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ま、まさかこの人は王の……?

 突飛だとは思うけど、突飛なだけにその考えが頭から離れない。


 もう一度、目の前の青年を見つめる。


 ——もしこの人がゴブリン子ちゃんのご主人だったとして。


 翼は?


 どう見ても、普通の人間よね?


 なぜ懐かしいと感じるかは別にして……


 自分が死ぬ以外の方法でゴブリン子ちゃんの『名付けの宿命』を解いたというなら、別のゴブリンを僕として連れていることにもなるはずだ。


 もちろん、そんな様子はない。


 いや、そのゴブリンも身を隠しているのかもしれない。


 でもでも、やっぱりどう考えても突拍子もない話よねえ……


「何か、僕の顔についていますか」


 青年が言う。


「何か、変ですか」


「いえ——というか、そちらの方こそあたしの顔をじろじろ見ていらっしゃいますよね」


 青年は苦笑した。


「ああ、これは失礼しました」


「おい、そこ!」


 護衛兵の一人がこちらに向かって叫ぶ。


「何をひそひそ、話してるんだ。お前たち何か、様子が怪しいな」


 酒場中の視線があたしたちに集まる。


 これは本当に避けたかった事態だ……


 見ると、青年も血の気の引いた顔をしている。


「すみません、ちょっと飲み物の追加と、勘定について話していたもので……」


 青年は軽く護衛兵に頭を下げた。


 そこであたしたちの会話は途切れた。



 あたしは目立たないように働きながら、考えにふけっていた。


(あの人がゴブリン子ちゃんのご主人様かも、っていうのは確かに突飛すぎたけど。

 

 でも、あの人、やっぱりおかしいのよね。


 二日前も、今も、冒険者という割に上品で清潔感に溢れてる。爽やかなコロンの香りまでさせて)


 黙々とカウンターで軽食をつまむ青年の所作も、やはり品がある。


(最初は警備兵かとも思ったけど、それにしてはあまり護衛兵と協力する気もないみたいだし……護衛兵に声かけられて、青ざめたりしちゃって)


 あたしは考えをまとめようとした。


(まず、彼は聖女の行方を追っている。そして冒険者でも、たぶん兵でもない。高価なコロン、上品な物腰——)



 ま、まさか。



 この人、王の関係者じゃないわよね!?


 王の直命を受けてこっそり動いてるとか……?


 そうだ、そういえば王の長男、年の頃は彼ぐらいじゃなかったかしら。


 王子と言うなら、どこかで肖像画でも見たかもしれない。印象薄くて思い出せないけど…… 


 それで懐かしいと感じてるのかも……!?



(ちょ、ちょっと待って、あたし!) 



 次から次へと飛び出てくる突飛な発想に、自分自身も頭を抱えたくなってしまった。


 あたし、大丈夫かしら。


 絶え間ないストレスで、どうにかなっちゃったのかもしれない。




続く

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