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SPY-A組  作者: ふぁじー
第1章 朧気な来訪者
7/9

1-5 カラクリ

(ベドロは校長につかまってる…。)

デスナは焦っていた。だが彼は冷静な表情を見せ、思考を巡らせていた。

「落ち着け…。俺たちが絶対に助けてやる。絶対に……情報を吐かせてやる!!」

デスナはベドロに呼びかけ、思考を止めない。


第5話 カラクリ


「クソッ…。」

シオンはそうつぶやき、何もできていない自分に怒っていた。

(オレも…なにかしなきゃいけない…。デスナやリーフはしっかり役割を果たした。ミサトも情報を手に入れたり、作戦を立ててくれたりした。ベドロも…失敗はしたけど突撃するって行動を起こせたんだ。オレだけ…オレだけ校長室に来てから行動すら起こせてない!!)

「シオン、落ち着いて。」

声をかけたのはミサトだった。

「ミサト…さん。」

「ミサトでいいわ。」

シオンはふとミサトの目を見る。

(芯がある目をしてる。今のオレとは違う…俯瞰できる目を持ってるんだ。)

「ごめんミサト。オレ、いくよ。」

「えっ」

シオンは立ち上がり、校長の方へと走りだそうとする。シオンの緊迫した表情が校長に伝わったのか、校長も構えを作る。

「待って!」

ミサトはシオンの制服をつかむ。その拍子にシオンは少し躓く。

「ッ!なんだよ!」

「あなたは、()()()()()じゃないわ。」

()()()()()?」

「あなたはどう考えても思考型でしょう。行動するのは向いてない。」

「じゃあ、この状況はどうやって…。」

「そういう人…行動型の人に任せるしかないのよ。」

「でも、できてないからオレらが動くしかないんだろ!」

シオンは口調が少し強くなる。ミサトは少しひるむが、負けじとシオンに言い返す。

「あなたねぇ…行動型の人に指示をするのが思考型よ。私たちが動いた時点で、負けは同然よ。」

「…」

シオンは少し黙り込むが、何かに気づいたのかデスナとリーフの方を向く。デスナとリーフは考えているが、困っている表情を見せている。

(デスナ…リーフ…。ごめん、オレが間違ってた。オレがお前らを、世界一うまく使ってやる。)


「ミサト、ありがとう。」

シオンはミサトにそう告げ、立ち上がる。ミサトは少し驚くが、にこりと笑う。


(2人がこの作戦の最大のピースになるんじゃなくて、オレが2人をこの作戦の最大のピースにするんだ!!)


「シオン…?」

シオンが異様な雰囲気をまとい始める。それにいち早く気づいたリーフは困惑するが、すぐに適応する準備を始める。

「いくぞリーフ…。」

「やっぱおれだよねぇシオン。いこーか…ワクワクの」

『解放の時間だ!!』

(今ここで行動できるやつ…オレが動かせるやつは、リーフとデスナ…そしてスピードの3人!こいつらの個性を最大限まで使える動きをする!)


「すごいわ、シオン。」

ミサトは、シオンの急激な変化に関心を示す。

(あなたもその目ができるじゃない。まだ自分ではコントロールできないだろうけど、それを使いこなせるようになれば……。)


シオンは校長との距離をじりじりと縮める。周りをきょろりと見渡し、思考を巡らせる。

(オレのすぐ右にリーフ、左後ろにデスナ…。オレとリーフが校長との距離をじりじりと詰めている。オレらに注意をひかれてるうちにベドロが校長の口をふさいでくれれば……それがないと、オレらは大きく動けない!!)

シオンはベドロに目線を送るが、ベドロが理解できていないような顔をする。

(もうちょい…あと2m距離を詰める。この距離があれば校長の注意は十分に引ける!)

シオンはリーフにあと2mの合図を送る。リーフはにやりと笑い、こくりとうなずく。

(あと1.5m……1m……。いける…!!)

シオンは少し前のめりになる。その横を、リーフが走り抜ける。

「!?」

「シオンさぁ…。2mでおれのワクワクが収まるわけねぇじゃん!」

「…!!」

(……なんてね。リーフの自由奔放な性格は思考の範疇。その動きはベドロの驚きを誘発するから、ベドロの行動につながる!)

「最高だぜ、おまえら……」

(リーフが突撃して校長が叫ぶ準備を始める。叫ばれたらどう考えてもオレらの負けだ。でも……それはリーフに意識を持っていかれてる証拠!!)

シオンは急いで左後ろを向く。シオンとデスナの視線がばっちりと合う。

(リーフは、囮!!本命はお前だ…。)

「いけ、デスナ…。」

視線が合ったデスナは、理解したのか走り出す。

(自由奔放で注目を引くリーフ…その裏を突く、忍者戦法!!)


「おらぁぁぁっ!」

ベドロが校長の口をふさぐ。

「叫ばれたら、俺らの負けだからな!ぐはははは!」

ベドロが、性格の悪い雄たけびをあげる。

リーフが校長に襲い掛かろうとするが、校長の手さばきによって外れる。

「その裏…っしょぉ?」

リーフはシオンの作戦に気づいたようだ。デスナがすでに、リーフよりも校長に接近していた。

「左からの突撃…お前の指示だよなぁ、シオン。…あれ、シオン…?」

リーフがシオンの方を向こうとするが、そこにシオンはいなかった。


校長は、デスナの裏の攻撃もギリギリ読んでいたかのようにかわす。しかし、校長は態勢を崩す。

「…ッ!!クソッ。シオンすまん!!外した!!」

デスナは外したことに絶望しながら、シオンの方を向こうとする。

「あれっ…シオン…?」



「ここだろ、校長。お前の読みの限界は!」

シオンは態勢を崩した校長に、下から突撃する。

「シオン…?いつの間に…!」

校長はシオンに問いかけるが、答える前にシオンに押し倒される。

「リーフはオモテ…。ベドロはそれに共鳴して校長を抑える…。オモテのリーフの対処をしている間にウラのデスナを突撃させ、態勢を崩させる…。そこまでが、オレの作戦だ。」

「じゃあ、なんでお前が私を押さえつけているんだい、シオン・リハルト。」

(本名、やっぱ覚えてんだな。)

「オレの作戦が、読まれている前提で動いたからだ。」

「ほぉ…。」

「オレの作戦がすべて読まれていて、デスナのウラ攻撃が封殺された場合…そのウラを突くウラウラ突撃。これがオレのすべてだ。」

「ふふ…負けたよ。」

デスナが近づき、シオンと代わる。

「さぁ、話してもらおうか。」

デスナが校長に顔を近づける。

「ミスト先生と地下室についてのカラクリを!!」

ついに校長をとらえた2班。


次回

1ー6 朧気な来訪者

7月27日(日)掲載予定

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