第121話:仮面の演説と三つ巴の戦火
ライラの冷酷な宣戦布告が世界中に響き渡り、静寂が訪れた直後のことだった。
ネオ東京ギャラクシーツリーが掌握していた全波緊急放送の画面に、突如として激しいノイズが走った。ライラの青い光を強引に上書きし、電波をジャックし返した人物が画面中央に現れる。
深々と被ったフード、顔を覆う無機質な仮面、そしてボイスチェンジャーで不気味に歪められた重低音。
過激派組織『レッドエコーズ』の絶対的リーダー――喜。
『……聞こえているか、この戦いに興味のない者どもよ』
喜はあざ笑うかのように、カメラの向こうにいる世界中の人々へと語りかけ始めた。
『あの上空で偉そうに選別を語る女の狂言に惑わされるな。能力者だの日本人だのと宣い、自分たちだけが特別な存在だと錯覚した化け物どもが、力で世界を支配しようとしているのだ!』
喜は拳を強く握りしめ、言葉を畳みかける。
『自分には関係ない、政治など興味ないと目を背けてきた無知な者たちよ! お前たちが怯えて逃げ惑う間に、あの能力者どもはお前たちの生きる権利すら奪い去るぞ! 武器を取れ! 愚かな化け物どもを、この地上から一匹残らず排除するのだ!!』
「……あいつ、よくもライラ様の電波をジャックし返してくれたねぇ」
ツリーの最上層で、メグが爪を噛みながら苛立ちを露わにする。ライラもまた、不快そうに目を細めてモニターの仮面の男を睨みつけていた。
ーーー
一方、崩壊した街の路上でその演説を見上げるレインたち。
「レッドエコーズのリーダー……喜。あいつが非能力者たちを煽り、全面的に暴動へ踏み切らせるつもりですわ」
エリカが扇子を強く握り締める。
「ライラたちの『能力者優生思想』」
「喜が率いる『レッドエコーズ』」
「そして、真相を解き明かし狂気を止めるための『僕たち』」
ミカムラが静かに語り、決意を込めてツリーを見上げた。
「三つ巴……いや、世界を巻き込んだ最後の泥沼の戦争が、始まるんだ」
例示学園と蘭王学園の混合チーム、ライラ率いる選別者たち、そして謎多き仮面の男・喜が率いる過激派組織。世界を三分する巨大な戦火の火蓋が、いま静かに切り落とされた。




