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ほんとのゴブリン
外に出ると、あたしはそっと自分の部屋の窓の方へ忍び寄った。
するとやはり、窓の下に茂るベリーの茂みに、小さくうずくまる影があった。
あたしは迷わず火搔き棒を突きつけた。
「動くな!!」
「ヒイイイイイイッッッ!!」
その影は、断末魔のような悲鳴をあげて、崩れ落ちた。
え、まさか気絶したの?
こんなことで?
その悲鳴に、隣の窓が開く。
「ちょっと、なにごと!?」
酒場で給仕をしているおばさんだ。
彼女は朝番なので、とっくに寝ていたに違いない。
「あ、あたしです、すみません」
あたしは慌てて言った。
「ちょっと涼んでたら、大泥蛙を踏みつぶしたみたいで……」
「なんだ……びっくりしたよ! もう皆寝てる時間だよ。静かにしておくれ!」
怒られた。
「ごめんなさい」
おばさんが窓とカーテンを閉めたのを確認してから、あたしは月明かりを頼りに、足元に倒れるそいつを見た。
「!!」
あたしは、魔法使いにゴブリンのようにされてしまったけど……
あたしの足元に横たわっているのは、まぎれもなく、ゴブリンそのものだった。
続く