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勇者の贖罪  作者:
2章 『ロード村』
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3.『感動の再会』

2人の親子が感動の再会を果たしていた。


「えっと...あれ?」


浮かぶ涙と疑問。ジュエリーからは、母は"ルイ"によって殺されたと聞いていたが、しっかりと生きている。


「....ルイ、おか...えり。」


「...ただいま、お母さん。」


2回目のただいま。きっと、どんな犯罪者であろうと、しばらくぶりに会うと、母というのは感動するもの...


「おかえりなさい、ルイィ.....あ....ああ......ルイ...おかえりなさい。」


「...お母...さん?」


様子が、明らかにおかしい。


「おかえりなさい、おかえりなさい。おかえりなさい、おかえりなさい。」


「ちょ、ちょちょ、お母さん、分かったって。一旦落ち着--」


「ああ、ルイ...おかえり...あぁ...な.....あぁああ!!!!」


「はっ!?!?」


母は、突然ベッドから身体を出して床に落ちる。

上半身だけで動こうとする様子は、まるでゾンビのようだ。


「...ぁ」


「あぁ...ル...おか...あああああああああああああ」


「はぁ..?」


「ああああああああああああああああああああ」


母は、床に頭を打ち付け始めた。

ドンドンと床をきしませる音が鳴り響く。


「...っ!」


見ると、母の腕には無数のリスカの跡。壁も所々穴が空いている。

そうか、そういうことか。


「...あぁ」


「ああああああああああああああああああああ」


"ルイ・レルゼン"は、確かに、母親を殺していた。


「--もう、無理!」


すると、扉を開けて入ってくる一人の少女、ジュエリーだ。

ジュエリーは頭を打ち付け続ける母をだきしめながら、ベッド上へ送還する。


荒れ狂いジュエリーの事を抱きしめていた母親は次第に落ち着いて行き、赤ん坊の様に、涙を流した跡をつけながら深く眠る。


母を眺めながら、2人の子供達は視線を合わせる。


「...もう、随分前よ。お母さんが壊れたのは。」


ジュエリーは、沈黙を破って母親の様態について話し始めた。


「ルイの記事を見る度に自傷行為したり、嘔吐して、医者に診てもらったら、精神に異常をきたしてるって言われた。」


「...」


「原因は激しいストレスね。アンタの。」


「...だから、殺した、ってことか。」


物理的にでは無く、母の心を殺したのだ。

言葉を発せなくなるほどのストレスをルイは与えてしまったのだ。


「ルイの事と関係の無い話なら普通に会話は出来るの。普段の生活も、普通...。でも、時折、ルイの事を思い出しては、自傷行為が止まらない。本当に突発的に癇癪を起こすものだから、心配で仕方ないわよ。」


「それは、すいません...って感じだけど、一応記憶喪失って事は覚えておいて欲しい...かな。」


正直、かなり深刻な状況になってしまっている、"ルイ"の母親の姿を見て、あまりジュエリーを逆撫でする様な事は言いたくなかったが、それでもルイもルイの言い分があった為、聞く耳だけは持って欲しかった。


