呼び出し
「竹中中尉、竹中中尉は居られますか」
ノックとともに忙しく声が聞こえる。
「入れ」
声に押されるように同じ部屋に居た同期が声を出す。
「は、失礼します。竹中中尉へ伝達です。直ちに19師団本部に出頭せよ、とのことです」
「出頭?なにかの間違えでは無いのか?」
本部?最近何かやったか。ついに瞑れた右目の性で退役させられるのか?
「どこからの伝達だ」
「波田重一中将からであります」
中将…!ずいぶん上の方からだ。これ以上は朝鮮軍司令部からしかない。
「竹中、栄転だな」
くつくつと笑う同期の声はわりかし明るい。
「煩いぞ、大仁田。失礼、伝達了解」
向こうがホッとした事に気づきつつ、少し着崩した制服を整え始めた。
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「失礼します、竹中中尉です。」
途中まで参謀辺りの下っ端呼び出しじゃないかと勘ぐっていたがどうやら違うらしい。
この扉には我らが長の波田重一の文字がある。
「はい、どうぞ」
声もそうらしい。
「失礼します!」
「あぁ、呼び出してすまないね、まぁそこに掛けて」
部屋には私と中将だけのようだった。
「うん、時間が無いから本題に入らせて貰おうか」
「エルフ…あぁ、エルフ連邦の事は知っているね?あの長耳や毛長の」
「は、存じております」
「うん、我が国、というか軍はね、彼らと合同で部隊を作ろう、と言うことになってね。君、中隊をやらないか?」
「というのも部隊は3個旅団を予定してるんだがね、みんな嫌がるんだよ。」
そりゃそうだ。10年前迄血で血を洗う戦争をしていたのだから。軍事顧問担当の将校ですら行きたがらない。
「誰か良いのが無いかと思って聞いたら、君の同期が、良いやつ居ますよ、と」
大仁田だな、よし。
「部隊は一応軽歩兵、1個歩兵小隊は好きなのを持っていくといい。2個重火器小隊も自由にやっていい。どうだ?自分でカンパニーを作ってみないかい?といっても、無理っていう言葉は聞かないが」
命令と変わらない言葉を受けて俺はこう答えるしか無かった。
「お受けします」