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つみかぼしあ

作者: えるむ

 俺は俺の事が嫌いだ。

くだらない話をする他人を見下す、バカにする。テストの点数は平凡、努力をする事がカッコ悪い。俺はまだ本気出してない。

 あの子に無駄に話かける男子が嫌い。・・・話しかける勇気はない―。


 要するに卑屈なんだと思う。どうにかしたいが何か行動を起こす気もない。他の人の事は見下すくせに何か起きないかと日々期待している。

 友達と呼べる人は過去にも居たし、今でも居る。ただその人達が何を考えているかは分からないが、何となく付き合っている気がする。

漠然とした虚無感と何かに対するイライラを引きずりながら毎日をゾンビのように生きていた。

「何か楽しい事ないかな・・・」

 思わず独り言がこぼれ落ちる。

 夕暮れの帰り道。人がぽつぽつと歩いているが、もちろん俺は一人。こぼした言葉がぐるぐると彷徨いどこかへ消えた。


「うん、お前でいいや」


 耳元から発せられた言葉に、思わず身体が凍りつく。

「・・・?」

 頭を時計回りにゆっくりと動かすが、誰もいない。ただ―。

「・・・っ!ひょぉっ!!!」

 今まで立っていたはずの地面が無くなり、果てしない穴へと落ちていった―。


 なさけない悲鳴はすぐに聞こえなくなった。


■◇■◇■◇


「・・・ふぅ、ミアー!!ここはこんな感じー?」


 ミアは作業を一端止め。こちらまで小走りで駆け寄ってくる。足元の土を拾い指でにぎにぎ・・・その後俺の顔を見つめコクコクと頷いた。

 相変わらずの無表情だが怒らせてしまっている訳ではなく普段からこんな感じ。作業については合格は頂けたらしい。

「んじゃ、種撒いちゃいましょかー。」


 俺は今、畑を耕していた、異世界で。


 穴に落ちていつの間にか気を失っていた俺は、草むらに倒れていたところをミアに助けられたらしい。らしいというのは俺が気が付いた時にはミアの家のベットの中だったからだ。

 俺がこの世界に来てから約3ヶ月が経過しようとしている。

 ミアは俺と違うところがいくつかあった。空色の肌、黄金色の瞳、萌葱色の髪は肩のあたりで切り揃えられている。そして決定的に違う部分は耳の上から生えている2本の角と尻尾。

初対面の時は食われると本気で思っていた。悲鳴を上げてしまったのも仕方ないと思いたい・・・

 ちなみに、俺の悲鳴に驚いたミアは水の入った陶器を落とし割ってしまったり、パニックを起こしてその場から逃げだし、机の陰からこちらの様子を伺ったままその場が30秒くらいフリーズしてしまったり、初遭遇の時はろくな思い出がない。

 結局その時は恐ろしいと感じていたモノがあまりにビビってるから笑ってしまったのだけれども・・・ここの世界の住人は皆ミアのような姿をしているらしい、種族も鳥や獣、虫や魚などが居るとか・・・

 そしてこの話を聞けたのはひと月ほど前、聞いたときはさほど驚く事もなかった。

 というかミアを見てしまうと、ここは俺の知ってる世界ではないと実感せざるを得ない。むしろミアが喋れる方に驚いたくらいだ。

 何で喋らなかったかをやんわり問い詰めると、


『恥ずかしかったから・・・』


 との事。一緒に暮らして分かった事は、ミアは上がり症でビビりなクセにお人よし、無表情でだいぶ損をしていると思われる。

 そんな感じで共同生活を過ごしているのだが、俺はミア以外のヒトに会った事がない。食糧や物資はミアがどこかで調達してきてくれる。


『周りを見に行きたい。』


 とミアに言った事があったのだが、頑なに拒否されてしまった。あまりにも必死に止められるので素直に従う事にした。

 会話するようになってから聞いてみたら、


『ニンゲンのあなたは、ナガの・・・この国のヒトに見つかるとたぶん殺されてしまう。』


 と言われ背筋が凍った。ただ、この周辺にはあまりヒトは居ないらしく、普通に出歩いてても危険はなかった。

 毎日何もせずにご飯だけ頂くのも気が引けるので、何か手伝えることはないか?と日々探して生活している。

 ミアとの生活は初めの頃はギクシャクしたが、慣れてからはのんびりとした日々が続いていた。

 森に入り木の実やキノコの収穫の手伝い。近くの湖で魚を釣ったり生活に必要な水汲みなどが主な仕事。あまりにも暇なので手頃な木の棒を見つけ、竹刀替わりに振るったりもした。

 初めて棒を振ってる所を見られた時、


『・・・あなたは兵士なの?』


 と消え入りそうな声で聞かれたが、もちろん否定した。


『違うよ。俺が居たところには剣道っていうスポーツがあって、小学生から・・・って分かんないか。まぁ9年くらいやってたんだよ。もちろん本物の刃物を使うんじゃなくて、竹で出来た剣を使うんだ。

今は訓練ではなくて暇つぶしにやってる感じかな。』


『・・・そっか。よかった。』


 表情からは読み取れない曖昧な返事。なんかモヤモヤする。

『そういえば前から気になっていたんだけど・・・ミアはどんな仕事をしてんの?』

『私の職業は・・・魔術師・・・ナガ国の魔術師なの。』

『・・・ま―。』


『ま?』


『マジかー!魔術とか・・・すげぇな!!国直属って事ッ!?それってめっちゃ強いんじゃね!?

