海が見える町
潮の香が漂う道
沖へ出る船を横目に歩く
朝靄が隠す水平線の先
見知らぬ土地に憧れていた
待っていたのは思い描いた未来と
似ても似つかない現実
海がないこの場所で
何度も押し潰されそうになって
閉ざされた小さな部屋で
言葉にできない思いを叫んだ
人の波が押し寄せる交差点
飲み込まれたら消えちゃいそうだ
溺れかけた瞬間ふいに差し出された
温かい手の温もりに涙あふれた
海がないこの場所で
出逢った人に支えられて
海がないこの場所も
大事な故郷になりました
「久しぶりね」と全身を撫でる
少し湿った柔らかい風
相変わらず他愛のない兄弟との会話
そっと見守る母の眼差し
今日はあなたに伝えたいことがあります
笑って聞いてくれるといいな
海がないあの場所で
みつけた奇跡があった
海がないあの場所だから
尊い感情に気づきました
両手いっぱいの花束をかかえ
沖へ出る船を見送りながら
海が見える町に帰ろう
一緒に帰ろう
最後までお読みいただきありがとうございました。
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