表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人形館  作者: 和凪
2/2

地球(アース)の学院と魔女様

…さて。魔女のうまれた今の世界である「地球アース」での名前は「葉舟愛香ようしゅうあいか」といいます。生まれ変わった魔女は今は中学二年生。「創音学院そうおんがくえん」というところの生徒です。

初等部・中等部・高等部の三つの校舎にわかれています。魔女である愛香は中等部の二年生。

中等部で友達を作り、充実した生活を送っています。そのことで愛香は依存しなくても平気なくらいにはなりましたが、まだ心の深い場所にある依存心はそう簡単には癒されてはくれません。

友達はたくさんいますが、本音を語れる友達は数少ない。それは、愛香の歪んでいる思考を理解できない子が多いことを愛香は知っていたからです。


「葉舟ちゃーん!!!」


友達に呼ばれて、愛香はムクリ…と伏せていた顔を上げました。机の上に腕を組んで載せて、その上に顔を伏せて寝ていた愛香。呼んだ友達は、女の子。


「…ああ、麻衣。どした?」


寝起きだからでしょう。少し低めの、掠れた声で愛香は友達の水上みなかみ麻衣まいちゃんに問いかけました。


「あのね、麻衣ね、できたの!!」


主語がなくて、意味がわからなくて愛香は少し困ったような顔をして、再度問いかけました。


「なにができたの?主語がなくてわかんないよ」


それを聞いた麻衣ちゃんはちょっと慌てて、ごめん!と謝ったあとに続けました。


「あのね、麻衣ね、ようやく葉舟ちゃんのイラスト描けたの!!」


そう言って、麻衣ちゃんは愛香の机の下へと駆け寄っていき、愛香に手に持っていた紙を見せた。

麻衣ちゃんが持っていた紙には、本当にそっくりな愛香が描かれていた。


「…すごいね。ありがとう、麻衣。」


愛香にそう言われて、嬉しそうに笑みを浮かべた麻衣ちゃん。じゃあ、それあげるね!!と言って足早に教室から出ていき、どこかへ去っていった。


「…台風みてーなやつ。」


そう呟いて、愛香はまた机に伏せた。やがて先生が来て授業が始まったが、誰も愛香を起こそうとはしません。何故なら、愛香は気持ちよく眠っているところを起こされるのがたまらなく嫌いだからです。過去には先生やクラスメイト達が愛香を起こしましたが、みんなものすごい恐怖を味わいました。だから、愛香を起こそうとはしません。愛香が眠ったら騒いではならない、という暗黙のルールまでできています。


その日、愛香が起きたのは放課後でした。授業も受けずに眠っていましたが、彼女は教科書を見ればわかるので授業を受けなくてもなんら問題はありません。


放課後、目を覚ました愛香に一番に寄ってきたのは最近仲良くなったいしばし憂流ゆりちゃんです。憂流ちゃんは、名前の通りに憂鬱な気分を流してくれるような笑顔を持っています。

憂流ちゃんはとても純粋なのですが、純粋ゆえに思ったことをなんでも言ってしまい、誰かを怒らせてしまうことが多いのです。


「ねえ、愛香ちゃん?」


嗚呼、憂流ちゃんは愛香にとって一番やってはいけないことをしてしまいました。前に、憂流ちゃんは愛香に言われていたのです。名前で呼ぶな、と。だけど、憂流ちゃんはその言いつけを守らなかった。


「…は?あのさ、誰がいつキミに俺のことを名前で呼んでいいって言ったわけ?俺前に言ったよね?俺のこと名前で呼ぶなって。なんで呼んでんの?耳ついてる?機能してる?」


愛香は怒りました。愛香は、誰かから名前で呼ばれることを嫌います。特別な人にしか、名前を呼ばれたくないからです。みんなは、一番最初に愛香のことを名前で呼んだ子への対応を見たのでみんな葉舟ちゃん、や葉舟さん、と呼びます。今のところ、この創音学園で愛香が名前呼びを許している子はいません。みんな、本当の愛香のことを受け入れてはくれないからです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