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プロローグ・前編

 記憶魔法師。魔法を行使する者は世間ではそう呼称される。

 人間の記憶を抽出、加工、洗浄、などの過程を経て物質化された魔法食レーションを食すことで海馬に存在する記憶領域に記憶を貯蔵し、その記憶を術式構築演算補助装置グリモワール・デバイス・Grimoire Deviceに伝達させることで、記憶魔法師は森羅万象に作用する神秘の力、魔法を発動させる。

しかし、ただ記憶を流し込んだだけでは、すぐに魔法は霧散してしまう。そこで登場するのが情緒である。

 魔法師の持つそのデバイスの内部には、送り込まれた記憶を電子的に喜怒哀楽に分類する機構が備わっており、その記憶を媒介にして構築した術式を、可視光線で描かれた魔法陣に通すことで、初めて魔法は発動される。

 喜びと哀しみの記憶を媒介に発動される魔法は精神干渉系魔法、怒りと楽しみの記憶を媒体に発動される魔法は物理干渉系魔法。 

 記憶魔法師としての素質は遺伝または遺伝子の純粋に先天的な、突然変異で備わるものであるが、その魔法を一つの事象として具現化させるという技能を発揮するためには、デバイスが必要不可欠である。逆に言えばデバイスさえあれば、魔法を共有・普及、または発現させることは可能だということだ。

 無論、才能や高い適性を有する者のみが度重なる研鑽によって熟達し、プロフェッショナルという分野へと上り詰めるという点においては、芸術や科学、スポーツといった分野と同じである。

 そのため現在、世界人口の四分の二近くは記憶魔法師であり技術体系化された、特に戦略級と称される魔法は核兵器に匹敵し、それを行使する魔法師は国家にとって絶対的な武力であり、兵器であり世界の均衡を崩しかねない危険人物である。言わば世界の統治すら成し得るやもしれぬ存在。

 このご時世、統一される気配すら見せぬ人類世界においてそのような魔法師は脅威であり、よってその真実を理解している先進国は、我先にと戦略級魔法師を誕生させるために莫大な金銭と労力と技術を投入し、記憶魔法師の育成に競って取り組んでいる現状である。

 日本もまたその例に漏れず、政府は東京、大阪、福岡、宮城を含む四つの主要都市に中高一貫の国立魔法学校を設立した。国を上げて設置された高等魔法教育機関の中でも、最多数の優秀なる魔法師を有名な国立魔法大学や大手企業へと輩出しているのが国立魔法学校付属桜峰高校である。いわばエリート校である。

 しかしながらその教育方針は極めて厳しい。しかしそれも当然である。国は戦略級の魔法師の誕生を目的としているので、その教育機会を均等化する必要性は皆無なのである。才能を篩いにかけ優等生と劣等生に判別されたその世界に、『皆が平等』という甘ったれた理想論の介在は断固許されないのである。

 魔法師の世界は弱肉強食の実力主義であり、残酷に冷酷に冷徹なまでに徹底された才能主義である。

 しかしそれでもこの学校に入学を許された時点でエリートであることは間違いない。だがしかし入学の時点から優等と劣等という歴然とした差は揺るがない。

 最初から平等ではない新入生になることは兄妹も承知していた。だが彼らは僥倖ともいえる幸運を手にした。

 その幸運は今年の四月から副会長に就任したある少女からもたらされた。

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