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勇者の贖罪  作者:
2章 『ロード村』
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9.『黒澤 零の贖罪』


――お前は、強大な力を手に入れたらどうしたい?



------------------------



停学期間が終え、零が教室に入ると、クラス中から冷ややかな視線が集まるのが分かった。

何とかして文化祭はやり過ごしたのだろうけど、零によって壊滅的な被害を受けたこともあり、思う様な結果にはならなかっただろう。


「黒澤、ちょっと良いか。」


背中をポンと叩かれ、後ろを振り返ると、真剣な眼差しの川口が立っていた。

正直、面倒臭いから無視してやりたかったが、渋々彼の後ろをついて行くことにした。


「ちゃんと、話し合う必要があると思ったんだ。」


「話し合うこと...ねぇ。」


「お前の言い分聞いた時、ふざけんなって思って、俺もカッとなった部分があった。でも、それでも、お前をあそこまで追い込んだのは、俺達なのかもしれなくて...」


--あぁ、なんだろう、この感じ。


川口は、本当に良い奴なんだろう。全て、嘘偽りの無い彼の本心であろう。だからこそ、


「黙れよ。」


「...なんでだよ」


「お前、ほんっと気持ちわりぃよ...!どこまで行っても、お前は自分の株の事しか考えられない奴なんだよ。俺を踏み台にして勝手に気持ち良くなろうとすんな。」


憎しい。


憎たらしい。


なんで、お前はどこまで行っても俺を気にかけてくれるんだ?ここまで気にかけてくれるのはもう、お前がただの良い奴っていう結論にしか導かれないんだよ。


それが、歯がゆい。自分の性格の悪さが憎い。

でも、それを認めたら、自分の負けだ。


――俺は、負けない。


「悪いのは、お前らだっ!!!」


零の怒号は廊下の中で轟いた。


目を瞑りながら叫んだ為、川口の顔は見れない。

呆れてるだろう、怒りに震えてるかもしれない。




「俺は、お前を助けたい。黒澤。」




「....な、んで」



川口は、本当に良い奴だ。


零は、川口の言葉を聞いた途端、走って教室まで逃げ込み、自席に着いて顔をうずめた。


周囲の冷たい視線を肌で感じながらも、必死に外界との接触を遮断するよう努めた。


それからも、川口は何度も零に対して話し合いの場を設けようとしたが、結局、それが叶うことは無く卒業を迎えた。


卒業式、零は誰とも写真を撮る事なく式を終えた直後は家まで直帰しようとした。


「黒澤」


すると、教室を出ようとする零の肩を叩いたのは、川口――ではなかった。


「....ぇ」


「写真、撮るよ!最後なんだから!」


クラス長である佐藤が、あろうことか黒澤を呼び止めたのだ。

多分、誰よりも零の事を憎んで、誰よりも零の事を許したくないであろう女。


なんで、どうして、疑問が頭を埋め尽くす。


「黒澤!お前もC組だろ!?」


川口が相変わらず眩しい笑顔で零を後押しする。

もっと、早く気付けていたら、結果は違ったかもしれない。


もっと、彼等を知っていたら、関係性は変わっていたかもしれない。


その時、卒業式のその時、黒澤を睨む視線は、もうどこにも無かったのだ。本当に、誰一人として、彼を憎んでいなかった。


――なんで...なんで、こんなに....優しいんだよっ!


それが、零にとってあまりにも歯がゆくて、耐えられなかった。だから、







黒澤 零は、最後も逃げた。



------------------------


『じゃあ、結局何がしたかったの?』


それは、問いかけだった。

脳の中に眠る小学校の教室の中で、椅子に座っている少年がそう問いかけてきた。

まだ、目は光を宿しており、純粋無垢な気持ちが残っている少年時代の零が居た。


「俺は、ただ自分を正当化したかっただけなんだ...俺をこうした皆が悪い、世界が悪いって、必死に自分を守る言い訳を探してたんだよ。」


『それだけで、あんなに酷い事言えちゃうの?良くしてくれた人にも。それに、皆もう許してくれてたじゃん。』


「許す、許さないじゃない。アレは、強いて言えば、アレが俺の謝り方だった。」


『...ん?』


「俺は、あのクラスにいちゃいけない奴だったんだ。邪魔でしかない邪魔物。だから、俺があのクラスに戻ることは、俺が許せなくて、俺の、誠意だ。」


『ふーん....まぁ結局、全部自分のせいってことは分かってるんだね。』


「そうだなぁ...俺の、せいだ。川口に言ったことも、保身しか考えてないガキの逆ギレそのままだ。」


『まぁ元気出せよ、俺。悪い所理解できたんだろ?なら、もう成長だ』


「...なぁ、俺。」


『ん?』


「一つ、良いか?」


『なに?』


「――お前は、強大な力を手に入れたらどうしたい?」


『...突然だね。』


「いいから答えてくれ。」


『う〜ん、そりゃあ皆を守るスーパーヒーローとか、英雄とかでしょ!』


「...っはは、だよなぁ。やっぱ...そうなりたいよなぁ。」


『未来の俺は違うの?』


「...俺はさ......皆を、殺したいと、思っちゃってるんだ。」


『.........』


「結局、性格なんて形成された時点でもう変わることなんて無い。俺のこの薄汚れた性格は、異世界に行ってもセットなんだ。」


『....』


「変われた、ってそう思えてたんだ。本当に。でも、フェイの魔法で本心を晒け出して、理解したよ。俺は、俺なんだって。もしかしたらさ、俺の言う『悪党』"ルイ・レルゼン"も、普通に、俺で....力を持っちまった陰キャなガキが、馬鹿みたいに...」


『俺!』


「...ぇ」


『過去は変わらない。お前が現実世界でやらかした事は消えないし、償う機会ももう二度と訪れない。』


「...」


『でも、未来は変わる、そうだろ?だって、お前は死ぬ時、何を思った?』


「...凄い...人間に...」


『なるんだろっ!?なって見せろよ!黒澤 零!!!性格は変わらない?知るかっ!なら、そのクソな性格は一生封印してろ!現実世界に置いていけ!』


「...でも、俺は何を」


『お前はいっぱい間違った。異世界での事は知らん、現実世界でのお前だ!現実世界で、お前は何度も何度も何度も何度も何度も!人を傷付けてきた!悲しませてきた!迷惑をかけた!ならっ!!!!』


「...なら」


『今度は、お前がいっぱい人を助ける番だろ。』


教室が、崩れて行く。意識が、再び世界へ再臨しようとする。


「俺は...助ければ...良いのか?それで、償いきれるのか?」


『償いきれるなんて甘い考え方するな!人間なんて生きてるだけで迷惑かけてんだ!だったら、常に償い続けないと足りる訳無いだろ!?』


「――っ!」


『さぁ、行け。俺。こっからは、俺の、俺達の――』



「――あぁ、"ルイ"でも、ルイでもない、こっから先は....」







『「黒澤(くろさわ) (れい)の贖罪だ。』」



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