いやー・・・ただもんじゃないと思ってたが、そんな肩書きがあったとは・・・優しくて、面倒見が良くて、強くて可愛いとか・・・どんだけ完璧なんだよ。』

 あまりに興奮してしまって、思い浮かんだ事を全てぶちまけてしまった。目を丸くするミア。

『・・・怖く・・・ないの?』


『ん?何が?』


『・・・やっぱり変な人。ふふ・・・』

 ミアが口に手を当てて笑っている。初めて見るその姿に衝撃を覚えた。が本人の前では黙っておこうと心に誓った。指摘するとそのやわらかな表情を見せてくれなくなると思ったからだ。


 で、今の俺はミアの魔術の研究に使う植物を育てる下準備をしている。結構な量が必要らしく、家の横に小規模な畑を作り種を撒いている。

「柵とか支柱とか必要になる?」

 フルフルと首を横に振られる。

「そっか、あとは水を撒いて待つだけなんだね。」

 コクコクと頷かれる。

「んー。さて・・・やる事も終わったし、素振りでもしてくるかなー。」

 伸びをして、腕をぐるぐると回しながら家の中へと向かおうとする。

「・・・あっ・・・ねぇ、ちょっと待ってて。」

「ん?わかった。」

 家の中へと小走りで掛けていくミア、ぼけーっと空を見上げてると間もなくしてミアが出てきた。

「コレ。」

「おお、これは・・・」

 ミアが差し出したのは黒檀の木刀だった。新品というわけではなさそうだが、きちんと手入れはされているようだ。ミアから受け取り、軽く振ってみる。

「いいね。重さも良い感じだ!ミアありがとう。」

「今日の手伝いのお礼・・・気にしないで。」

「大切に使わせてもらうよ。」

「そう・・・それじゃ私はちょっと用事があるから。」

「うん、いってらっしゃい。」

 小さく手を振られたので、笑顔で送り出した。何度かこちらを見返すミア、その度に律儀に手を振っていた。

「さて、いいもの貰ったし、気合入れてやりますか。」

木刀を振りおろしながら、誰に言うでもなく言葉が漏れていた。


■◇■◇■◇


 がさがさと音が響く。音源は2つ、ひとつは素早く移動し音自体も小さく、もう一つはわざと大きな音を出しながら、小さな獲物をある方向に追い込んできているようだ。

 その獲物が向かう先には、遮蔽物のない小さな空間がある。彼はそこに追い込んで居るようだ。

(やはり、あのニンゲンは頭がいい。知識が無いが吸収が早いのだろうな。)

 ミアはその場所に先回りをしていた。いつ獲物が飛び出してきてもぶち当てれるように魔術を練っている。

 カンカン!と木の鳴る音が大きくなり―。


「ミア!そっち行ったぞ!」

「・・・ハァッ!」

 ヒュババッ!!

 掲げられた右手から放たれた3本の光熱の投射物はまっすぐ吸い込まれ、獲物を地面に縫い付けていた。

 がさがさと草木をかき分け彼が現れる。

 「おー、さすがミアだな。今日はご馳走だなー。」

 絶命した獲物・・・ウサギを眺めながらニコニコと笑う彼を見て頷く。

「あー・・・でも、捌くのはお願いしてもいいかな?どーもまだ慣れなくて・・・」

 いつもと同じようなやり取りをしながら草木をかき分け家へと戻る。彼はどうやら血生臭いのが苦手なようだ。


 食べるという行為は生きる為に行うものであり、それを楽しむという感覚は私にはなかった。むしろその行為自体が面倒で、腹が減るから仕方なく食べていたという方が正しい。味などどうでもいい、ただ腹を満たせればそれだけで。ただ、

「うまい!ミアの料理はホントにうまい!俺が口で説明しただけなのにちゃんとシチューになってるよ!ニンジンとかジャガイモとかよく見つけてきたねー。」

「そう。」

 彼がガツガツと私の作った料理を口に運ぶ。喜んでくれて嬉しい。内心ドキドキだった。食事というのは、人と一緒に生活するという事はこんなにも楽しい事だったんだ。

 彼との生活も4ヶ月が過ぎようとしていた。彼に初めて会った・・・いや、見つけたのは私の家の前だった。ここに人が来る事はありえない。私は驚愕した。

 そもそも私の住んでいるこの場所は深い森に覆われていて、自作の人払いの結界を敷いている。そのためこの場所に来たくても来れないし、迷い込む事もありえないのだ。それなのに彼は私の領域に落ちていた。

