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しろのほう  作者: 焚(たき)
『好きだったはずの"ひとり"』
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忘れられない日(上)

母はお弁当を張り切って作っていた。

今日はもう夏休み、部活の地区大会の日だ。

私は相変わらず誰とも会話が出来ずに

無視をされ続けていて大会に行くのが億劫だった。

何かされている訳ではない。

ただ無視をされるだけだ。


「はい!お弁当!大会いってらっしゃい!」


母が笑顔で私に話かけてくる。

いつもの事のはずなのに思わず涙が出そうになって

私は慌ててトイレにこもった。




本当は行きたくなんか無い。

もう部活なんて辞めてしまいたい。

みんなから無視をされてから

まだそんなに日は経ってないはずだけど、

私にはとても長く感じていた。

終わりが見えなかった。

ずっと苦しい日々だった。




でも逃げたらもっと辛くなるかもしれない。

行かなかったらもっと影で笑われるかもしれない。

そんなの嫌だ。

私が悪い事をしたから怒ってるんだ。

ごめんなさいっていう気持ちを持って過ごしていればいつか前みたいに仲直りできるはずだから。

謝る機会を作る為にも行かないと。




家を出て、私は集合場所へ向かった。

いつもだったら友達と待ち合わせて向かう駅まで

今日は1人で自転車を漕ぐ、

まだ時間には余裕があるはずなのに

なぜだか気持ちが焦る。


昔は1人が好きだったはずなのに

今はそれが怖い。

誰かが居ないと不安になる。

ド田舎の道はどこも閑散としていて、

このまま世界から置いてけぼりになっちゃう気がした。




駅に着くと部員数人が集まっていた。

話しかけても無視されるのは分かっていたし、

勇気を出して話しかけて無視されると本当に心が痛くて涙が出る気がしたから話しかけなかった。


全員が集まると電車に乗り、

そこからは徒歩で大会会場の体育館まで向かう。

これが地味に遠く駅から30分ほどはかかる。




私はこの日が今でも1番忘れられない。




試合会場まで歩いて向かう時は通行の邪魔にならないよう、2列になって歩くのが毎回の決まりだった。

黙読と歩こう。

そんな風に思うことにした。

でもすぐに気づいた。

自分の隣にだけぽっかりと穴が空いていることに


私が列の端っこという訳ではない。

隣の子が私の横を歩きたくないのだろう。

2列になって歩けば、

2人で話せる場なら、

その子とまずは仲直りできるかもしれない。

さっきまでそんな期待を抱いてた自分がいた。


でも違う。

私は今、誰も話せる人がいないんだ。

みんなが楽しそうに話してる。

私の隣にいるはずの子は、

後ろの子達にくっついて

私と距離を空けている。

いつになったら私は許してもらえるんだろう。

何をしてしまったんだろう。

こんなに1人は寂しかっただろうか。

いつから友達がいないとダメになってしまったんだろう。


こんな姿を先輩や先生に悟られたくない。

考えが頭の中をぐるぐるする度に何度も泣きそうになった。

でも泣いたら負けだと思った。

逃げたらダメだと思った。


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