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銀貨一枚ぽっちで、何が買える?

「ところで」


 青年は口を開いた。


「お姉さん、こういうところで毎日働いていらっしゃるなら、何か新しい情報はありませんか? 」


 胸元のポケットに手を入れ、ちらっと銀貨をきらめかせる。


「ただで、とは言いませんよ」


「まあ、銀貨一枚なんて、随分太っ腹ねぇ」 


 あたしは内心の怒りを完璧に隠してにっこりと微笑んで見せた。


 銀貨一枚。

 

 たったそれっぽっちかい!


 ()()()()()()()()()が、たった銀貨一枚!?

 

 笑わせないでよ。


 しかもそんなはした金で、あたしが何か言うと思うなんて。


 本当、安く見られてるわ。


 それでも一応、単なる酒場の女として、怪しまれないように会話だけはしておく。

 

「何が知りたいの?」



「もちろん、聖女とモンスターについてですよ。何か新しい噂とかないですか」


「新しい噂ねぇ……」


「または、あなたが見ていて、何か胡散臭い人間がいたとか、怪しいことがあったとか、何でも良いのですが」


 これも、冒険者というよりは、警備隊のような質問だ。

 

 口調も、好奇心からというよりも、職業的。ある意味事務的だ。


 あたしは言った。

 銀貨が隠された、青年の胸ポケットあたりを見ながら、惜しそうに。

(ああ、あたしは芝居の才能があるかもしれない!)


「ほんと、残念だわ。だってここに来る人たちって、毎日みんな同じことしか言わないのよね……」


「で、それはどんなことなんですか?」

 

「まず、森の奥の洞窟に、モンスターが聖女様を連れて行ったこと」


「それは僕も聞きました。で、他には?」


 青年はカウンターから身を乗り出すように聞く。


「あとは、自分がモンスターを倒して有名になって、金持ちになること。そんなのばっかりよ」


 青年はがっかりしたように目線を皿に落とした。


 その落胆ぶりは目も当てられないほどで、ついつい尋ねてしまう。


「何か、事情がありそうね。お兄さん。話だったら聞いてあげるわよ」


 もしも王宮の警備隊だの、公式な依頼を受けたモンスター狩人だったら、いくら何でもこんなところで、素性もしれない酒場の女に下手に話したりしないだろう。

 

 ところが、その青年は意外にも、ポツリ、ポツリと話し出したのだった。

 


続く

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