 最初に頭に浮かんだのは暗殺者。私の事を気に食わない国の者が寝込みを襲おうとしたのかと思った。が、その線はすぐに却下した。そもそも宮廷の人達は私の住んでいる場所を知らない。

 私は宮廷に行くときは、いつも転移の魔術を使って行っている。尾行など出来るはずがない。そもそも転移の魔術はこの国では私以外使えない。

 迷子か?いやそれもありえない。万が一魔術を打ち消す能力があったとして結界を破られたとしたら、その事に私が気が付かないはずがない。そしてこのニンゲンからは魔力が欠片も感じられない。

 そして私は彼に興味を持った。意識を失っているだけのようだったので私は回復を待った。2日ほど経過したところでようやく意識が戻った。いきなり奇声をあげられたので、攻撃されると思い身を隠し魔術を練っていた。そしたら何故か笑われてしまった。訳がわからない。

 私は人と接するのが非常に苦手だ。若い内に地位を得てしまったためか、私に取り入ろうとする大人や、小賢しい女共の嫉妬などでうんざりしてしまった。そのため人と喋る気が無くなってしまっていた。 喋らなくても相手が何を考えているか分かるようになっていた。


いや、なっていたと思っていたが正しい。


 彼が現れてからは私の世界は変わった。私がいかに傲慢だったのかを思い知らされた。私は彼が何をしたいのかがまったくわからなかった。もっと彼を知りたいと思うようになった。

 大きな問題があった。彼の話している言語がここの国のものではなかったのだ。魔力を通して解読するのに2ヶ月も掛かってしまった。はずかしい。

 彼と会話が出来るようになって分かった事がいくつかあった。彼はやはりこの世界のニンゲンではない。そして元の世界に戻る方法が検討も付いていないという事。

 私は出来る事なら彼を元の世界に戻してあげたい。私にいろんなものを与えてくれた彼に感謝しているし、幸せになって欲しいと心から思う。


こんな血生臭い世界に彼は居てはいけない。


■◇■◇■◇


「ミア様!」

「・・・」

 国印の装飾の施された鎧を着こんだ2mほどのトカゲの兵に呼び止められた。

「宮廷でお見かけするのは久々ですな。どうです?最近の調子は?」

 コクコクと頷く。

「そうですか。それは良かった。そういえばひと月前は驚きましたよ。ミア様からお願い事をされるとは・・・しかも木刀が欲しいと来たものだ。若い衆に声を掛けて調達させましたが本当にアレでよろしかったんですか?」

「・・・大丈夫、兵士長。本当に感謝している・・・。」

「ッ!!!あ、ありがたきお言葉ッ!」

「・・・あ、私は仕事が残っているのでここで失礼する。

「はっ!!」

 胸に手を当て頭を下げる兵士長を残しその場を立ち去った。

「・・・しゃべった・・・」

 と兵士長が呟いているのが聞こえた気がした。そういえば彼を除いて人と喋ったのはいつ以来だろうか?まぁ大したことではない。宮廷内をまっすぐ玉座の間へと進んで行く。

 一際大きな扉を開けた先には、目を閉じて立っている大臣と玉座に鎮座する王の姿があった。

「ミア殿、予定より早かったですね。」

 目を開いた大臣が語りかける。背丈は兵士長よりも小さく、乳白色の鱗に覆われた肌と黒髪、深緋の瞳が纏う雰囲気は気品にあふれている。


「して・・・ミアよ、我が国の結界の様子はどうなのだ?」


 玉座で片肘をついている王は、乳白色の鱗の肌と黒髪は大臣と同じだが、ふた回りほど大きな体躯を持ち、より鮮やかな猩々誹の瞳をこちらに向けている。

 突き刺すような視線を受けるが、王様は元々こんな人なので気にしない。持ってきていた銀の球状の魔術道具を床に転がした。


『現在の我が国の結界は・・・』


 銀の球からホログラムが浮かび上がり、国の全土の地図と隣国との境界線が表示される。魔石の配置、魔力の含有量などを表示し、次々と報告内容を進めていく。音声は事前に録音済み。

 国中を覆っている結界は起点となる祠に、ある程度の魔石を設置する事で結界を張れる仕組みになっている。ただし、石の魔力の量が減ると結界としての力が弱まる為、現状の魔力の貯蔵量を把握しておく必要がある。

