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Ephemeral note ~少女が世界を手にするまで  作者: 瑞月風花
儚い記憶の物語(第二部)
31/91

★光を紡ぐ魔女


 ディアトーラの聖書にあるトーラ。それは全てを司る力。全てを自由に操ることの出来る大いなる力。消して求めてはいけないもの。そして、愛し慈しむことを説いている。


 ここは、ディアトーラの教会。大昔に作られた全ての邪気を浄める場所である。本当かどうかは知らないが、魔女のミスティもミラも近寄りたがらない。それどころか、ときわの森に住む魔女と混同されるという理由から領民すらほとんど祈りに来ない場所になっている。確かに隣国リディアスの脅威を考えるなら、その方が目立たなくていいのかもしれない。だから、使われるのは結婚式やお葬式くらい。


 ただ、イルイダはこの静まった、誰もいない『ここ』が気に入っていた。こぢんまりとした教会の天井の一角には、青い硝子が埋められており、白磁の女神がその手に光を受けようになっている。ディアトーラで一応信仰されている、世界の創始者。神さまだ。神さまの手には、たくさんの輝かしい未来が集められているのだ。太陽の光がステンドグラスに反射すると、本当にその手の中が青くきらきらと輝く。


 輝かしい未来。人々が望む栄光、富、幸せがその手の中で輝きだす。


 その様子を見るといつもミスティの言葉が頭を過る。


「あそこに描かれているのは、あなた達と同じ人間よ」


理由は、天から恵みを享けるのは人間だからだ。


「違うわ。神さまが光を紡ぎ出してるのよ」


イルイダが反論すると、こう言った。


「じゃあ、彼女は魔女ね。あそこにあるのは単なる光。手にはつかめない幻想を紡いでるのよ。そして、人間たちにありもしない幻想を抱かせるの」


『トーラ』とは確かにそういうものなのかもしれない。イルイダ自身がトーラに幻滅していたこともあった。しかし、光が当たると茶色く焦る黒髪をグイッと結い上げたイルイダは、それでもそこで祈りを捧げていた。


 これからもずっと平穏な日々が続きますように。魔女狩りなんてしませんように。他国が侵略なんて考えませんように。そして、ルオディックを護ってくださいますように。




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