「何、その設定貫くつもり?呆れた、頭は相変わらずの様ね。」


「...その割には、殺意があんまり感じなくなったけどな。」


「...死ね。」


ジュエリーは、ルイの発言に眉間に皺を寄せる。

短く尖った言葉を吐き捨てて、部屋を出ていく。


残されたルイは、ベッドの上で眠っている母親の存在を見つめながら、自身の胸を強く握り締める。


「...」


殺人事件があった時、一番の被害者は紛れも無く殺されてしまった人だろう。加害者にどれだけの言い訳があろうとも、命を奪った罪は重く、償わなければならない愚行となる。

そして、そんな加害者の親は、二番目の被害者と言えるのかもしれない。

自分の子が犯罪に手を染めて世界に悪名をしらしめるというのは、何とも親不孝な事だ。


「...辛いよなぁ。」


自分の子供が、人を殺して、街を崩壊させ、戦争を起こす。考えただけでもおぞましい。

何処で、育て方を間違えたのか、考えれば考える程、自分が悪いという結論になっていってしまう。


子の責任は、親の責任。


「そんな事考えないで欲しい、って思ってても、無理だろうな。俺でも、そうなっちまう。」


きっと、母は自分が許せなかったのだと思う。

息子を正しい道へと導けなかった自分の育て方を悔やみ続けていたのかもしれない。

そんな風に思わないで欲しい、なんて事は、ルイの口からは口が裂けても言えないのだが。


「ん?」


ふと顔を上げると、目の前のベッドの横にある机。

その上に置かれている写真立てが視界に写った。


写真が飾られており、そこには満面の笑みで3人の子供を抱いている白髪の美女の姿があった。

1人は、白い髪の毛で美女と同じように満面の笑みをしながらピースサインをしている少年。

1人は、黒い髪の毛で腕を組みながら、不機嫌そうな顔をしている少年。

1人は、その2人の少年の真ん中で、緊張している様な顔つきで正面を見つめている赤いショートヘアの少女。


「こっちは、"ルイ・レルゼン"で、こっちは、ジュエリー、んで...」


左から順に、並んでいる少年と少女を指さして確認する。


「コイツが....やっぱり、ロイ・レルゼン...だな。」


黒髪の不機嫌な少年。間違いなく、ロイ・レルゼンであった。

レルゼン、と聞いた時まさかとは思ったが、やはりルイとロイは、血の繋がった兄弟関係なのだろう。


「...」


どこか、掴めない男。確実に何かを知っている、ルイにとっての重要人物。

『英雄』ともてはやされているが、彼の本性をルイは知っている。セレナを殺そうとした野蛮な男。


「子供の頃から、悪人面だな。」


と、ロイの幼少期を見て、そんな感想が出てくる。


「--と、これが、"ルイ"か。」


満面の笑みの少年"ルイ・レルゼン"。

その笑顔には、世界で悪名を轟かせるイカれた犯罪者の面影は微塵も無かった。


「...どうして、闇堕ちしちまったんだ。」


これ程爽やかな少年がダークサイドに堕ちて行くのは信じ難いが、事実な訳だ。

ルイはその事実を噛み締めながらも、違和感を感じて仕方なかった。


「"何か"があったんだ。"ルイ"が、堕ちて行く何か決定的な要因が。」


"何か"。それは大切な人を失った苦しみなのか、人格を歪める程の原因。

何かが、あったのだ。"ルイ・レルゼン"には。


「...この村は、その"何か"のヒントがあるのか?」


窓から外を見て、ルイは目を細めて呟いた。

少年に、堕ちて行くしかなかった人生を歩ませたその正体不明の原因を突き止めるべく、ルイは固く決意する。


「"ルイ"の謎を、俺が突き止めてやる。絶対、取り戻して、償わせてやる。」


「随分頑張るつもりでいるじゃねぇか。ルイ。」


「っ!?だ、誰だ!?」


村一面を堪能出来るその窓の下から、聞き覚えの無い男の声がした。


「久しぶりだな、ルイ。」


下を覗くと、生き生きした緑の葉の上で横になっている男が居た。

あくびをしているその姿は、完全にアホ面ではあったが、ルイの心をざわつかせる何かを持っていそうな男だった。


かなり質素な服装をしており、高貴な身分では無いことは一目でわかる。手入れをしていないその髭面は、ルイからしても汚らしい印象すら与えた。


「えーと、アンタは?」


「...は?なんだァお前、俺の事忘れたのか?そんな薄情な事言わねぇでくれよ。ガキの頃からの仲だろ?」


「見るからにおっさんなアンタと俺がガキの頃からの仲?にわかに信じ難いなぁ。」


そう、外見だけ見れば明らかに30-40代のおっさん。

"ルイ"と同年代とはとても思えない。

父親だと言われても遜色の無い...