「なるほど、問題はないようだな。この前開発した転移結晶も評判がよい。しかし・・・」

「・・・?」

「ミア、お主はちゃんと喋れるのだから、面倒かもしれぬがちゃんと喋りなさい。これも毎回言ってる気がするぞ。」

「・・・」

 王様は私とは遠い血縁関係にあたる。私は早くに両親を亡くした為、王様と大臣が面倒を見てくれていた。ちなみに大臣は王様の弟。

「兄上、まぁ良いではございませんか。昔に比べ、近頃はミア殿が明るくなったと兵の間で話題ですよ。」

「なに?そうなのか?なんだ・・・男が出来たから明るくなったなどとは、やはりミアも女の子なのだな・・・」

 どこか複雑な表情をして遠い目をしている王様とニコニコしている大臣。訂正とかツッコミとかめんどくさいから放置しておこう。無言で銀の球体を拾い上げる。

「・・・」

「今日も報告内容は完璧でした。・・・恋の相談なら、私も兄上もいつでも乗りますよ?くすくす・・・」

「うむ、ご苦労であった。」

「・・・」

 にこやかな王様と大臣を残し、玉座の間を後にした。


「疲れた・・・帰ろう・・・」


■◇■◇■◇


「綺麗なもんだなー。」

 自分で植えた種が芽を出し、すくすくと成長。そして今では綺麗な桜色の花が視界の一角を占めている。植物を育てるのって小学生の朝顔以来かもしれない。

「あんまり近づくといろいろ吸われる。精気とか。」

「何それこわい。」

 花との距離を若干取りつつ、水を撒いているミアを眺める。いつも通りの無表情だが、若干微笑んでいるように見えなくもない。

「・・・?」

「あ、いや・・・なんでもない。ちょっと質問していい?」

 コクコクと頷かれる。

「なんで、俺なんかを助けてくれたの?」

「・・・」

 自分のあごに手を当てて考え始めてしまった。目を閉じてうんうん唸りをあげている。

「なんで・・・だろうね?いろいろ細かい事の積み重ねで、偶然そうなっちゃったと言えばそれまでなんだけど・・・ただ、私はあなたが来たから少し変れた気がするよ。

退屈してた毎日から救ってくれたのは、間違いなくあなた。とても感謝しています。ありがとう。」

 深々とお辞儀をされてしまった。

「真面目だなー。感謝なら俺もしてるよ。退屈な毎日から救ってくれたっていうところはまったく同意見。こちらこそありがとう。」

「・・・帰りたく、ならない?」

「んー、帰りたくないといったら嘘になるだろうけど、方法が無いんじゃどうしようもないし・・・それよりも今はいろいろ見たり体験したいかなー?とか思ってるよ。」

「・・・ふーん。やっぱり変な人。ふふふ。」


 ミアが笑っている。

 

 最近はホントに柔らかい表情をするようになった気がする。何となく眺めていると目を逸らされてしまった。

「あー・・・あ、そうだ。この花はどうやって使うんだ?」

 何とも言えない雰囲気になっていたので、どうにか話題を探してその場を繋ぐ。

「この植物はサンシシという実がなる。細かく砕いてあるものを混ぜ合わせると魔力耐性が、かなり強くなる。魔術師相手にだったらすごく使えるはず。あとは、他の部分も別の事に使えたりする。まだ研究中。」

「なるほど、扱いを間違えると危険そうだ・・・」

「むやみに近づかない方がいいかも。もう少ししたら実が生ると思うからそれまで我慢。」

「そうします。」

「今日の作業はこれで終わり。私は用事があるので出かけてくる。」

「わかった、行ってらっしゃい。」

 こうして、ミアを見送るのが日課になっていた。ミアは出かけてからは半日以上は戻って来ないので、その間は俺の自由時間だ。素振りをしたり、一人分の食事を作ったりした後は湖に水を汲みに行く。

 全てやる事が終わったてもまだ時間のある時は近くを散策してみた。が、周りは鬱蒼とした森が続くばかり、歩き回ると迷子になる危険性がかなり高いので、木の幹に目印を付けながら奥へ奥へ。ただ同じような光景がずっと続く為、途中から帰れるかどうかの不安に負けて引き返す日々が続いた。

 途中で、ウサギやシカなどに出会いこそするものの、俺一人では捕まえる事が出来るはずもなく・・・ただ目が合っては逃げられる事の繰り返しだ。

 そんな日々が続くうちにひとつの疑問が浮かんだ。ミアはどうやって移動しているのだろう?今度聞いてみよう―。


 ゴアッ!!


