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羨ましい光景

「あ〜あ。学校つまんねぇな。転校してぇな」


 校内を啓司はぶらぶらする。特に行く当てもなく。


「でも。親が許してくれないしな。絶対に無理にでも登校しろって言われる。その結末しか見えない」


 気怠げに地面に落ちる石ころを蹴る。石ころはコロコロ転がる。


 のびのびと進む石ころを啓司は目で追い掛ける。


 すると、ちょうど石ころはキリのいい場所で止まる。


 啓司は石ころから視線を外し、前方へ移動させる。


「ねぇ広季。今日は学食に行かない?」


 隣に並んで歩く仁美が上目遣いで尋ねる。仁美は背中の後ろで手を組む。


「それは構わないけど。昼休みに突入してから10分ほど経過したよ。あと残り30分ほどたけど。東雲は大丈夫?」


 もう片方を歩く海に話を振る。


「ええ。わたくしは全然大丈夫ですよ。実は食堂に行った経験が無いので興味を惹かれてます」


「東雲さんもこう言ってるし。今すぐ行こ!」


 広季の制服の裾を、仁美は指で引っ張る。


「…わかった。だから引っ張らないでくれ」


 冷静に広季はそれだけ伝える。


 仁美の力が伝わり、わずかに制服の裾が伸びる。


「それならよし!」


 納得したように仁美は制服の裾から指を放す。


「それでは行きましょうか」


 海の言葉を合図に、広季達は食堂の道を進み始める。先ほどまで進んでいた道とは異なり、軌道修正する。


「あ!? 森本君達どうしたの? 3人でどこか行くの?」


 偶然にも舞と1階の廊下で遭遇する。食堂へ向かう途中で遭遇する。


「あ! 笠井先輩。私達今から食堂に行く予定なんですけど。一緒に行きませんか?」


 仁美が舞を同行に誘う。


 海も同じ気持ちらしく、何度か頭を縦に振る。


「本当に! 嬉しいの! うちも昼まだ取ってないから都合がいいの」


 飛び跳ねるように舞は喜ぶ。自然と顔が綻ぶ。


「それでは舞さんも一緒に行きましょうか」


「行くの!」


 4人は広季を真ん中に横に並びながら、食堂へと歩を進める。


 仲良く談笑しながら。


「…」


 口をきつく噤み、啓司は黙ってその光景の成り行きを視界に収める。何も口にせず、特に輪へ入ろうともせず。


 いや啓司に入れる余地など皆無。


「本当は俺があの陰キャの森本のポジションだったはずだ。…どこで間違えたんだ」


 大袈裟に啓司は頭を捻る。


「くそ! わかんねぇ!!」


 苛立ちを盛大に露わにし、地面を蹴り上げる。


「いてぇ! チクショ〜」


 涙目でつま先の部分を押さえる。


 勢いよく刈り上げた際、啓司のつま先辺りと地面のコンクリートが衝突した。


「くそ〜。美少女3人達。俺に少しでも興味を示してくれ〜〜」


 美少女達の手を握るように、なぜか啓司は前方は腕を伸ばすといった不可解な行動を取った。

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