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SPY-A組  作者: ふぁじー
第1章 朧気な来訪者
4/9

1-2 『ワクワク』の正体

「自己紹介も済んだところだし、早速作戦会議でもするか。」

デスナが仕切る。


第2話 『ワクワク』の正体



4月7日

「そうですね。ほかの班よりも1秒でも早く任務を達成したいです。」

ミサトがつぶやく。シオンはその言葉にうなずいたが、ふと考え込む。

(親に承諾されたからって、オレがスパイとして活動する必要はないんだよな…。…でもなんだろ、この気持ちは…。普通の高校生だったら…。)

「シオンそれ、ワクワクの顔ぉ?」

「えっ」

シオンに絡んできたのは、リーフだった。

「その顔、ワクワクしてんのぉ?」

「い、いやそんなことないよ…。」

(こんな状況にワクワクしてるとか、ただの変態だし…。オレが、ワクワクしてるわけ…)

「いや、嘘っしょ!」

リーフがニヤニヤしながらシオンを問い詰める。

(なんだ、こいつ。オレがそんな奴のはずが…)

「オレがそんな奴のはずがないぞっ!!…ってカオ!」

「えっ!?」

「だってね、おれもワクワクすんだもん。」

「ワクワクすんの…?オマエ、変な奴だなー」

ベドロがリーフにけんか腰で挑む。

「別に、変じゃなくなぁい?だってこんな状況、滅多にないからさ!折角ならおれ、ここで一番のスパイになりてぇよ」

リーフがニヤニヤしながらベドロに話す。ベドロは反論の余地がないのか、黙り込む。

「…!」

シオンが、何かひらめいたような顔がする。

(そっか…やっぱこいつの言う通り、オレもワクワクしてんのかもしれない。でも、命の危険と隣り合わせの状況でワクワクすんのは流石に怖ぇな…。)

「リーフ、今日一緒に帰ってくれないか?」

シオンがリーフを誘う。リーフはにやりと顔を吊り上げ、にっこりと笑う。

「そうこなくっちゃ」

「えー!!おれは!?おれはー!?!?」

ベドロが文句をこぼす。シオンはめんどくさそうな顔をするが、真摯に対応する。

「ごめんな、ベドロ。今日はこいつと帰らせてくれ。俺の、ワクワクの正体を知りたい。」

「へーっ、もう一流のスパイ気分ってか。」

(こいつ…。)

「さて、話はまとまったか?そろそろ本題に入らないと他の班に置いてかれるぜ。」

「そうですよ、その『ワクワク』に従うなら、今すぐにでも作戦会議をするべきですよ。」

スピードとミサトが作戦会議を促す。

「あ、すまん。作戦会議しようか。」

シオンが謝り、改めて作戦会議が始まる。



4月8日 ミスト先生スパイ疑惑調査1日目

朝礼前

(職員室にあるミスト先生の席は、体育館側で職員室の出入り口から遠い…。)

シオンは朝早くから登校し、ミストの動向を確認していた。

(あ、立った。移動するか。)

「おはようございます、ミスト先生。」

シオンが元気よくあいさつし、ミストとすれ違おうとする。

「おはよう…キミ、少し待ちなさい。」

「…はい」

シオンの声が震える。

(なんだ…?早速失敗になっちまうのか…?)

「ネクタイが曲がっていますよ。身だしなみは整えるように。」

「…あっ!ありがとうございます!」

ミストは少し微笑み、会釈をする。その後、歩いて体育館へ向かう。

(し、死ぬかと思った)

シオンはその場に座り込み、あの緊張感を噛みしめる。

(これは、ワクワクなのか?普通の高校生だったら、この状況は恐怖でしかないはずなのに。)

「おーいっ、シオン!!」

「リーフ…!」

リーフがシオンに飛びつく。

「なぁ、()()はワクワクなのか?」

()()?」

「そう、今ミスト先生にばれそうになったんだ。これが、昨日お前が言ってたワクワクなのか?」

「いや、なわけないだろ。」

笑いながらリーフが言う。

「それがワクワクなら、お前は単なるドMってことだぞ。シオン、お前のワクワクはそんなものじゃないはずだよ。お前が今勘違いしたのは、『恐怖』と『好奇心』。おれがワクワクって呼んでるのは『好奇心』のこと。勘違いすんなよ。」

ニヤニヤと笑いながら手を振るリーフを見て、シオンは少し悔しい気持ちになった。

(ワクワクの正体は、好奇心…。)


昼休み

シオンは、再び職員室へ行こうとしていた。

(このワクワクを、好奇心を満たすために、オレはここで活躍する。SPY-A組でNo.1になってやる。)

「シオンくん、少しいいですか?」

「ミサトさん…?」

「なんだよシオンー。最近俺たちより後に帰ってると思ったら、俺たち捨てて女の子の友達作ってたのかよ!」

「そーだぞ、シオン!裏切者っ!」

セーちゃんとレンがニヤニヤしながらからかう。ミサトはずっとこちらを見ており、シオンは少し申し訳ない気持ちになった。

「ニヤニヤすんなって。あの子とオレは…そんな関係じゃねぇよ。」

愛想笑いをするが、ミサトには見透かされているような気がした。


「どうしたの?ミサトさん。」

シオンの問いかけにたいして、ミサトは資料を取り出す。

「これ…班のメンバー全員に配ってるの。あ、ファイルを持ってきてくれる?周りの人たちにできるだけ見られてほしくないから。」

シオンは資料をのぞき込む。

(ミスト先生の情報の資料か…。使えるな。)

「わかった、少し待っててくれ。」

シオンは小走りで席へ向かう。セーちゃんとレンの視線を感じたが、一旦無視することにした。



「はい、これで今日の私の任務は終わり。明日も昼休み来るから。」

「わかった。サンキュー。頼りにしてるぜ。」

シオンはそんな言葉を置いて職員室へ向かった。

職員室へ向かうシオン。


次回

1ー3 地下室の調査

6月29日(日)掲載予定

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