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勇者の贖罪  作者:
2章 『ロード村』
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16.『歯車の絡み合い』


――見つけ出せ、セグルドの魔法の正体...その鍵を!


「とか思ってる、と思ったんだけどなぁ...。」


屋根の上に残されたのは、セグルドただ一人だった。

フェイとセレナどころか、先程まで大量に居たフリューバエの大群もどこかへ飛んで行ってしまった。


「...あのガキ、『転移』を最大限引き出す為、魔力を溜めてたなぁ...!クソッ、どこ行った。そう簡単には見つからないぞ、コレ。」


赤髪を掻きむしり、感情剥き出しで怒り出すセグルド。傷付いた服には目も向けず、歯ぎしりを立てる。


「...クッソ、見立ては正しかったけど...。『転移事件』で、セレナは世界のどこかへ飛んで行った...。『転移』を行ったのはセレナだろうし、その魔術師本人なら、モロに魔法を受けたハズ。」


指を咥えながら、オッドアイの目を細めて空を見る。


「一番魔法を受けたのなら、一番遠い場所に転移されたハズ...つまり、魔王城から一番遠いここ、ロード村まで飛ばされたと、僕の予測は完璧だったのに...!」


今度は屋根を踏みつけて地団駄を踏み始める。


「なんなんだよ!どうして、どいつもこいつも僕の夢の邪魔をする!?どうすれば――」


ふと、下を見る。


道を走り回る村人達が大勢居た。どうやらパニックになっているらしい。何かアクシデントでも起きたのか。


「...あ、僕が結界壊しちゃったから?」


自分が原因である可能性を考えて、再び視線を空に戻す。


「なんだぁ、結界壊れたぐらいでうるさい連中........なんで、結界なんか張ってた?」


疑問が走る。こんな村の防御結界にしては大袈裟過ぎるし、結界術の中でもまぁまぁの部類になるくらいには立派な出来だった。(余裕で壊せたけど。)