 目の前を黒い影が突然横切った。考え事をして立ち止まって居なければまともに衝突していただろう。

「グルルルルッ・・・」

 突進を偶然でもかわされた黒い影は踵を返してこちらに向き直る。臨戦態勢の黒い狼がそこに居た。今にも飛びかかって来そうな形相だ。

「マジかよ・・・」

 一応護身用に持ち歩いていた木刀を握る。頭は混乱していたが構えると心なしか少し落ち着いた気がする。目線だけで周りを確認するが、コイツ以外に仲間は居ないらしい。

 にらみ合いを続けるうちに、状況が見えてきた。思いのほか狼は小さい。そして後ろ足を怪我しているようだった。よくよく観察すると、体もガリガリに見える。もう何日も食べてないのだろう。

 決死の覚悟で襲ってはみたものの、結局は対峙してしまって分が悪いと思っているのかもしれない。それならば・・・

「・・・もしかすると・・・」

 片手で木刀を持ったまま目線は逸らさずに腰から下げていた荷物を弄る。目当ての物を引き当てた感触があったので強引に引っ張りだした。

「ほい。」

 黒い狼に向かって投げたものはウサギの干し肉、綺麗な放物線を描いて地面に落ちた。警戒していた事もあり、狼は一度距離を取ってこちらの様子を伺っていたが、投げられたものが食べ物だと分かったらしい、こちらの警戒はしつつも干し肉を食べていた。

 豪快に肉を貪る様子は見てて関心するほどだった。2つほど投げた干し肉はあっという間に平らげられてしまった。食べ終わってこちらに目線を向ける様は「もっとないの?」と語りかけるように見えた。

「んー。しょうがない・・・」

 持っていた干し肉を全て投げる。今度は距離も取らずに律儀に待っていた。目の前に落ちたのを確認するとしっぽをブンブン振り回しながら夢中で食べていた。

「俺の飯だったんだぞ。味わって食えよ。」

 聞こえているとの意思表示なのだろうか耳をぴくぴくと動かして反応している。完食した後こちらに向かって大きなあくびを一つ。ぺたんと座りこちらを見つめたまま、しっぽをブンブンと振り回している。

「・・・なんだよ、もうないぞ。」

 言葉が通じるとは思えないが、狼に語りかける。先ほどまでの敵意はどこかへ行ってしまったようだ。木刀を構えるのをやめた。

「・・・帰るか。」

 お腹が減って来たので来た道を戻る事にした。食糧は全て狼に与えてしまったので何もない。一応安全圏だと思われるところまでは狼を見ながら距離を取った。動く様子は無い。

 ある程度の距離が取れた為、向き直り歩き出した。少し歩いて振り返ってみたら、狼はほぼ見えなくなっていた。

「ふぅ・・・焦った。」

 独り言が漏れる。足取りは重くゆっくりとした歩調で歩みを進める。振り返ると狼の姿はまた、ほぼ見えないままだった。数分歩いてまた振り返る、ほぼ見えないが姿は確認できる。また数分あるいて振り返る、姿は確認出来る・・・

「おいおい・・・」

 結局そのまま家までついて来てしまった。どうやら気に入られたらしい。怪我をしているのも気にはなっていたし、懐かれたら包帯くらい巻いてやろう。


■◇■◇■◇


「では、行ってくる。」

「うん、いってらっしゃい。」

 手を振りながら家を後にする。笑顔で見送ってくれる彼・・・と犬、この光景にようやく違和感を覚えなくなった。

 サンシシの実の収穫が終わり、一通り実験を行ったところ、思いのほか上手く行った。特に魔力を無力化する効果は絶大。私自身に使われた場合の対策を考えなければ危険という結論だ。対策の研究は引き続き行うとして・・・今日は宮廷への報告の日。

 もう一つの研究の方も、もう少しで上手く行きそうだ。こちらは趣味みたいなものなので、ゆっくりとやって行こう。

 それにしても、あの犬は何なのだ?彼に懐いているのはよく分かるが私が触れようとすると、これでもかと吠えてくる。ただ最近はウサギの猟などの活躍が目立つ。さすが狼といったところか。ただその後彼に褒められてる様子が気に食わない。くそう羨ましい・・・


「ミア様。」


「・・・!?」

 心臓が飛び出るかと思った。ギリギリ声も漏れてない。うん大丈夫。

「お久しぶりです。今日は王への報告の日でしたかな?」

 コクコクと兵士長に頷く。

「そうですか。・・・研究も大事ですが、あまりご無理はなさらぬようしてください。ミア様はこの国に必要な方なのですから。」

「・・・はい。心配ありがとうございます。」

「・・・ミア様は最近本当にお変わりになられたようだ。想い人が出来たという噂もあながち嘘ではないようですな。」

「・・・ッッ!ほ、報告があるので!これで!」

「はい。失礼いたします。」

 笑顔の兵士長と別れて玉座の間へと向かう。顔に出ているであろう熱を抑える事に全力を注ぐ。だいたい何なのだ?私が誰と付き合おうがあの人等には関係ないのではないのか?王様も大臣も、兵士長まで・・・

