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第14話:主役じゃないけど、大事な仕事ってあるよな

裏方の仕事ってのはな、目立たねぇ分、続けるのが難しいんだよ。


今日のレンは、その“むずかしい未来”に一歩踏み込んだらしい。


たまには褒めてやるか。俺の中だけで。


——古賀(見てるけど、言わない派)

「なあ……“ちゃんとやる”って、どういうことなんだろ」


ある日の夕方。

団地のベンチで、ポテチをもぐもぐしてたレンが、ふとつぶやいた。


「なんだよ、いきなり哲学?」


いっちーが笑った。


「いや、なんかさ。前にMCやったとき、全然うまくできなかったけど……

“やってよかったな”って、あとから思ったんだよね」


「え、レンがポジティブなこと言ってる!? 天変地異じゃん」


「うるせぇ」




レンは、未来屋商店に向かった。


今日の未来は、いつもより静か。

ミラジイは古い椅子を修理していて、こちらを見もせず言った。


「お前、今日は“目立たない未来”を見に来たな」


「……え、わかるの?」


「背中に書いてある。“地味でちゃんとしてるやつ、体験希望”ってな」


「そんな文字、書いた覚えねぇよ」


ミラジイはニヤッと笑って、井戸の前を指差した。




目を開けると、レンはイベント会場の裏側にいた。


未来の自分は“会場スタッフ”

設営・掃除・備品チェック・マイクのバッテリー交換——

要するに、地味な全部。


「……誰にも気づかれねぇじゃん、これ」


最初はそう思った。


でも作業してるうちに、だんだんと気づきが増えた。




誰かが座るイスを整える。


誰かが使うマイクの音量を調整する。


誰かが落としたゴミを、誰にも見られず拾う。


目立たない。でも、

「これがなかったら、イベントってうまく回らないんだな」


そう思った。




イベントが終わったあと。


ひとりの年配女性が、レンに声をかけた。


「あなたが裏で支えてくれてたのね。ありがとう。

わたし、今日ひさしぶりに楽しかったのよ」


レンは思わず、「いえ……」とだけ言って頭を下げた。


なんだそれ、と思ったけど。

胸の中が、ほんのちょっとだけ熱かった。




未来屋に戻ると、ミラジイはまだ椅子を修理していた。


「どうだった、“裏側”の未来は」


「……地味だった。でも、なんかすげー、よかった」


「だろ。世界を動かすのはな、派手なヤツじゃない。

地味でも、“止めない人間”だ」


「“止めない人間”……か」


「主役はひとり。けど、舞台をつくる人間は、いっぱいいる」




団地に戻ったレンは、掲示板の横に貼られたチラシを見つめた。


『次回イベントスタッフ募集中(裏方大歓迎)』


レンは、小さくペンで書き加えた。


『わりと、いい未来です。おすすめ。』

地味だろうが、誰かがやってる未来には、ちゃんと意味がある。


自分だけがわかってれば、それでいい。

でも、誰かに気づいてもらえたら——それは、ちょっとした“ごほうび”だな。


——未来田銀次(椅子も直す、未来も直す)

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