「何より、壊した時思ったけど、あの結界....外部から守る、と言うより閉じ込める結界だった。」


結界の使い方は様々。だが、大きな街でよく使われる防御結界は、魔獣や魔族の侵入を防ぐ為、外部からの侵入と破壊に耐えられるよう、つくられている。


「だが、アレは完全に外部からの攻撃の線を捨てた結界だった。」


外部からの破壊が容易い、セグルド自身が強いというのもあるかもしれないが、それでは言い訳できぬほどの強度だ。


「...閉じ込めたい奴らがいたのか。」


結界を破壊した時に、見た光景は――


――村中走り回る村人達。


――噴水広場で結界の破壊に驚いていた恐らく、結界を張った張本人。


――屋根上でボロボロになった騎士とその横で怯えるセレナの姿。


少し考えた後、脳裏に電撃が走った様な感覚になる。


「はっ、そういう事か。」


不敵な笑みと共に、セグルドは何かを悟った。


――――――


「...セレナ様の、おかげです。...ここまで逃げれたのは。」


暗い細道で、血だらけの騎士が少女に向かってそう言った。欠損した右腕を再生させながら、生臭い血の匂いを漂わせる。


「フェイが時間を稼いでくれたから...それより、これで本当に良かったのかな。」


「...分からない。僕はもう、分からないんです。」


ふわっと髪をかきあげて、フェイは細い道に差し込む太陽の光を見つめる。


「僕は、何を信じればいいのか分からない。真面目に、素直に生きていても、どうしようもない理不尽はやがてやってくる。」


「...」


「分かっていた、そんな世の不条理については分かっているつもりだった。」


「...フェイは、ちゃんとやってると思うよ?」


セレナの言葉が、心に染みる。

でも、今はその言葉だけで立ち直れる程の精神状態ではない。


「...ちゃんとやってても、どうしようもない事はあるんです。そんな時は、もう逃げるしかないんですよ。」


凍てつく空気で、セレナもどう接すればいいのか分からず、長い沈黙が2人を包んだ。

やるせない気持ちはどんどん膨れ上がって行き、フェイの心を汚染していく。


「さて、セレナ様。追っ手が来る前にこの村からは出ましょう。」


「うん、でも...ジュエリーさんは...」


「もうそれどころでは無くなった。僕には、誰かを助ける力は無いようでして、力不足で面目無いです。」


「...!」


フェイは笑った。乾いていて、悲しそうな笑顔だった。セレナはそれに対して何も返す事が出来ず、再び沈黙が襲う。


それでも、不条理は彼等を待ってはくれない。


「っ!フェイ!あれ!」


セレナが突然、自身の影が消えていくのを目にして顔をあげる。すると、青い空に漆黒の結界が生み出されていた。


それは、先程張ってあった結界と同じ様に見えるが、明確に、黒が濃くなっていた。


「...セグルドですね、僕達を逃がさないつもりだ。」


「せっかく結界が解けたと思ったのに...。」


再び結界による包囲に逆戻りとなり、項垂れる2人。


「ですが、セグルドがこの手段に移行したという事は、明確な位置を割り出せていないという証拠です。確実に見つけ出す為に閉じ込めているんですから。」


「でも、このままじゃいずれ見つかっちゃう...。」


「そうですね...正直今は村人達よりもセグルド1人の方が圧倒的に危険だ。注意し続けなければ...」



「――へぇ〜、村人は眼中にねぇってか。随分と低く見積もられたものだね。」


突如、細道の向こうから、知らない声が飛んで来る。


「誰だっ!」


「――はい、ロック。もう逃げられないから。」


「...は?」


フェイとセレナを見つめて、「ロック」と放ったのは、とある青年だった。

青年は懐から円形の物体を取り出し口元に当てた。


「聞こえるか?ダール、見つけたよ。フェイ・ハイル。」


ニックス・ドルトムントは、不敵な笑みを浮かべて、道具にそう語りかけた。


――――――


「っ!?本当か!ニックス!」


深い森の中を駆け巡るダールは、突如発信されたニックスからの情報に、足を止める。


『ほんとほんと、今ロックしたからこれで逃げられないよ。』


「よくやった、すぐ向かう。場所教えろ。」


『俺ん家の横道だよ。』


「...お前、何してた?」


『へ?いや、家でダラダラしてたら横が騒がしくて――』


「ぶっ殺してやろうか!?」


『いや、結界勝手に解放されたからもういいかなーって思って...って、んなことどーでもいいだろ?捕まえたんだから、許して。それより戻って来れんの?何かまた変な結界張られてるけど。』


「ん?これ村長のじゃなかったのか、まぁいい。とにかく、すぐそっちに――」


ダールは、ニックスと通信しながらも、急いで逆戻りしていた。

しかし、極度の方向音痴であったダールがそのまま逆走出来る訳もなく、抜けた先には、


見晴らしの良い草原があった。


「――――」


緑豊かな葉が風に揺られている。

ロード村が一望出来るこの場所はダールも良く知っている穴場スポットだった。

しかし、そんな穴場スポットに見覚えのないものがある。


白く大きな獣が草原に座り込んでいる。


だが、ダールの目が捉えたのはそれだけではなかった。


「――ん?え、誰?」


白い髪、青い瞳、見覚えのある面がそこにはあった。

鎖で大地に留められているその男、


知っている。忘れない。忘れるわけが無い男。


『...ダール?おい、ダー――――』


通信機を即座に切り、ダールは自身の腰にかけてあった、"護身用"の剣に手を伸ばした。


「...やる気みたいだな。」


男はダールの仕草に気が付き、冷や汗をかきながらニヤッと笑う。それがたまらなく腹立たしい。


殺す。ぶっ殺す。ぶち殺したい。


ジュエリーを、壊した、張本人――




「ルイ・レルゼンッ!!!!!!!!!!」


「はっ!上等だ!かかって....って、待て!鎖!鎖だけ外し――」


振りかざされた剣は、ルイ目掛けて飛んで来る。


――――――


「これが、貴様らの正義か!?セリシア騎士団!」


破損した馬車に身体を押し付けられ、今にも窒息死しそうな老人は、血反吐を吐きながらそう叫んだ。

馬は倒れ、森の木々に荷台が絡まり動けない。


「――――」


重症のジュエリーは、地面にほっぽり出され無防備に倒れてしまっている。既に瀕死の彼女に更に命の危機が迫る。


「医者として...ロード村を支えた医者として、ここでジュエリーを見捨てる訳にはいかんのだ!ワシに、この子を助けさせてくれっ!!!!」


「とか言って、あんたじゃどうしようもならないから教会連れてこうとした訳でしょ?はっ!自分の力不足を恨みな、じいさん。」


「...っ!これが、騎士なのか...本当に...」


「それが、本当なんですよ。本当の本当に、セリシア騎士団 6番隊隊長ファルス・ヘーベルなんですよ。」


と、金髪の騎士はそう乾いた笑みで老人を見下しながら語った。


「一瞬でも見過ごさなかった、急いで走る馬車の後ろで眠る女...ソイツは ジュエリー・レルゼンで間違いない。」


「だから...なんだ!」


「皆まで言わせんなよ。"レルゼン"だぞ?生かしておく価値ねぇだろ。『悪魔の一族』って呼ばれてんだぜ?」


「この子は関係ないだろ!」


「うるせぇからガタガタ騒ぐな。んなもんこっちはどうでもいいの。世間的に"レルゼン"を討てば俺の株が上がるだろ?少しは考えろや。」


ファルス・ヘーベル、彼の騎士としての生き方は断固として変わる事はなく、賢く生きる為になら、ありとあらゆる方法を使う。


「さぁて、セレナ様助けて、レルゼンぶっ潰して、とんでもねぇ勢いで出世しちゃうなぁ、こりゃ。」


「...ファルス様、本当にこれで...」


「っ!シャイル、アンタは黙ってなさい...これは、仕方ないことよ。」


「...だが、ミルーラ...」


背後で2人の騎士が戸惑いを隠せない様子であった。


「はは、今に見てろよ...フェイ、テメェを越すのももう時期だぜ。」


ファルスのその呟きを聞いた者は居なかった。




結界内 中心部では村長が結界術の打開策を模索中。

結界内 北部ではフェイ、セレナがニックスと接触。

結界内 北東部ではセグルドが結界術を張っている。


結界外 北西部ではジュエリーを乗せた教会に向かう馬車と突如現れた結界の解析中であったセリシア騎士団接触。

結界外 東部ではルイとダールが接触。


ロード村は混沌を極める。

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