 思考をぐるぐるさせている内に玉座の間の扉の前に到着した。

「すーっ・・・はぁー・・・失礼します。」

 ひとつ大きく深呼吸をした後に大きな扉を開く。

「おお、ミア殿。」

「久しいな、ミア。して、例の物はどうなっているのだ?」

「・・・これを・・・」

 硝子の瓶を王様に渡す。と同時に銀の球体を転がした。

『この、硝子の瓶に入っている物は封魔の薬として使用できます。効果は絶大。私自身で実験してみましたが、それを浴びたものは一定時間、魔術が使えません。また、魔術の加護も打ち消す効果があります。

 一見、魔術師の対策には使えそうですが、欠点がいくつかあります。効果の範囲が狭い事。持続時間にばらつきがある事。そして今はそれに対して対応策が無い事があげられます。

 引き続き研究を行い、精度をあげると共に、仮に敵の手に渡った場合の対策を練る必要があると考えます。報告は以上です。』


「ほう、これはまた凄いものを作ったものだ。ミア自身にも効いたとなると、隣国の魔術師など敵ではないな。でかした!」

「さすがミア殿ですね。・・・あなたが敵でなくてよかった。」

「・・・いえ・・・」

 頭を下げ、自分に向けられた言葉を受ける。

「ただ、効力の増大がまだ見込めるのならばそちらを全力で進めよ。量産化はそれからだな・・・」

「そうですね。そのように努めてください。今日の報告も完璧でした。次回も期待していますよ。」

「はい、失礼します。」

 扉を開け玉座の間から出ていく。背後では王様と大臣が何かを話し合っているようだったがよく聞こえなかった。

 珍しく何も突っ込まれずに報告を終える事が出来た。早く彼の待つ私の家へと帰ろう―。


■◇■◇■◇


「・・・ただいま。」

「おかえりー。」

 ミアが帰ってきた。普段はげっそりして帰ってくる事が多いが、今回はそうでもない。研究の成果が認められたのかな?

「飯を作って待ってたんだ。早くたべ―」


「伏せて!」


ドゴォン!!!


 目の前で扉がバラバラになって行く中で緑色の巨体が部屋に侵入して来た。目では追えているが体が動かない。次の瞬間にはミアに突き飛ばされ部屋の奥へと追いやられていた。


「キィアアアアアアアアアアアアアア!!!」


 敵が奇声を上げながらミアに向かって何かを投げつけた。あれは・・・瓶?

「ハァッ!!」

 同じタイミングでミアが敵に向かって光熱の槍を放つ。しかし槍は敵に当たる事無く投げつけられた物と衝突した―。


「これはっ・・・しまっ―。」


バリィン!!


 硝子の瓶が割れ、中の液体がミアへと降り注ぐ。強烈な酸などであれば煙でも上がりそうだが、見た目では何も起こっていない。

 間髪入れずに緑の巨体がミアへと突進してくる。


 ドガッ!


「ぐッ―。」

 突進をモロにくらったミアは家の壁に叩きつけられ、そのままずるずるとへたり込んでしまった。転がっていた黒檀の木刀を無意識に拾っていた。


「ミア!」


ミアに近づこうとしていた緑の巨体、巨大なトカゲに向かって行く。

「フォオオルァォウアァアアアァ!グワッシャ!!!」

「ミアから離れろッ!!!」


 ゴスッ!!!


 トカゲに全力の突進を食らわせる。そのままの勢いで転がりながら家の外に出る。お互いに体制を立て直して向き合う。外は暗いが相手の姿をようやくじっくり見る事が出来た。2mほどもあるトカゲが鎧を纏っている。

 対峙しているが相手は何もして来ない。俺は木刀を構えてじりじりと間合いを詰める。

「ファッ!!ワッシッ!!!」

「何言ってるか分かんねぇんだよ!!!」

 トカゲが両方の腕を振り回しながら突進してくる。


 ブゥン!ガギギギッ!!


 右腕はギリギリで回避、左の爪は木刀の腹で受け流す―。完全に空いたトカゲの脳天に渾身の一撃を振り下ろす―。

「食らえ!トカゲ野郎!!!」


 ドゴスッ!!!


「クアァアアア!!!」

 一際大きい叫び声を上げると、でかい緑のトカゲは倒れて動かなくなった。どうやら効いたらしい。

「なんとか・・・はぁ・・・かてた・・・。」

 肩で息をしながら家の方を見る。

「マジ・・・かよ・・・」

 白っぽい鱗肌の男が爪を振りかざしながら全力で走ってくる様が見えた。

「フアアアッ!!!」

 振り下ろされる必殺の爪を、先ほどの戦闘でぼろぼろになった木刀で受けようとする。このまま受ければ確実に折れてしまうだろう。終わった・・・―。


「ガァアア!!」


ドゴン!!!


