1-2 『ワクワク』の正体
「自己紹介も済んだところだし、早速作戦会議でもするか。」
デスナが仕切る。
第2話 『ワクワク』の正体
4月7日
「そうですね。ほかの班よりも1秒でも早く任務を達成したいです。」
ミサトがつぶやく。シオンはその言葉にうなずいたが、ふと考え込む。
(親に承諾されたからって、オレがスパイとして活動する必要はないんだよな…。…でもなんだろ、この気持ちは…。普通の高校生だったら…。)
「シオンそれ、ワクワクの顔ぉ?」
「えっ」
シオンに絡んできたのは、リーフだった。
「その顔、ワクワクしてんのぉ?」
「い、いやそんなことないよ…。」
(こんな状況にワクワクしてるとか、ただの変態だし…。オレが、ワクワクしてるわけ…)
「いや、嘘っしょ!」
リーフがニヤニヤしながらシオンを問い詰める。
(なんだ、こいつ。オレがそんな奴のはずが…)
「オレがそんな奴のはずがないぞっ!!…ってカオ!」
「えっ!?」
「だってね、おれもワクワクすんだもん。」
「ワクワクすんの…?オマエ、変な奴だなー」
ベドロがリーフにけんか腰で挑む。
「別に、変じゃなくなぁい?だってこんな状況、滅多にないからさ!折角ならおれ、ここで一番のスパイになりてぇよ」
リーフがニヤニヤしながらベドロに話す。ベドロは反論の余地がないのか、黙り込む。
「…!」
シオンが、何かひらめいたような顔がする。
(そっか…やっぱこいつの言う通り、オレもワクワクしてんのかもしれない。でも、命の危険と隣り合わせの状況でワクワクすんのは流石に怖ぇな…。)
「リーフ、今日一緒に帰ってくれないか?」
シオンがリーフを誘う。リーフはにやりと顔を吊り上げ、にっこりと笑う。
「そうこなくっちゃ」
「えー!!おれは!?おれはー!?!?」
ベドロが文句をこぼす。シオンはめんどくさそうな顔をするが、真摯に対応する。
「ごめんな、ベドロ。今日はこいつと帰らせてくれ。俺の、ワクワクの正体を知りたい。」
「へーっ、もう一流のスパイ気分ってか。」
(こいつ…。)
「さて、話はまとまったか?そろそろ本題に入らないと他の班に置いてかれるぜ。」
「そうですよ、その『ワクワク』に従うなら、今すぐにでも作戦会議をするべきですよ。」
スピードとミサトが作戦会議を促す。
「あ、すまん。作戦会議しようか。」
シオンが謝り、改めて作戦会議が始まる。
4月8日 ミスト先生スパイ疑惑調査1日目
朝礼前
(職員室にあるミスト先生の席は、体育館側で職員室の出入り口から遠い…。)
シオンは朝早くから登校し、ミストの動向を確認していた。
(あ、立った。移動するか。)
「おはようございます、ミスト先生。」
シオンが元気よくあいさつし、ミストとすれ違おうとする。
「おはよう…キミ、少し待ちなさい。」
「…はい」
シオンの声が震える。
(なんだ…?早速失敗になっちまうのか…?)
「ネクタイが曲がっていますよ。身だしなみは整えるように。」
「…あっ!ありがとうございます!」
ミストは少し微笑み、会釈をする。その後、歩いて体育館へ向かう。
(し、死ぬかと思った)
シオンはその場に座り込み、あの緊張感を噛みしめる。
(これは、ワクワクなのか?普通の高校生だったら、この状況は恐怖でしかないはずなのに。)
「おーいっ、シオン!!」
「リーフ…!」
リーフがシオンに飛びつく。
「なぁ、あれはワクワクなのか?」
「あれ?」
「そう、今ミスト先生にばれそうになったんだ。これが、昨日お前が言ってたワクワクなのか?」
「いや、なわけないだろ。」
笑いながらリーフが言う。
「それがワクワクなら、お前は単なるドMってことだぞ。シオン、お前のワクワクはそんなものじゃないはずだよ。お前が今勘違いしたのは、『恐怖』と『好奇心』。おれがワクワクって呼んでるのは『好奇心』のこと。勘違いすんなよ。」
ニヤニヤと笑いながら手を振るリーフを見て、シオンは少し悔しい気持ちになった。
(ワクワクの正体は、好奇心…。)
昼休み
シオンは、再び職員室へ行こうとしていた。
(このワクワクを、好奇心を満たすために、オレはここで活躍する。SPY-A組でNo.1になってやる。)
「シオンくん、少しいいですか?」
「ミサトさん…?」
「なんだよシオンー。最近俺たちより後に帰ってると思ったら、俺たち捨てて女の子の友達作ってたのかよ!」
「そーだぞ、シオン!裏切者っ!」
セーちゃんとレンがニヤニヤしながらからかう。ミサトはずっとこちらを見ており、シオンは少し申し訳ない気持ちになった。
「ニヤニヤすんなって。あの子とオレは…そんな関係じゃねぇよ。」
愛想笑いをするが、ミサトには見透かされているような気がした。
「どうしたの?ミサトさん。」
シオンの問いかけにたいして、ミサトは資料を取り出す。
「これ…班のメンバー全員に配ってるの。あ、ファイルを持ってきてくれる?周りの人たちにできるだけ見られてほしくないから。」
シオンは資料をのぞき込む。
(ミスト先生の情報の資料か…。使えるな。)
「わかった、少し待っててくれ。」
シオンは小走りで席へ向かう。セーちゃんとレンの視線を感じたが、一旦無視することにした。
「はい、これで今日の私の任務は終わり。明日も昼休み来るから。」
「わかった。サンキュー。頼りにしてるぜ。」
シオンはそんな言葉を置いて職員室へ向かった。
職員室へ向かうシオン。
次回
1ー3 地下室の調査
6月29日(日)掲載予定




