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第1話:未来屋でバズりかけた日

団地のベンチに座ると、今日もいっちーはバカみたいなことを言い出した。

「オレ、YouTuberになるわ」


唐突。ほんとコイツはいつもこれ。

「お前さぁ…ああいうのは才能ある人がやるんだよ」


ジュース飲みながらそう返すと、いっちーはニヤッと笑う。

「レン、それ言い訳ってやつだぞ」


うっぜぇ。こいつ、たまに正論っぽいこと言ってくるのが一番ムカつく。

「やったことあんの?YouTube」


「……ないけど」

言ってから、しまった、と思った。案の定、いっちーの顔がニヤニヤしはじめる。


「じゃあ、未来屋行こうぜ」




未来屋商店。団地の裏の小さな小屋。

ボロい木の看板に「未来屋商店」って書いてある。


その店の主、ミラジイは今日もアロハシャツに麦わら帽子。

完全に夏の昭和のオヤジ。見た目だけなら、ただの駄菓子屋のおっさん。


でも――この人、ホンモノだ。

未来を体験させてくれる、謎の店のオヤジ。


「YouTuber体験?あるぞ」

俺が言い出す前に、ミラジイはニヤっと笑った。


「まぁ、浅瀬コースなら死にはしねぇ。行ってこい」




奥にある、丸い井戸。

そこに映るのは――未来の俺。


YouTuber体験。正直、最初は楽勝だった。

カメラに向かって喋るのも、それっぽくできた。


団地の遊び紹介とか、我ながら悪くない。

編集?スマホアプリでポチポチ。余裕。


そう思ってたのは最初だけ。

編集めんどくさっ。


動画素材がゴミばっか。

音ズレ。画質悪。途中でアプリ落ちる。


やっと上げた動画の再生数、1。

コメント、0。


……虚無。


「これ、マジでやんの?」


未来の俺は夜中に頭を抱えてた。

でも、そんな俺に、未来のオヤジ(ミラジイに似てる気がする)が言った。


「オメェ、本気じゃねぇからそうなるんだよ」

「遊び半分でYouTuberとか、そりゃキツいわな」




目が覚めると、団地のベンチ。

となりにはいっちーが座ってる。


「どーだった?」


「……無理」


そう答えた俺を、いっちーは見つめた。笑ってない。ちょっと真剣な顔。

「でも、ちょっと楽しかったろ?」


……悔しいけど、それはある。


「一本くらい、撮ってみろよ。リアルのレンでさ」


「……まぁ、一回くらいなら、ありかも」




その日の夕方。

団地の片隅で、俺はスマホを立てていた。


タイトルは「団地の遊び100選 #1 ゴミすてボウリング」


誰が見るかわかんねぇ。

でも、なんか楽しいからやってる。


それでいいんじゃね?って、今は思ってる。





未来屋商店の小屋の中。

ミラジイは冷たい麦茶を飲みながら、ぼそっとつぶやいた。


「最初はそれで十分だ。未来はな、遊びからでいいんだよ」

「上手いとか下手とかより、まずやってみろ。…って未来屋のオヤジが言ってました。」

吉本レン、団地から未来へ、ぼちぼち出発します。

#今日未来に行ってきた(略して #キョウミラ)

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