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(1) 電気羊の夢(1)
おもうに。
UFOキャッチャーというものは、遊びやゲームというものではない。
しかし言った結日は、馬鹿っぽく見おろしてくる。
「遊びやゲームだよ」
冷たい。
なんでそんな冷たいこと言うの、とゲンコは思った。
むきになって小銭をすったのは、自業自得。しかしながら、優しくされてもいいと思うのだ。思わない? まあいいか。
いい加減なところで妥協して、ゲンコは腰をあげた。飲んでいたのはなんの変哲もないお茶。
脇にのけ、よいかげんで立ちなおろうとする。とれなかった景品を追ってもしかたない。日本のことわざで言うではないか? 覆水盆に、いや、逃がした魚は大きい、か。
ともあれ、かたわらの結日は立ちあがるこちらの様子を見て、「どうするの?」と、言いつつも、対戦台へ行く。いろいろ言ったが優しい子なのだ。いいやつ、とも言えるか。
レバーを取りながら、ゲンコは気合いをいれなおす意味でも鼻息をふいて、ゲーム画面へむかった。
ぴろんぴろん、がちゃがちゃ。
ごおーん。
そこここからゲームセンターの騒音が流れている。