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ワンダーワールド   作者: はくりゅー
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ハンターとの戦い さぼりハンター

れなたちの前にまた訪問客が現れた。緑のサイドテールに緑のワンピースを着た女性。


れなたちの昔からの友人、葵だ。


葵は研究所の前でれなたちに出会い、挨拶をした。








「葵!何しにここへ!?」


突然の登場に驚くれな。


それも葵はある役目があってある場所へ向かったはずなのだ。


「葵、貴女は優秀なアンドロイドとして戦争勃発地で手伝いをしてたはず。それがどうして?」


葵は少し困ったような顔を見せた。


「恥ずかしい事にちょっと苦戦してるのよ。そこで貴女やラオンの助けを借りに来たって訳」


ラオンと違い、プライドを気にせずに正直に言いたいことを言う葵はれなたちよりも大人びている。その冷静な性格は多くの仲間たちの信頼を集めている。


「…なるほど。私とラオンにできることなら何だってやるよ!では早速…」


れなは息を吸う。そして大きな口を開き…


「おら来いやぁ!」


と耳に突き刺さるような大声で叫ぶ。周囲の住人は家の窓から飛び出し、何か文句をいっているがれなの耳には入らなかった。葵も突然の奇行にドン引きする。


すると遠くから何かが飛んできた。ラオンだった。ここから数百メートルほど離れた距離にいるラオンだが、れなの声にすぐに飛んできたのだ。


「うるせえなれな!マジでうるせえぞ糞め!」


不機嫌なラオンだがれなは葵とラオンを向かい合わせる。そして事情を説明した。




事情を聞いて頷くラオンの顔はどこか笑顔に見えた。周囲の人々はもうれなたちの事は気にもとめない。れなは片手を振り上げる。


「さ、事は早く済ませようよ。葵、案内して!」


こくりと頷く葵は長い髪を風に任せ、高速で飛び始めた!れなたちも続き、グングン速度は上昇する。新幹線を越え、飛行機を越え、ジェット機も越える。飛んでいくにつれて変わる風景。下を見るといつの間にか広大な海が広がっていた。きらびやかに輝き、海鳥が飛んでいく。








「さ、この辺よ」


葵は着陸準備をするがれなたちは驚いた顔をした。すぐに目的地についたのだ。初めは自分達の家のすぐ近くだったのかと思ったが、実はそうではなかった。


「なに?私たちはもう国を越えたのよ。下に見える孤島が、今の戦争勃発地よ」


一言で済ませる葵。やはりれなたちとは違う。下には大きな岩山がそびえ立っている。ゆっくり降り立ち、息を潜める。






「もう既に敵は私たちの前にいるわよ」


岩から覗きこむと、サングラスをかけたハンターたちがいた。ハンターたちは何故か居眠りをしており、見る者の油断を誘う。


「あいつら寝てるの?じゃあ今のうちに…」


「駄目。あいつらの戦闘技術は馬鹿にならない。いつもはあんな感じで寝てるけど、起きると恐ろしく厄介な連中よ」


葵はれなとラオンの方を見る。二人は脅威に気づいておらず、ノホホンとした間抜けな表情。


「…まあいいわ。寝てるときにゆっくり近づき、不意打ちを仕掛けて気絶させるの。気絶した後は軍に引き渡し、こいつらの拠点を調べさせるのよ」


早速岩陰に隠れつつ足音をたてずに進もうとするがここは岩山。足元の石ころがずり動き、ジャリジャリと小さな音がなる。急いで足をあげるがそうすると余計に音が鳴る。ハンターたちが寝たままピクリと動いたのが見えた。


「…なかなか心臓に悪いね」


「しーっ、私たちの鋼鉄の心臓は、そんなのに動じないわ!」


静かな声で話し合う二人。ラオンはナイフを構え、息を潜める。かなり接近し、まだ気づかれていないようだ。


「…今よ。こいつらの頭を殴って!」


言われた通り、れなはハンターの灰色の頭を殴り付けた。ズンッと重い音が響き、ハンターはうつ伏せに倒れてしまった。しかしその音で…


「…ん?何だお前たちは…」


ハンターの一人がむくりと起き上がる。だが他のハンターとは違い、黄緑色の肌をもつ固有の個体だった。ハンターはマグナムを向けながら問う。


「ここは我々が支配している領域だ!人間の手によって送られたものたちだな?許さんぞ!」


葵はポケットから小型のハンドガンを取りだし、向ける。


「いいえ、地元住民がここは人間の領域と言っていた!騙されないわよ」


ハンターはマグナムをおろし、ため息をついて首を左右に振る。呆れたような様子で話し始める。


「…バカめ。そんな嘘に騙されて…いいか?俺たちモンスターは人間よりもっと昔からいるんだ。身勝手な人間どもはそんな俺たちからこの土地を奪ったんだ」


ハンターの目は刃物のような鋭さを放ち、輝いていた。どうやらこのハンターは嘘をついているわけではないらしい。


周りをよく見てみるとモンスターの物ではないバリケードや工具散乱しており、工事現場のようになっている。ハンターは更に続けた。


「…俺らだって毎日大好きな昼寝をして平和に暮らしていた。喧嘩を売ってきたのは糞人間どもさ!俺たちは、人間を滅ぼしてやる!」


ハンターはマグナムを発砲した!間一髪かわし、遠くの岩の陰に隠れてハンドガンで対抗する葵。ハンターも時々隠れつつマグナムを連射して攻撃してくる。葵をジト目で見つめるれな。


