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ふりふり、ゴブリン子ちゃん

 なぜ、ふだん人前には姿を現さないゴブリンが、こんなところにいるのだろう?


 しかも、あたしの部屋の外に?


 

 とりあえずあたしはそのゴブリンを、部屋に連れていくことにした。


 

 ……あたしたちの秘密を何か嗅ぎつけたのかもしれない——



 このまま見過ごすわけにはいかないし、当然ここに放っておくこともできない。



 あたしは、よっ、とばかりに抱え上げた。



 お、重い! 

 

 体つきは五、六歳の子供くらいなのに、酒場の大鍋くらいの重さはある!



 あたしはよろよろと、ゴブリンを抱えたまま部屋に戻った。


 

 ゴブリンを抱えたまま、何とかそっと部屋の戸を閉めると、ヒナが息を呑んだ。


「なっ……ナギ、そ、そ、ゴ…… 」

 

「しっ!」


 ヒナを制する。

 まだ隣では、おばさんが起きているかもしれないのだ。


 あたしは低い声で言った。


「外にいたのよ。勝手に気絶してくれちゃったんだけど……」


 そのゴブリンをベッドに寝かせる。


 ヒナはロウソクを灯しながら眉をひそめた。

 そして、ロウソクに照らされたゴブリンの姿を、あたしたちは眺めた。

 

 緑がかった茶色い肌。


 見事に曲がった鼻、尖った耳。

 

 そして闇色の髪には、可愛らしい薄桃色のヤマギクの花をさしている。


 ずんぐりとした体にまとうのは、獣の皮のひらひらしたワンピース。


 女の子ってことか……ゴブリン子ちゃん。ははは。



「でもナギ……さま。外にいたって……この窓の下に?」


 ヒナも、その不自然さを感じたのだろう。


「おかしい話ですね。ゴブリンが人里に出てくるだけでも珍しいのに……我々のいる、この部屋の外に偶然いたなんて、ちょっと見過ごせないですね」


 

「……で、どうしようか」


 寝床に横たわったゴブリンを見つめて、あたしたちは顔を見合わせた。


 きっと気がついたら、逃げようと大騒ぎをするに違いない。


 とりあえず、周りに人がいる間は大人しくしていてもらわねばならない。

 あたしは、ため息をついてヒナを見た。


「仕方ないわね……」


 ヒナもあたしの意図を素早く察して。


「ちょっと、かわいそうですが」


「……縛っちゃいましょう」


 そして、あたしたちはゴブリンをベルトと腰紐で丁寧に縛り上げ、手ぬぐいで猿ぐつわを噛ませた。


「うまい具合にあたしは明日、非番だし。隣のおばさんが出勤するまでは、このままでいてもらいましょう」


 そしてゴブリン子ちゃんにベッドを占拠されたあたしはいつもヒナの寝る揺り椅子で、ヒナは床で壁にもたれかかって、何とか眠りについた。





続く

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