第4.00話
時は過ぎ去り午後八時ごろ。
自分の部屋でのんびりと過ごすつもりが……
「……なんで?」
「…………?」
「…………」
「…………」
「……?」
「……?」
会話が通じない。昨日は二上さんが来てそれだけでも異常なのに、なんで今日は二人に増えてるのかな。二上さんの名前は無理矢理覚えさせられた、んんっ、ようやく覚えられたのに。まぁ、こっちの人はまだ覚えやすい名前だった気がするけど。
確か、おとおと、とか、ことこと、とかそんな感じだったと思う。
「まぁまぁ、別にいいじゃん」
「そして、なにしれっと二上さんもいるんですか?」
「おっ、ようやく名前覚えてくれたね」
覚えさせられたの間違いでは? ちなみに二上さんのステータスはほとんどAらしい。そして、肩を軽く掴まれて、僕のHPが50のうち30ぐらい減った。軽く掴まれただけで、HPを半分以上取られたのに、逆らおうなんて考えるわけがない。
ただ、そういう話をしたいんじゃなくて、
「なんで二人がいるんですか?」
再三同じようなことを訊く。
「ん? 何? それとも音琴さんと二人きりがよかったの?」
もう一人はネゴトって人だったっけ。……うんうん、おとおと、とか、ことこと、とかだと思ってたけど、ニアミスだね。そうそう。まぁ、名前をミスする段階で大概失礼だけど。
そしてそのネゴトさん? 曰く……
「……音琴……」
……ん? 二上さん? 本人はこう言ってますけど? 名前覚えろって人に散々言っといて自分も人の名前間違えてるみたいですよ。
それにしても、おとおと、とかだと思ってたし、おとごと、だったらしいし本当に惜しかったな。うん、僕も成長してるな。
ていうか、さっきから何でいるのかずっと訊いてるのに誰一人答えてくれない。
「ま、まぁ、とりあえず一旦自己紹介しよっか」
二上さんが話を逸らした。
「まずは一条くんから」
なんで?
視線で訴えかけたが、スルーされた。
仕方ないから自己紹介しますか。
「え〜っと、一条レイです。よろしくお願いします」
「なんで敬語!? まぁ、次!」
「……音琴琴音……」
「それだけ!? もうちょい何かないの?」
「「…………」」
僕と音琴さんに睨まれると、二上さんも少しは大人しくなった。
「えぇっと、私は二上夢結で、誕生日は七夕、甘いものが大好きでシュークリームが大好物。二人は何か好きな食べ物とかある?」
「「…………」」
無言で音琴さんの方を見ると、音琴さんと目があった。案外、考え方が似ているのかもしれない。
「一条くんが無視するのはいつものこととして、音琴さんは? 何か好きな食べ物とかある?」
「……別に好き嫌いはないけど……」
「それでもさ、何か好きなもの、一つぐらいない?」
「…………特にない……」
必死に話しかける二上さん、音琴さんはあまり話したくはなさそうだった。二上さんの努力も虚しく、そっけない返事しか貰えていない。まぁ、返事すらしてない僕が言えることじゃないけど。
「一条くんは?」
二上さんの話の矛先が僕に向いた。
「僕もとく…………」
「特にないっていうのは禁止ね」
遮られた。
「強いて言うならお寿司とか、ですか?」
「なんで疑問形?」
「…………私もお寿司は好きかも……」
「……サーモンとか?」
「…………ん、結構好き」
思ったよりも馬が合うかもしれない。
「ちょ、なに、二人して意気投合してんの」
そういえば、この人もいたんだった。
「ところで二上さん、なんで二人がこの部屋に来てるんですか?」
「なんでって、そりゃ、パーティーメンバーの親睦を深めるために決まってんじゃん」
「……必要ですか? それ」
「いるでしょ。名前を全然覚えてくれない人もいるんだし」
「…………それって二上さんのことですか?」
「…………違うよ!?」
「…………」
音琴さんから向けられる沈黙。
「いや、音琴さん、本当にごめん。あれは、たまたま知り合いに音津さんって言う人がいて……」
「「…………言い訳……」」
僕の呆れた声と音琴さんの呟きがハモった。
三人目のパーティーメンバーが音琴さんみたいな人で助かった。ギャル系の人とかだったら目も当てられない。……まぁ、そういう人は早いうちにグループを作れちゃうから、残り物グループに入ることはないよな。
「まぁ、本題はパーティーの中でリーダーとか決めなきゃいけないなぁと思ってさ」
「それは二上さんで良くないですか?」
「…………同意見……」
「過半数取ったので二上さんで決定で」
「えぇっ、ちょっと決めるの早すぎない?」
「3人いるんで2人で過半数ですよ」
「いや、それでも……」
「二上さんを信頼してるので」
「…………(こくこく)」
音琴さんも首を縦に振って肯定の意思を示してくれた。
リーダー? そんな面倒な役割は御免だから。人任せが一番。
音琴さんもそう思ったみたい。目を見た時に同じことを考えてるなってわかったし。
そして二上さんはというと
「そう? へぇ〜信頼してくれてるんだ。まぁ、それなら別に、私がリーダーになってもいいかな」
……チョロかった。まぁ、学級委員長になったときも周りの人から乗せられた感じだった気がするけど。
「まぁ、これでリーダーも決まったし、ステータスとか見せ合わない?」
ステータスか。見られると弱点とか知られるかもしれないし、あんまり見せたくないけど……はっきり言って弱点だらけだし、逆に見せても問題ないか。
そうしてスマホもどきにステータスを表示させて見せ合ったあと、解散……となるはずが
「じゃあ、今日も一条くんのベッドで寝ようかな」
と、二上さんがサラリと爆弾発言をして……
「……二人はそういう関係…………」
と、若干頬が赤い音琴さんの誤解を解こうと、昨夜のことを話したら、
「もしかして、寝ている私にナニかシたんじゃ……」
とか、二上さんが誤解し出して……
大変だった。一気に疲れた。
まぁ、なんだかんだで親睦は深まった……のかな?
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一条レイ (人間)
レベル1
職業:未定
称号:〈数の使徒〉
状態:正常
HP :50/50
MP:50/50
筋力:E 敏速:E 体力:E
魔力:E 知力:E 器用:E
特殊(数):EX
ユニークスキル:《数の使徒》レベル3……【計数】レベル3
【足し算】レベル2 【引き算】レベル2
【掛け算】レベル1 【割り算】レベル1
音琴琴音 (人間)
レベル1
職業:未定
称号:〈音の使徒〉
状態:正常
HP :200/200
MP:200/200
筋力:C 敏速:C 体力:C
魔力:C 知力:C 器用:C
特殊(音):SSS
ユニークスキル:《音の使徒》レベル2……【音響】レベル2
【音感】レベル1
二上夢結 (人間)
レベル1
職業:未定
称号:〈明の使徒〉
状態:正常
HP :1,000/1,000
MP:1,000/1,000
筋力:A 敏速:A 体力:A
魔力:A 知力:A 器用:A
特殊(明):SS
ユニークスキル:《明の使徒》レベル2……【明】レベル3