表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/42

第23話:進むって、こういうこと?

進むってさ、すごいことしなきゃいけないわけじゃないよ。

ちょっと考え方変えるだけでも、前に行ってるんだよ。

気づかないだけでね。


――ももか

広場に、でっかい段ボールの山ができていた。

「……これ、棚じゃないよな」


レンがぼそっと言うと、

いっちーが爆笑した。


「芸術だろ、芸術!」


そんなこと言いながら、いっちーはマジックを取り出して、

段ボールにでっかく”だんち図書館(仮)”って書き始めた。


「おまえ、棚直さないの?」


「直すの無理だろ。だったら、名前だけでも先につけとくんだよ!」

いっちーは、わりと真顔で言った。


(なんだよそれ……)


でも、レンはなんとなく、笑ってしまった。

進んでるんだか、停滞してるんだかわからない。


でも、昨日とはちょっと違う。

その感じが、悪くなかった。




広場のベンチで休憩していると、

ももかが近づいてきた。


「ねえ、これ」

そう言って、ももかは、小さな段ボールの切れ端を差し出した。


そこには、ちいさな字で、

『貸し出しノート(仮)』って書いてあった。


「……これ、図書館に置きたいなって。

 借りる人、名前とか書けたらいいかなって思って」

ももかは、ちょっとだけはにかんだ。


レンは、切れ端を受け取って、しばらくじっと見つめた。

べつに、完成してるわけじゃない。

むしろ、超テキトー。


でも、

(ああ、進んでるんだな)


ふと思った。


誰かが、「これやりたい」って思ったことが、ちょっとずつ積み重なってる。

見た目はグダグダでも、心だけは、確実に前に動いてる。


レンは、段ボールのノートを胸にあてた。

未来って、たぶんこういうことかもしれない。




団地のベンチに腰かけて、レンは段ボールの切れ端をいじっていた。

「貸し出しノート(仮)」と、ももかが書いた雑な文字。


角は曲がってて、マジックもかすれてた。

でも、なんだかそれがよかった。


(完璧じゃないし、雑だし、続くかもわかんないけど……でも、ちゃんと"始まってる"んだな)

そんなふうに思った。


スマホが震えた。


《明日、また棚やろーぜ!》

いっちーからのメッセージ。


《ももかがポスターも描きたいって》

レンは、スマホを持ったまま空を見上げた。


空はもう夜になりかけていて、

高いところにうっすら星が見えていた。


どこか目立たない、でもちゃんと光ってる。

レンは、

「うん」ってだけ返した。


棚も、ポスターも、貸し出しノートも。

バラバラだけど、それでもつながって、小さな図書館になろうとしている。

なんだかそれが、すごくいいなって思った。


未来って、

「まだ見えないもの」じゃなくて、

こうやって手の中にこぼれ落ちる小さなものたちかもしれない。


レンは、胸の奥がふわっと熱くなるのを感じながら、

ベンチから立ち上がった。


明日は、

また少しだけ、違う景色が見えるかもしれない。

進むって、すげぇスピードで走ることじゃねぇよ。

ちょっと足踏みしたって、道ができてりゃ、それで十分だろ。

レンも、いっちーも、ももかも、ちゃんと進んでんだよ。


――ケンちゃん

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