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第25話:動き出す未来、まだちょっと怖い

最初から全部わかって動けるやつなんかいねぇよ。

怖ぇって思いながら、それでも一歩踏み出す。

それだけで、立派な“スタート”だろ


――ケンちゃん



団地の広場。

レン、いっちー、ももかは、段ボール棚の前で集まっていた。


「……で、どうすんだこれ」

いっちーが、ボロボロの棚を見ながら言う。


「一応、ポスターも作ったけど……」

ももかが、折りたたんだ紙を取り出した。


そこには、

『だんち図書館、近日オープン!』と

カラフルなマジックで書かれていた。

下には、小さな字で「貸し出し自由」「返すのはなるべく」ってある。


いっちーはそれを見て、爆笑した。

「なるべくって!」


「……だって、細かいルールとかめんどくさいし」

ももかは、ふくれっ面で答えた。


レンは、ポスターと段ボール棚を交互に見た。

正直、オープンって言えるレベルじゃない。


でも、

(まあ……やるしかないか)


レンは、マジックを手に取り、

棚の横にでっかく『準備中』と書き足した。


「……これでいいんじゃね?」


「適当かよ」

ももかが笑った。


いっちーも、

「これぞ団地クオリティ!」

とふざけながら、ポスターを貼り付けた。


未来は、完璧じゃない。

でも、この瞬間、たしかに何かが動き始めた気がした。




昼下がり三人は、図書館の「最初のお客さん」探しに出かけた。

まずは、団地の住人たち。でも、そう簡単にはいかない。


「あ?図書館?勝手にやってんの?」

近所のおっさんに冷たくあしらわれたり、


「本置くとこないよ〜」って苦笑いされたり。


子どもたちも、興味はあるけど、

なんとなく遠巻きに見ている感じだった。


レンは、段ボール棚を思い出した。

ベコベコで、ガムテープだらけの棚。

そりゃ、信用されないよな……って、ちょっとだけ思った。


それでも、夕方になった頃。

ひとり、またひとり、子どもたちが近づいてきた。


「これ、借りてもいいの?」


「貸し出し自由だよー。返すのは……なるべく」

いっちーが笑いながら答えると、子どもたちは楽しそうに笑った。


レンも、ももかも、自然と笑顔になった。

段ボールの棚に、ぽつぽつと本が並び始める。


よれたマンガ

読みかけの図鑑

学校でもらったプリント


まともな「図書館」には、程遠い。

でも、そこにはたしかに、誰かの手が加わって、

誰かが大事に持ち寄ったものがあった。




夜、レンは、団地の非常階段に座っていた。


スマホには、いっちーからのメッセージ。

《明日、もっと棚増やそうぜ》


そして、ももかからも。

《新しい本、探しておくね》


レンは、スマホを胸にしまった。


(動き出したんだ)


まだぜんぜん形になってないけど。

まだ、不安のほうが大きいけど。


それでも、ちゃんと"次"が見えている。

それが、なんだかうれしかった。


団地の空に、星がぽつんと光っていた。

それを見上げながら、レンはちいさく笑った。


怖いけど、

それでも一歩踏み出せるなら、

たぶんそれだけで十分なんだ。

未来って、すげぇ立派なもんじゃねぇんだよ。

ひとつ、本を置く。ひとつ、誰かに渡す。

そんなちっこい動きだって、ちゃんと未来なんだよな


――ミラジイ

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