 目の前で白っぽい鱗肌の男が吹っ飛んでいく。真横から黒い弾丸のような速度でクロが突進を食らわせたのだ。

「クロ!!!よくやった!!!」

 クロはしばらく唸っていたが、相手が家にぶち当たり動かないのを確認してかこちらに向かってきた。

鱗肌の男は完全にのびているようだ。

「くぅーん・・・」

「よしよし。お前ホントありがとう!・・・さてこいつらどうするか・・・ってミアも起こさなきゃな・・・」


 とりあえず巨大なトカゲ男と白い鱗肌男をロープでぐるぐる巻きにした。


■◇■◇■◇


「どういう事なんですかっ!」

「「・・・」」

「黙ってたら分からないでしょう!?」

 ミアが先ほどの侵入者にお説教をしている。侵入者とはどうやら知り合いのようだ。

 俺はミア以外のヒトの話は理解出来ないから黙って居る事にした。

「なんでこんな事したんですかっ!」

「・・・」

「いい大人なんですから!やって良い事と悪い事の区別くらいつくでしょう!?」

「・・・ふしゃあぁ」

 トカゲと白いヒトがどんどん小さくなっていく。

「ちょっと王様に文句言ってくる。」

「お、おう。お手柔らかにな。」


「いってきます!」


 2人?の襟首を掴んだまま目の前からミアが消えた。

「おー、あれが転移魔術かー。」

 妙な感想だけがその場に残った。

「さて、片づけますかね―。」


■◇■◇■◇


「本当にごめんなさい!」

「いいよー無事だったんだし、それにミアのせいじゃないでしょ?」

「でも・・・」


 事の顛末はこうだ。ミアが作った薬と転移結晶を試すと同時に、戦闘の訓練も兼ねてミアの家を大臣と兵士長が襲撃したのだ。王の勅命で。

 ミアは魔術にこだわる癖がついているので魔術を使えない状況を作り出せば勝てるという作戦だったとか・・・

「あーでも、俺はミア以外の人と話せないから誤解があっても解けないのも原因かもなー・・・」

「あ、それなら・・・これ。」

 差し出されたのは黄色い石が散りばめられた銀の指輪。

「つけろってこと?」

「うん。」

 言われるがままに左の人差し指につけてみる。

「どう?」

「どう?って言われても・・・ミアとは普通に話せるし・・・」

「今、私は魔術を通してあなたと会話していない。ここの国の言語を使用している。」

「ということは・・・ミア以外のヒトとも喋れるって事?」

「そういうことになる。あと、あなたは一度宮廷に行かなければならない。」

「へ?なんで?」

「私が説明しても納得してくれない。一緒に王様と話をして欲しい。」

「・・・兵士長と大臣に怪我させちゃったしなー・・・俺死刑?」

「そこは大丈夫!私が守る!」

 胸を叩き任せとけ!と言わんばかりのミア。

「うん。ミアがそう言うのなら大丈夫だろ。」

「わかった。それじゃあ今から行く。」

「え?―。」


肩を掴まれた。一瞬視界が歪んだ気がした、落ちるような昇るようなふわふわした感覚。


「目を開けて、着いた。」


 いつの間にかに目を瞑っていたらしい。

「おお―。ってもう少し心の準備をさせて欲しかった。」

「何?」

「いえ、なんでもないデス・・・」

 目の前に大きな金縁の扉がある。王様の居る部屋の扉なのだろうか?いきなり現れた俺達に城内がザワついている。ミアは見慣れているだろうが俺は珍しいのだろう。視線が痛い。

「ミアです。失礼します。」

 そんな様子はお構いなしにミアが大きな金縁の扉を開く。その場に居たのは3人。この前家に侵入して来た2人と、玉座に鎮座している乳白色の鱗肌をしたでかいヒト、このヒトが王様なのだろう。

「よく来た、ミア。ニンゲン、そなたもちこう寄れ。」

「して、ミアよ。まだ怒っているのか?」

「当たり前です!」

「だがな、お主は魔術に頼り過ぎな点がある。それは魔術が使えない状況下に置いては死を意味する事であってな―。」

「前にも言いましたが、それならそういう趣旨の訓練を宮廷でやればいいでしょう!?わざわざ私の家に押しかけて家を壊すのが王様の命令ですか!?」

 うわーめっちゃ怒ってる。こんなミア初めて見た。

「むー。その件は謝っているではないか。」

 何となくだがこの王様は悪いヒトではないような気がする。部下にこれだけ言わせても大丈夫な関係を築けているのだろう。

「この話は埒があかん、ニンゲンよ。お前はミアとはその・・・どういう関係なのだ?」

 急にこっちに話題が飛んできた。緊張はしていたが先ほどの王様とミアとのやりとりを見てるといくらかほぐれた。

「えー・・・ミアさんは私の命の恩人です。行き倒れていた私を救ってくれました。そして、この国では私のような者が出歩くと殺されるかもしれないと心配してくれて、保護してもらってました。」

「ふむ・・・。お前はどこから来たのだ?目的はなんだ?」

「私は・・・私のような者が沢山居る、遠いところから連れてこられました・・・なのでここでの目的は特にはありません。願うとすれば・・・元の、故郷に戻る事でしょうか?」

「拉致されたということか、お前に如何ほどの価値があるのかはワシには分からぬが・・・お前はここが嫌いか?」


 このヒトは何を聞きたいのだろう?


