れの中でヒャクエンタマたちは投げられる事を楽しんでいた。


「どう?楽しいでしょ?昔からのルールも良いものだと思わない?」


葵の台詞に頷くヒャクエンタマたち。


これで正月早々起きたおかしな事件は解決した。






…だが一つ問題が起きてしまう。


次の日から賽銭箱はヒャクエンタマたちのアトラクションとなってしまったのである…。



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