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どうしてあたしが聖女なんだか。

 その夜遅く、店じまいも終えて。


 粗末なロウソク立てを持って、あたしは店の裏手にある宿泊所に急いだ。


 この宿泊所は酒場に併設された宿屋の一部で、酒場で働く者たち用に格安で小さな部屋を貸してくれている。

 

 あたしの部屋は、廊下の突き当たりの一番狭い部屋だ。


 軽く咳払いをして、鍵を開ける。

 この咳払いは、あたしたちの合図だ。


 そう、禁止されているけれど、私はここを一人で使っているわけではない。


「ナギさま、おかえりなさい」


 ロウソクの光にぼうっと浮かび上がった影が囁く。


「今日もご無事なようで、良かったです」

 

 彼が、あたしを攫ったと言われている『モンスター』だ。


 逃げる時にあたしをかばったせいで、彼は美しい青い翼に深く弓矢の傷を負った。

 

 美しい大きな翼を持つ人間——


 そう、彼は、人間なのだ。

 あたしが逃げるのに手を貸してくれた時、魔法をかけられてしまった。

 

 魔法使いは、あたしを守ろうとする彼に全体魔法をかけたかったのだと思う。

 

 でも、あたしがとっさにニンニクのお守りをかざしたので——おばあちゃんに教わったニンニクのお守り、あんなに効くとは思わなかった——翼が生えただけで済んだ。


 それも、彼の内面を映すような、天使のように美しい、金色がかった青い羽毛に覆われた……


 そして魔法の半分は、私にかかってしまった。


 飛んでくる矢をかわし、追手から逃げながら、あたしの体はだんだんと変化していった。


 栗色だった髪と眼は闇色になり。

 ——闇色というのは、黒ではない。降り注ぐ光すらを飲み込んでしまうような、光沢のない色。

 

 そして、それなりに白かった肌は、汚れたような褐色に。

 

 体も、割と痩せていたのだけれど、ポッテリ太った体型に——背も縮んだようだ。


 まるで、ゴブリンのようだ。


 あのへっぽこ魔法使い!

 ずっとこのままだったら、末代まで祟ってやる。

 

 まあ、不幸中の幸い、この変わり果てた姿を奴らには見られていないから、あたしを探すのにも苦労しているだろうけど。

 おかげで、酒場でも働ける。


「ヒナ、そういうあなたはどうなの? 怪我……まだ痛むでしょう」


 追手から逃げながらの野宿生活に、彼の傷口はひどく膿んでしまっていた。

 運良くこの酒場に潜り込むことができてからは、彼をこの部屋に匿い、こっそりとじゃがいものお酒——一番強い酒を持ち出しては、消毒に使っていた。

 それで、少しは良くなってきたものの、まだ腫れはひいていない。

 良い薬が欲しい。


「確かにまだ完治はしていませんが、痛みは日に日に薄れています。ナギさまのおかげです」


 あたしはため息をついた。


「ねえ、ヒナ。ナギ()()っていうの、やめてくれない? あたしが聖女じゃないってことくらい、あんただってよく知ってるくせに」

 

「でも……」


 ヒナは口ごもった。


「ナギさまは、高位占者によって、向こう三年の聖女に選ばれたのですから」


 そうなのだ。


 田舎で、毎日穏やかに過ごしていて。

 将来はヒナと結婚するような話にもなっていたのに。


 あたしは唇を噛んだ。


 聖女なんて言ったって、要は王の妾よ、妾。


 三年毎に新しい女を召し抱えては、世継ぎを産ませる。ひどい話だ!


 はいそうですか、わかりました、何て誰が大人しくいうもんか。

 

 まあ今のあたしの姿を見たら、王どころか、どんな猛者でも子をなそうと言う気にはならないだろうけどね。


 ただ、ヒナの前でゴブリン顔でいなきゃならないのは、本当にツラいのよね……。


 


 

続く

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