「私は、私はこの国ではミアさんと半年間一緒に過ごしてきたあの家しか知りません。ただ、あの家はもう・・・俺の家なんです。」

「ふふ・・・ふははは!!聞いたか大臣、兵士長よ・・・おぬしらが証人だ。おい、ニンゲン!我が国はお前を歓迎するぞ!」

「・・・あ、ありがとうございます!」

 その場にいた皆が幸せそうに笑っている。何故かミアだけは下を向いていた。表情は見えなかったが、耳まで真っ赤だった。


■◇■◇■◇


「ふぅ・・・」

 ようやく一息つけた。いろいろドタバタしてゆっくりする暇がなかった。家の外の草むらで、ぼーっと空を眺めて居るとクロがウサギを咥えて走って来ている。怪我が治ってからは自分でも狩りが出来るようになったので、腹が減ったら近くで狩りをしている様だ。


「わん!(おかえりなさぁい)」


「ただいま、怪我の調子はどう?」

「わんわん!(もう大丈夫よぉ、あなたには感謝してるんだからぁ)」

「あはは、言いすぎだろ・・・ってお前」

「わん?(なぁに?)」

「言葉通じてんじゃん!どういう事!?」

「わん?わんわん!くぅーん・・・(さぁ?あの小娘が何かしたんじゃないのぉ?あなたと話せるのは嬉しいけど、それが小娘の力だとなんだか癪に障るわね・・・)」

「・・・クロ、お前・・・ミア嫌いなの?」

「わん!わん!(嫌いよ!恋のライバルなんだからっ!)」

「意味わかんない。まぁ・・・いいか。」

「わん!(じゃあ、私はこのウサギちゃん食べてくるからぁ)」

「はいはい、またね。」

 クロが森の中へ駈け出して行った。

「あいつ、あんな口調だったのか・・・」

 草むらに寝転がり、青空を見上げる。乾いた風が森をざわざわさせている。


「よう。」


「!?」

「久しぶりだなァ。この世界・・・ツミカボシアに馴染んでるじゃねぇか。」

「お前・・・俺をここに連れてきたやつだな・・・」

 辺りを見回すが姿は見えない。ただ、声は耳元で確実に聞こえる。

「そうそう、覚えててくれて嬉しいよ。どうだ?楽しい事沢山あっただろ?」

「ふざけんな!!!」

「おいおい、お前が言ってた事だぜ?今更『あれは嘘なんですぅ、カッコつけたかっただけなんですぅ』とか言うのかい?」

「・・・いい加減にしろよ・・・目的は何なんだ!」

「目的?俺の目的はいつもひとつさ。もっと俺を楽しませろ。」

「・・・どういうことだ?」

「そのまんまさァ・・・俺は退屈なんだよ。俺はずっとお前を見てる、お前がこのツミカボシアで何をして、何を成すか・・・」

「お前・・・何者だよ?・・・」

「俺?俺は神様。星の神様だよ。・・・そうだなァ、お前がこの世界の戦争やらなんやらを全て無くして、ぜェーんぶ解決して平和とやらに出来たら元の世界に戻してやんよ。」

「・・・」

「まァせいぜい頑張りなー。期待してっぞ、ニ・ン・ゲ・ンさま。」

 それだけ言うと、神とやらからの声は消えた。

「・・・そんな・・・理由で・・・ふざけんなっ!」


ゴッ!


 地面に拳を突き立てる、鋭い痛みが右手に走るが、そんなものはどうでもいい。

「・・・」

 へたり込んで茫然として、時間だけが過ぎて行く。

「どうしたの?」

 ミアが家から駆けよって来る。

「・・・ん、ここに来た理由が分かったんだよ。」

「そう・・・なんだか辛そう・・・」

「ミア・・・ありがとう・・・でも大丈夫。これから俺が何をするべきか分かったんだ。ちょっと相談に乗ってくれない?」

「うん。私が出来る事なら、なんでも。」

「そうだなー。手始めにさ・・・」

「ん?何?」

「俺を名前で呼んでくれないかな?」

「どうして?」

「俺はニンゲンとしてではなくて、俺として成し遂げたいんだ。」

「そう、分かった。」


「俺の名前は―――。」

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