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SPY-A組  作者: ふぁじー
第1章 朧気な来訪者
5/9

1ー3 地下室の調査

ミサトから受け取った資料を入れたファイルを片手に、シオンは職員室前に来ていた。


第3話 地下室の調査



4月8日 ミスト先生スパイ疑惑調査1日目

昼休み

昼休み、シオンは職員室前に再び来ていた。今朝の恐怖と今の好奇心。どちらも大きな感情で、どちらが優位などと決めることはできなかった。

(あー、気持ち整理しないと今のオレじゃ使い物にならないな。)

「あ、シオンじゃん」

シオンに赤髪の少年が軽快に話しかける。

「…スピードか。こんにちは。」

「あぁ、こんにちは。」

気まずい沈黙が、2人の間にできる。

(この人とあんまり話したことないんだよな。ベドロとかデスナとか、リーフみたいに自分から話すタイプでもなさそうだし。ミサトさんみたいに黙々と任務をこなすタイプでもなさそうだし…きまず。)

「あ、あいつ。うちのクラスにいたよな」

先に口を開いたのは、スピードだった。彼はきれいな黒髪の少年を指さしていた。

「あぁ…確か全く緊張が伝わらなかった人…できるだけあの人にはかかわりたくないかな。」

少年はこちらに気づいたのか、「黙れ」と言わんばかりの目で睨んできた。

「ほらね、あんまかかわりたくない。」

「なぁなぁ、お前名前なんていうの?」

スピードが躊躇なく話しかける。

「『黙れ』とにらんだはずだろう。気づかなかったのか、赤髪野郎。」

「気づいてたよ。それでも、好奇心には抗えないタチでね。」

「…いいだろう。俺はヒカゲだ。お前らとつるむ気はない。失せろ。」

「へぇ、ひでぇじゃん。お前も調査?」

「いや…特定だ。」

ヒカゲは、すでにカメラを握りしめていた。そういうと彼は、職員室の中にずかずかと入りこみ、僕たちが存在すら知らなかった、「地下室」にカメラを構えた。

(職員室に…地下室!?こいつ、いつ地下室の存在にたどり着いたんだよ…!?)

「なぁスピード……こんな地下室、学校の図面にあったか?」

「…なかった。」

彼はぴっと手を払い、シオンたちに「どこかへ行け」と合図を送る。

(もう証拠をとるつもりか?こんな短時間で、ロジックがもう組めたのか!?)

「ナニモンだよ、あいつ…」

シオンが焦り始める。

(オレも、急いで調査しなきゃ…)

「シオン、落ち着け。」

スピードの声で、シオンは目を覚ます。

「ヒカゲのテンポに乗せられるな。俺らは、俺らのテンポで調査するのが1番だ。」

「そう…だよね。ごめん。」

「『ごめん』は受け付けてねぇ。『ありがとう』だろ?」

(こんなとこまでイケメンか)

シオンは顔が少し緩む。

「ありがとう」


放課後

放課後は、6人で集まって数分だけ報告会をすることになっていた。

「どう?なにか成果はあった?」

ミサトが他5人に問いかける。

「今日一番の成果は、やっぱミサトちゃんのあの資料じゃない?おれは特になんもできなかったしー」

ベドロは、ふてくされている。

「なんでふてくされてんだよお前。何もできなかったのは自分のせいだろ。」

「わかってんだよデスナ。自分がなんもできなかったからイラついてんだよ。そういうデスナだって、なんかわかったのかよ。」

「俺は…特に」

緊張した空気が2班の中に流れる。

(この空気を切り裂けるのは、あいつしかいない。あいつは…)

「おい!寝るなよ。」

スピードがリーフを叩く。

「寝てたのかよ、お前……」

シオンが呆れるが、微笑みがこぼれる。

「うにゃ…今何時?」

「ふっ…いつから寝てたんだよ、おまえ」

シオンはリーフの緩さに感謝しながら、とても笑った。ほかのメンバーも笑い、緊張した空気はどこかへ消え去った。

「あ、そういえば…スピード。ヒカゲの情報は共有しといた方がいいんじゃない?」

「そうだな。職員室の、『地下室』について。俺たちは先に調査したんだ。」

スピードはキリッとした表情で、プレゼンを始める。ミサトとデスナは興味津々の顔をしているが、それ以上にリーフの顔が輝かしい。

「地下室!?…にひっ、面白そぉじゃん」



「…以上が俺らが昼休みで調べられた内容だ。」

スピードが少し顔を濁らす。

「みんなの期待を裏切ってごめん。でも、これが手に入る情報の限界だった。」

シオンが謝るが、ミサトがフォローの態勢に入る。

「いや…十分。私たちに足りなかった、決定的なピースが手に入った。」

「そーだねぇ。これだけ情報があれば、明日いくらでも戦えそう!」

リーフは柄に合わず考えている。シオンはそんな様子を見て、少し安心する。

「え…お前らすごいな。俺には全く案が浮かばないよ。」

「おれも…。なんか申し訳ねえな。」

スピードとベドロが後ろめたそうな表情をする。

「明日…より決定的な情報を手に入れる。そのために必要なのはお前だ、デスナ。」

シオンは、デスナを指差す。

「お、俺…?」


4月9日 ミスト先生スパイ疑惑調査2日目

朝礼前

シオンたち6人は、校長室の前にきていた。

「デスナ!準備はいいか?」

スピードがデスナに問う。

「俺はいいけど…俺だけに任せんなよ!お前らもやるんだからな!」

デスナが少し緊張しながら言う。

「デスナ、きっと大丈夫だよ。」

シオンがデスナの緊張を解くために声をかける。

「校長はオレらがあのクラスのメンバーであることを知ってるはず。すぐ、吐くよ。」

(正直、賭けだ。でも…でもきっと、この6人なら…!!)

「そ、そうだよな…サンキュー、シオン。」

「いくよ!!」

リーフの合図とともに、6人は校長室へ突撃するのであった。

校長室へ突撃する2班の6人。


次回

1ー4 必要なピース

7月6日(日)掲載予定

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