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温もり

 広季は仁美に抱きついた。その瞬間、彼は男性と性質の違う柔らかい身体の感触を知覚する。その上、豊満な胸の弾力や理性を狂わせるピーチの香りまでもが広季を遠慮なしに攻撃した。


「どう? 少しは変わった?」


 仁美は広季を受け止めるようにハグした状態で、広季の様子を窺うように問い掛ける。その間、彼女の顔はほんのりと赤く、瞳もわずかに潤む。


「うん。何か不思議な感覚…。仁美の温もりすごく落ち着く」


 広季はゆっくりと目を瞑り、より仁美に体重を預ける。完全に身を委ねるように。そのため、彼はさらに仁美の身体を感じられた。


 それだけで心はじんわりと熱を帯びた。その熱はもちろん身体全体にも伝わる。


「それはよかった…」


 仁美は嬉しそうに微小を浮かべた。彼女は口角を緩める。


 それから、躊躇いもなく広季の背中に両腕を回した。細く柔らかい感触は広季の背中を刺激する。


 しかし、彼はまったく痛みを覚えなかった。逆に心地よく、より安心感を与える刺激であった。


 広季はようやく女性の柔らかい身体や豊満な胸が自身に密着した現実を把握する。


 2つの柔らかい塊は接近し、異常な気持ちよさを供給する。


 それから急激に興奮する。その証拠に、体温は通常時よりも圧倒的に熱い。身体中が熱気に覆われたような感覚だった。


 そのためか。自然と口や鼻から吐息が漏れる。ぬるく一定量の量で。


「んっ。ちょ、ちょっと。くすぐったい…よぅ…」


 仁美は片目だけ閉じながら艶めかしい声を漏らす。わずかに彼女の目はとろんっとなる。


 一方、漏れた吐息は広季の髪や首に風みたいに吹き掛かる。


「ご、ごめん」


 広季は素直に謝った。


「ううん大丈夫だから。思わず出ちゃった声だから」


 仁美は安心させるように優しい声で応答する。その声は広季にとってありがたかった。

なぜなら、仁美の心理状態を大方に推量できる好材料だったから。


「わがままかもしれないけど。もうちょっとこのままでいいかな?」


 広季は居心地の良さに甘え、仁美に継続をお願いする。彼にとって仁美のハグはやめられず、抗えない代物だった。決してお金では手に入らないだろう。


「…うん。それはいいよ。好きなだけどうぞ。でも、くすぐったいのはやめてね?我慢できなくなっちゃうから」


 仁美は広季の耳元でそう囁くなり、ぎゅっと両腕に力を込める。温かい吐息はそのまま広季の耳をやんわりと撫でる。

 

 そのおかげで、仁美の豊満な胸はより一層、ぐぐっと広季に押し付けられた。広季が少しでも動くと、ぽよんと反動で跳ねそうだ。現に胸は常に自己主張を続ける。


 そのため、広季は多大な動揺を覚えつつも、このような居心地から逃れなかった。いや、そんな気など一切起きなかった。


 仁美から放たれる匂いや身体の感触などすべての要素は広季をダメにした。


 今の彼にとって仁美の温もりは必要不可欠であった。

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