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無駄な行動

「ちょっと待って!東雲さん!」


 光は教室を退出してからダッシュで海を追い掛けた。


 焦っていたのか。イスは雑な形で仕舞われ、教室の戸も中途半端に開いたままだった。


 海は光の声に反応し、くるっと振り返る。


 だが、海の顔は非常に嫌そうだった。目は少し細まり、眉間に何重にも皺が寄る。


「なんですか?2度と話し掛けるな、とお願いしたはずですが」


 海は最低限の言葉しか発さない。唇もわずかしか動かさない。そのため、声の抑揚も生まれない。非常に平坦な声だった。


「その件なんだけど。私が何か悪いことしたのかな?」


 光は辛そうに両膝へ両手を付く。


「…そうですか。あれだけヒントがあったのにも関わらず、わからなかったんですね…」


 海は「はぁっ」と盛大にタメ息を漏らし、呆れ顔を示す。眉は明らかに下がり、目もハイライトオフになる。


「だから、それを教えてくれない?謝るから!」


 光は海の冷めた態度に苛立ちを覚えてしまう。威嚇するように目もやや鋭い。


「いやです!」


 海はきっぱり拒絶した。視線を逸らし、完全に前を見る。もう光は海の視界に存在しない。


「なぜあなたに教えないといけないんですか?わたくしにとってかなり憎たらしいあなたに」


 海はギリッと強く歯を食いしばる。明らかにその仕草には怒りが籠る。


「では、私は行く場所がありますので」


 海は再び歩き始める。身体が動くと同時に緑のスカートは左右にひらひらと揺れる。


「ああ。それと…」


 海は急に立ち止まった。その際、反動でブレザーも上下にアップした。


 それから、今度は海が威嚇するみたいに視線を走らせた。髪や顔はさっと移動する。


「一応、釘を刺しておきますね。今後2度と話し掛けないでくださいね」


 海は冷たい声色で告げる。耳に掛かる髪をいじり、止まった足を動かす。


 海は光など一切気に掛けず、長い廊下を移動する。たまに他者とすれ違いながら。


 一方、光は悔しそうに力強く廊下の床を踏みつけた。バンッと痛快な音が光の周囲に反響した。


 廊下に身を置く何人かの生徒はその音に反応した。

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