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SPY-A組  作者: ふぁじー
第0章 
1/9

0ー1 終わる平穏、始まる世界

「今日から君たちは国家の一戦力となる。心してかかれ。」


そう言う黒髪短髪のいかにも体育教師の彼の瞳には、光が灯っていなかった。


第0章 新しい花と交わる色

第1話 終わる平穏、始まる世界



4月5日

少し青みがかかった黒髪の少年、シオンは、期待を胸に乗せて眠りにつこうとしていた。

「明日からはもう先輩…か。あーーー、実感わかねぇ!!」

彼の顔は少し強張っており、期待に満ちた眼差しをしていた。

「シオン!明日から学校でしょ!?早く風呂入りなさい!」

「やべっ…風呂入ってなかった!」

シオンは急いで立ち上がり、脱衣所へ駆け足で向かう。その足取りは軽やかで、はたから見てもテンションが上がっているようにしか見えなかった。


ガチャリ。風呂場のドアが開き、温まったシオンが脱衣所へ戻る。

ピロン!シオンの携帯電話が鳴り、一通のメールが届く。

「…なんだ?こんな時間に。めずらしいな……学校からだ。」


「シオン様

 明日の放課後、この場所へ誰にも言わずに来い。

 来なければ、退学とする。          」


(な、なんだこれ…?退学…?明日から先輩なのに…?)

(とりあえず親に…いや、だめだ。これを親に相談したら、退学だよな。誰にも言わずって、そういうことだよね。)

「…くっそ」

シオンは添付リンクを開く。

「位置情報だ。ここに行けばいいのか。」

示されていた場所は、シオンの通っている高校「法院学園」から3駅の場所。交通費は学校側の負担らしい。

「…ってここ、安全区域ギリギリじゃねぇか!!」


シオンの住んでいる国、ターギ国は、隣国のスーベ国と75年間戦争を続けていた。

20年前、ターギ国はスーベ国ととある条約を結んだ。その条約の名こそ「安全区域条約」。

お互いがお互いの国に対して破壊の限りを尽くし続ければ、子供たち、未来が育たない。そこで、安全区域を定めることでお互いの国は未来の子供たちを安全な場所で育成できるという条約だ。お互いの安全区域には、手を出すことができない。


「本当に、大丈夫なのか…?」



4月6日

「シオーン!初日から遅刻は、だめよ!」

「わかってるよ!!母さん!!」

駆け足で階段を降り、バッグを握りしめる。

「…シオン、1年間頑張ってね。どうか、安全に。」

「…?もちろん。いってきます!!」

そうして、オレの人生を一変させる1年間が始まった。



『これにて、1学期始業式を終了いたします。起立、礼、着席。』

生徒会長の声が体育館中に鳴り響く。

「くそっ…」

シオンが小声でつぶやく。


(昨日のメールのことで頭がいっぱいだ…。全然話が入ってこなかった…。)


教室に向かって、生徒が歩き始める。

「おっと」

「シオーン、教室かえろーぜー」

「あ、ああ。」

シオンは少し出遅れたが、友人の声掛けに気づき、教室へ向かう。


「それでは、HRは以上!皆、気をつけて帰るように。」

「よし!!シオン、かえろーぜ!!」

「あ、ごめんセーちゃん。今日、用事あってさ。レンとかと帰ってて!」

「オッケー!」

(セーちゃんには申し訳ないけど、今日だけは絶対外せない…。)


法院学園の最寄り駅に到着し、昨日のメールの添付された位置情報の場所へ向かう。

「3駅って、地味になげぇな」


(ここから…徒歩10分か。同じ電車でこの駅に降りたうちの高校の生徒は…ざっと40人くらいか。安全区域が小さいから人、密集しがちなんだよな。)

「あれ!?オマエも昨日学校からメールきた感じ!?」

「…いや、オレは別に…」

(誰にも言うなって書いてあったし…。こいつも学校に呼ばれたんだったら誰にも言うなって書いてあったはずじゃない?)

「ふーん…まいいや。おれベドロ!2年生だ!よろしく!」

「オレはシオン。同じく2年…よろしく」

(あんま気乗りしないけど自己紹介くらいはしておくか。)

「あ、ついた」

ベドロがつぶやく。

「じゃ、おれここだから!じゃーなシオン!」

「…オレもこっちだよ」

「えっ?」

(めんどくせーやつに絡まれたな…。)


シオンとベドロが向かった先は、大きな施設だった。ドーム状のホールで、シオンはその大きさに目が釘付けになる。

「でっか…」

「やあ、自己紹介してもらえるかな?」

(あ、うちの教師だ)

「2年D組シオンです。」

「了解、シオンくんね。そっちの坊主の君は?」

「おれはベドロ!2年C組!」

「ベドロ…ね!確認取れました。二人とも入って大丈夫ですよ。」

2人は、ドームの施設へ入っていく。


「ここ、入ってよさげ?」

ベドロが部屋に突撃する。

「って、なんだここ!?学校の教室とおんなじ間取りじゃねぇか!!」

「…ほんとだ。学校は、ここに送り込んで何がしたいんだ…?」

ドンッ!ベドロが何者かに押される。

「いてっ」

「あ、わりぃ」

そこには、緑の髪色をしたガタイのいい男がいた。

「お、おう!てか、オマエもこの部屋に用があんのか?」

ベドロがガタイのいい男に興奮している後ろに、教室に入れなくて困っているであろう女の子がいた。女の子はきれいな水色の髪と瞳をしており、シオンも思わず見とれてしまっていた。

(はっ!見とれてる場合じゃねぇ、ベドロを止めねぇと)

「おい、ベドロ!初対面なのにがつがつ行きすぎだ。後ろの女の子も困ってるだろ!」

「後ろの女の子ぉ?」

「あっ、ありがとうございます…」

「うっひょー、かわいい!!」

(こいつ、一回くたばんねぇかな)

「おい坊主、その辺にしとけ」

ガタイのいい男がベドロを注意する。

「あ…ごめん」

「…そろそろ入ろうぜ」

シオンがベドロをそっと促し、ようやく部屋に入る。部屋には30個の机と椅子が並べられており、まるで教室のような風景だった。シオンは適当に机と椅子を選び座る。

「おれたちが一番乗りだったみたいだな、シオン」

「ああ、そうだな」



その後も続々と法院学園の生徒が入ってきた。この生徒は全員2年生なのだろうか、それとも1年生や3年生もいるのだろうか。

最後に、入り口にいた黒髪の体育教師のような先生が入ってきて、ドアはがっちりと絞められた。

「さて、これで全員揃っているはずだ。俺はリューキ。よろしく。さて、本題に入ろうか。法院学園がお前らをこんな遠くまで呼び出してしたかった話、それについて語ろう。」

シオンは唾をのむ。緊張で胸が張り裂けそうだった。

(オレ、何かしたんだっけ。怒られるようなこと…。)


「君たちを、国家スパイとしてスカウトしたい」


「…は?」

国家スパイとしてスカウトされたシオン。


次回

0ー2 SPY-A組

第0章 完結!

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