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天から垂れ下がる蜘蛛の糸。その先は空高く、雲の上へとつながっている。そこは複雑に張り巡らされた蜘蛛の巣のようでもある。
そして、そこには無数の蝶の群れが絡め取られている。
蝶の群れはクモの王国に、それぞれが自分自身の領地を占有している。領地にはけっして他者を侵入させない敷地もあるが、おたがいの領地を行き交って語り合える場所も少なくない。雲は自由に宙を漂うので、気が合う者同士はより近づき、そうでない者同士は離れていく。
もっとも、俯瞰して見れば結局ひとつのカタマリなので、根の部分では土地を共有する王国民同士なのだが。
空をたゆたいながら、蝶たちは夢を見る。垂れ下がる蜘蛛の糸の先にある、地上の出来事を。
ある日突然、糸がプツリと切れるその瞬間まで。