「いや!父親かっ!?」


「おいおい、父親とはひどいぜ。普通にダチだろ?」


「随分と、大人のお友達を持っているようだなぁ...俺って。」


人の家の敷地に土足で入ってきてくつろいでいるこの不審者と友達だったというのは、信じたくない事ではあるが、今のルイが無闇に否定することは出来ない。

記憶が無いのだから。


と、ここでおっさんはルイの異変に気づく素振りを見せる。


「...なぁんか、おかしいなぁ。ルイ、お前記憶喪失か?」


「あ、そうだ。悪いが、今の俺にはこの村での出来事とかも、当然アンタの事も分からない。記憶喪失状態だ。」


「なるほどな、よしゃ。俺がお前の記憶喪失を直す手伝いをしてやらぁ。」


「え、随分あっさりと信じるんだな。ここ普通疑う所だろ?」


「...そうか。確かに!お前俺を騙してんのか!?」


「なんだよこいつ!!!」


どこか掴めずにいるこの男に手を焼き、ルイは天に向かって大声で叫ぶ。


聞くと、どうやら彼は本当にルイの子供時代から親交を持っているらしく、それはジュエリーも頷いた。


「特にこれと言った思い出はないけれど、確かにずっと居たわね。特に思い出ないけど。」


「2回言うなよ!おじさん悲しくなるからっ!年頃の女の子にそんな目で見られたら立ち直れねぇよ!」


「おじさんの自覚はあんのな。」


というのは、キッチンでの会話だ。

ジュエリーに確認を取る為、この謎の男を家に上げて本当に親交があったかを確かめる。

ジュエリーはあまり好きなタイプではなかったのか、白い目を向けていた。


「んで、名前は?」


「おう、俺はイニーだ。イニー・トラレス。お前の消えちまった記憶の中じゃあ一番のダチだったぜ!」


「それはないわね。」


「それはなさそう。」


「兄妹揃って否定すんなっ!ルイに関してはただの憶測じゃねえか!記憶ねぇじゃんお前!」


イニーはどうやらこういうキャラらしい。

ジュエリーも彼に対しての扱いは徹底して辛辣だ。

だが、先程まであまり良くない空気であったルイとジュエリーの空気を和やかにしてくれた事に関して、ルイは本気の感謝をしている。


「あれ、ところでセレナは?」


ふと、この場にいない金髪の少女のことを思い出す。


「ん?あぁ、あの子、なんか探索するとか言って家の中歩き回って行ったわ。」


「こっちは、シリアスな雰囲気だったのにアイツは相変わらず能天気というか...。」


「なんだぁ?セレナっつーのは誰だ?聞き覚えねぇなあ。セレナなんて、アイリス王国の王女みたいな名前だな。」


「あぁ、そうだよ。」


「たはは!そうか!王女かぁ!元気だなぁ、王女は......。って!はぁ!?」


「ちょ、ちょっ待って!いま!なんて言った!?」


ルイの唐突な告白に、ジュエリーとイニーが同時に目を見開いて駆け寄ってくる。

2人の勢いに若干引き気味になってしまうルイ。


「大変だ!王女に何かあったら国際問題だぞ!しかも!アイリス王国だろ!?今色々ややこしいんだから!余計な波風立たせる訳には行かん!」


「そ、そうなの?」


イニーは大慌てで家の中をかけ走った。

その行動にルイは心配しすぎではないかと思ったが、ジュエリーも動揺している所を見ると、セレナという少女が、どういう存在なのかというのを身に染みて感じる。


「待て!イニー!俺も探すから。」


「そうか!そんじゃあ!ルイはぁ...2階だ!2階探して来てくれ!」


「え、でも2階暗くね?」


そう。階段を見上げると、真っ暗な暗闇が広がっており、セレナがいる痕跡は微塵も無い。

あの少女は極端に黒を嫌っているので尚更2階には行かないと思うが。


「念の為!」


イニーが慌てているので、仕方なくルイは階段を上る。


「うへぇ...かなり暗いなぁ。しかも、結構ホコリだらけじゃん。」


辺りは白いホコリだらけとなっており、人が住んでるとは思えない場所だ。

長い廊下の様なその場所で、ルイは右にある扉に目を向ける。


「ここか?」


廊下が真ん中にあり、その右の壁にある扉。

左側の壁は何だかズタボロであり、扉は無さそうだ。

2階の部屋はここだけということだろう。


「お邪魔しまーす」


ルイは勢い良く扉のドアノブを開けて、暗い部屋の中へと足を進める。


「...ん?」


そこは、暗い部屋だった。だが、決してこれは魔王城の様な真っ黒な部屋の様と言う意味ではなく、ただ単純に電気の着いていていない部屋であるという事だ。

真っ黒である事に、変わりは無いが。


「.....っは?」


部屋中に、とある記事が貼り付けられていた。


その事だけは、確認出来た。

そして、その記事の内容全てが共通して、


"ルイ・レルゼン"に関する記事だということも。

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