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第20話:未来を、諦めるってどういうこと?

未来ってさ、キラキラしてるって思ってるうちは、そりゃあいいもんだよ。

でもな、たまに、どっか引っかかる夜がくるんだ。

それが悪いってわけじゃない。むしろ、そっからが本番だよ


――ミラジイ

団地の広場に、秋の夕方の匂いが漂っていた。


レンは、いっちーと並んで、

バラバラになった段ボールを集めていた。


「……棚、また壊れたな」


いっちーが、ぺたんと座り込む。


作りかけの段ボール図書館。

始めたころは楽しかったのに、

今はもう、ガムテープもよれよれで、

立てた端から崩れていく。


「もしかして、最初から無理だったんじゃね?」

いっちーが苦笑いする。


レンは、崩れた棚を立て直しながら、

「そんなことねえだろ」ってつぶやいた。


でも、自分でも、どこかで思っていた。

(これ、ほんとにできんのかな)


楽しいだけじゃない。めんどくさい。

イライラする。うまくいかない。


未来って、こんなに疲れるもんだったっけ。


片付けを終えて、

いっちーと手を振り合ったあと、レンはひとりで団地を歩いた。


空は、うっすら紫に染まっている。

帰ろうと思ったのに、気づいたら足は未来屋商店の前に向かっていた。




夕暮れの中、

未来屋の看板はいつもと同じ、少しだけ色あせたまま。


レンは、ドアの前で立ち止まった。

手を伸ばす。ドアノブに、そっと触れる。


でも、押すことができなかった。

(未来……見るって、なんだろ)


ちょっと前まで、

未来を見るのが楽しみだった。


面白い仕事とか、

すげぇ大人になってるとか、

なんかワクワクするもんだって、思ってた。


でも今は、

ちょっとだけ怖い。


未来を見ても、

何も変わってなかったら?


それとも、

見たくない未来が待ってたら?


そんなことを考えたら、手が止まった。

そっとドアから手を離す。


鈴は、鳴らなかった。




団地の外階段に座る。


缶ジュースを指先で回しながら、

ぼんやりと夜空を見上げた。


空には、ちぎれた雲が、ふわふわと浮かんでいる。

どこかの部屋から、テレビの音。

遠くで誰かが笑う声。

何も変わらない夜。


でも、それはそれで、悪くなかった。

缶をカランと転がして、レンは小さく笑った。


未来って、

全部すごいもんだと思ってたけど、

別にそんなことなくても、いいのかもしれない。


だらだらした未来だって、

ちゃんと未来だ。


スマホが震えた。

画面を見ると、いっちーからメッセージが来ていた。


《明日も図書館作る?》


レンは、ちょっとだけ迷った。

未来は選べない。うまくいくかもわからない。


でも──

(まあ、いっか)


レンは、「うん」とだけ打って、送信した。

ジュースの缶をもう一口だけ飲んで、空を見上げた。

夜風はちょっと冷たかったけど、悪くない。




未来屋の中。


誰もいないはずの店で、

レジ横に小さなメモが置かれていた。


《未来は、焦らなくていい》


誰かが書いた、

ちょっとだけ曲がった字。


ドアの向こう、

レンの背中が遠ざかっていく。


それを見送りながら、

店の中は、静かに夜に溶けた。

未来を見るってのは、別に特別なことじゃねぇよ。

なんとなく怖いなって思ったら、それで正解。

怖がるくらい、ちゃんと自分のこと考えてるってことだろ?


――ケンちゃん

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