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Ephemeral note ~少女が世界を手にするまで  作者: 瑞月風花
第二章 消えゆく過去の澱みの中で
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トーラ・・・1

 夜の道、本当に女がうろうろする時間ではないな、とターシャは思った。しかし、今日聞いたことはターシャの胸の中に収めておくことの出来ない事項だった。奥方様の庭で魔女から聞いた『トーラ』という言葉。これは、駄目だ。この先にダルウェンの家がある。丘になった場所にある小さな木造の家で、家族が五人。普通なら恐妻になりそうな女と、姉と弟の兄弟そして、その妻。ダルウェン以外の家族はもう眠っているのだろう。暖かいオレンジの灯りが一つの窓から闇夜を照らす。ダルウェンには伝えておいたので、きっともうすぐ扉の外に出て来てくれるだろう。


 ほら、彼はやはり律義で、几帳面だ。ランタンを持って、下ってきている。


「全く君は。こんな時間に。こちらから伺うと言っただろう?」


「えぇ、でも、こっちの方が目立たないでしょう?」


ターシャの家にはあまり誰も寄り付かない。故に、そんな場所へ向かう人影が目立たないわけがないのだ。そして、大男のダルウェンと違い、ターシャは小柄であまり人目に付かない。


「それに、奥方様達がいない間は面倒だから、館に住みこむことにしたの。だって朝早くから、遅くまで。それこそあなたの言う通り、こんな時間に女一人が歩くなんて、でしょう?」


ターシャはありのままの事実を告げた。


「君がすることには口出しはしないが、一体何をしようとしているのかね?」


「小さな恋を応援しようと思っているのよ」


ターシャの答えに、ダルウェンは肩を落とした。彼のこの態度は奥方様の時と同じだ。


「奥方様の時も同じことを言っていたな、君は」


そして、ダルウェンは、奥方様がどれだけディアトーラのことを思ってらっしゃるのかを分かろうとしない。それ以外のことで言えば、ダルウェンはターシャに対して真面目に対応してくれる。


「大切なことなのよ。でも、とりあえず、耳に入れておいた方がいいと思うことが出てきたの」


 これは、ターシャの手の届かない物だ。領主様の耳に入れておかなければならない。


「でも、もしかしたら、トーラかもしれないわ」


「まさか」


ダルウェンの顔が凍りついた。


「だが、誰も……」


そうなのだ。あの魔女は坊ちゃまとそんなに齢は変わらないだろう。その間に、どこかの人間が盤外の駒として捧げられたという事実はない。この時間に生きる魔女がトーラであったとすれば必ず現れる盤外の駒が現れていないのだ。だとすれば、彼女は、時の遺児として生を享け、かつトーラを所持する者。


 全てを揺るがす魔女、になる。


自身の存在を保つために、世界を要求してもおかしくない存在だった。


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