「…葵、逆効果だったんじゃない。あのまま和解していれば…」


「うるさいわね!あんたも一緒に撃ちなさい!」


葵はもう片方のポケットから銃を取りだし、れなに渡す。ヒューと息を吹き、銃の引き金に指をつけるれな。ラオンは自分だけ貰えないのかと少し驚いていたが、ラオンにはナイフがあった。銃撃戦が展開され、ハンターと葵、れなの弾丸が岩石にぶつかって少しずつ削っていく。隠れ場所が無くなりそうになり、場所を変えようと両者は同時に動き出す。


荒れた岩石を背景に走り、銃を放ち続ける両者。弾はお互いにポケットから出しては銃に込め、目の前の敵目掛けて放出していく。


「ぐっ」


葵とハンターが同時に声をあげる。弾丸が顔に命中したのだ。だがこんなようで負けてられないと再び持ち直す二人。そんな状況では葵はこちら側にれながいた事で優勢にたった。








れなは怯んだハンターに銃をかまえ、発砲したのである。ハンターがよろめき、銃を落としたのを見逃さなかったラオンはナイフを構えて突っ込み、ハンターの膝をナイフで突き刺す。膝からは血が流れ、そこを抑えながらハンターは体勢を崩した。


「ぐあ…糞がぁ…」


マグナムもラオンに奪われ、完全に戦力を失ったハンターはおとなしくポケットから白旗をだした。


「…すまなかった。いきなり襲ったりして…」


ハンターは両手を地につき、頭を下げた。だが三人はハンターの頭をあげさせる。


「…あんたの言うことが本当なら、私たちは協力しなきゃならない」


人間の傲慢さは既に心得ていた三人。見てみぬふりをしてきたが、ついに自分達にも関わってきてしまったようだ。ここはハンターたちにも協力しないとならない。


「…だがどうやってだ?」


顔をあげるハンター。唸り声をあげて俯くれなたちはどうやら具体的には考えていなかったようだ。そこで真っ先に案をあげたのはやはり葵だ。


「そうだわ。人間と和解よ!」


ハンターは思わず大きな声を出してそれに答えた。


「おい、あんな荒くれたやつらと和解?できるわけないだろ!」


「私に策があるわ」




それから人間たちが呼ばれたのは小一時間ほどあとである。夕陽が照らす岩山のなか、険しい山道を登りながら頭をかく人間たち。髭を汚く生やした人相の悪い男どもだ。5、6人ほどが山を登ってきたところを目撃したれなたちが一斉に岩陰からおどりでた。


「あんたらを読んだのは私たちだよ。話があってね」


人間たちは何も言わず、目の前の奇妙な少女たちを見る。


「ここはかつてモンスターの住みかだったんだって?でもここ以外に領地にできる場所なんていくらでもある。今すぐに立ち退け」


人間たちは揃って憎たらしく笑う。手を振りながら言った。


「はは、バカめ!モンスターたちはもう積極的に攻めてこない。つまりこの地を渡したも同然なのさ」


背中に差し込んでいた銃を向ける男たち。それを見るとれなたちは一斉に男たちの背後にまわり、後頭部を軽く叩く。男たちは気絶し、バタバタと倒れていく。


「何しやがるこの糞野郎ども!」


一人が銃を発砲したが、手で弾き、同じく後頭部を殴る。男は倒れてしまった。


「…」


少し沈黙がよぎったあと、れなたちは男たちを抱える。


「おーし。それ!!」


男たちを投げ飛ばし、森の外へ追い出す。普通に運べばいいものを。


事がすむと、ハンターが身長の倍以上はある大岩を持ってきた。


「さ、これを使うぜ」


ハンターは岩を投げ、岩山の道に叩き置く。地鳴りと共に設置された大岩はズッシリと道に塞がっていた。それを見て葵は顔を少ししかめながら言う。


「あんな野蛮な人間たちは話し合うよりもすぐに行動に移したほうが効果的かもね」


れなたちが男たちを殴り倒し、岩を置くことで道を塞ぐのだ。邪魔には銃を向けるようなやつらに話し合いなど非効率。そう考えたのだ。もし銃を向けなかったら話は別で、和解するつもりだったのだが…。


「…だが俺たちハンターはこの通り領地を取り戻した。感謝するぜ…」


ハンターは笑顔を浮かべた。こうして突然の頼みも見事に解決させたれなたちであった。





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